三百七十五生目 忠告
警備ギルドの中へと入る。
そこでは頑強そうな内装と……
無骨な雰囲気。
悪いことではない方向で冒険者ギルドの雰囲気は浮ついている。
中で佇んでいる者たちすらただダベっているというものがほとんどいない。
警備ギルドという名にふさわしくみんなが真面目に仕事準備に取り組んでいた。
酒飲むものもおらず武器や鎧はシックな雰囲気で統一しつつ鎧の上から羽織ったりして全体的に街中にいても変に浮かない。
張り出された依頼一覧をチェックしたり落ち着いて作戦会議したりは同じなのになんというか何もかもが落ち着いていて雰囲気が違う……
そう。私の異物感がすごい。
私のほうをちらりと見られるがそれだけでなにか起きることもなく。
向かう視線たちの先は……ああ瑠璃色の指輪だ。
青色の輝きが示すのは貴族の指輪。
さらに私は細く周囲に比べれば小さい。
割と人型時大きくなったなと思うがここのニンゲンたちは20や30センチ大きい。
骨格から筋肉の付き方までゴリゴリだ。
あー……
私依頼をしにきたと思われているな。
まあ剣ゼロエネミーや銃ビーストセージはしまいこんである。
力をちゃんと抑えている以上そう思われるのも致し方ないだろう。
そのままカウンターにたどり着く。
「こんにちは、ご依頼ですか?」
受付の方すらこんな感じである。
「利用が初めてなので、まず登録からしたいのですが」
「わかりました。まずは身分証明できるものはありますか? 市民権や別ギルド証明書でも可能です」
だったら……冒険者ギルド証明書でいいかな。
ここで細やかなテクニック。
袋から何かを取り出すしぐさをしつつサイレントで魔法を唱える。
サイレント魔法は出来うる限り魔法探知されないよう隠蔽する唱え方で戦闘時に手の内を明かしたくない場合よく使う。
空魔法"ストレージ"を使って冒険者証明書を取り出し……
手で掴んで袋から取り出す。
さすがに亜空間からいきなり取り出せば驚かしてしまうのは学んでいるから普段はこうやって出しているわけだ。
冒険者証明書は私ぐらいになると魔法書類になっている。
契約ではなく証明のために。
頻繁に中身が更新されマスクデータもあるんだとか。
ぶっちゃけコピーペーストそして編集って魔法があっても大変なときがあるからね。
そこにわずかな足し引き書くだけならともかく1枚に収まるように整理するとなると面倒くさいからね……
詳しい仕組みを解説するとこれだけで数時間話せるから割愛して……
相手に紙を渡す。
「はい、ありがとうございます。ええと……冒険者?」
冒険者という声に対して一斉に視線が集まる。
うん……? もしかしたらまずったかもしれない。
「冒険者……」
「またか……」
「冒険者崩れがよ……」
「ここは遊び場とは違うのに……」
「階級は……?」
あちこちから話が漏れ聞こえてくる。
そういえば警備ギルドはあるということは警備という仕事そのものは宗教的にあったのかな。
だとすると私はあんまり歓迎されない?
しかしただ家を継ぐだけの形なら縦にひたすらつげばいいたけだ。
業務上単に警備職の家だけでは厳しいのかもしれない。
死人は絶対出やすいし。
だからこそここで怯む必要はないはず。
ざっとまわりのニンゲンたちを"観察"したが見た感じは家名が複数あってバラバラ。
さらに私に対して正体を見抜こうとする視線に関しては"影の瞼"あたりで防ぐ。
"観察"されて魔物バレは困るからね……
どこからか舌打ちじみた声も聞こえた。
「ええと……問題はありません。今のところは。ただ、冒険者ギルド用の証明確認内容解読と照らし合わせのため、少々時間をいただきます」
「あ、はい。ついでに警備ギルド員証明書もあれば……」
「ああ、ご依頼ではなく依頼受諾の方を……わかりました、少々椅子に腰掛けてお待ちください」
それだけいうと受付のニンゲンは去っていった。
冒険者ギルドも潰れちゃったし少し手間取るんだろうなあ……
なんて考えていたら。
「おい、冒険者。忠告だ。遊びのつもりならやめておけ」
背後から声をかけられる。
常に"鷹目"をつかって周辺を見ているから近づいてくるのはわかったけれど本当に声もかけられるとは。
私は振り返り仰ぎ見る。
声をかけてきたのはいかにもボディーガードできますといわんばかりに筋肉が出来上がった190センチはある者だった。
すごいのは顔。
よく彫りが深いニンゲンというのはいるが深すぎて目の部分に額の影が落ちている。
ニンゲンの多様トランス的にもゴリラ型なのかもしれない。
この声の感じから心情を察するに……
脅しと心配半々かな。




