三百六十九生目 差異
気になること……まずはルイスマーラの言葉から。
15から成人扱いになり売られて買われ自分で自分を買い戻し第一次産業に務めるけれど立場そのものは変わらない……と。
貴族になったり王位継承権所有者になったり変わるのはレアケースみたいだ。
「その、こどもたちの奴隷がいる場所というのは?」
「ああ、それならおれから。教会や公共施設、それに託児所みてえな人手はいるけど子どもでも大丈夫なとこだな。自分買いした奴隷は下町や田舎にひと部屋と家庭を持って畑を耕すのがステータスってもんだ。まあおれは、孤児だったから親なんてわかんねーけど……」
「なるほど公共施設とかで……あれ、孤児の場合って階級はどうなるのですか?」
「孤児としてたくされた場所にもよりますが、たいていは教会に流れるため奴隷とみなされますね」
「おれも、おれもそうだす!」
今ウッダくん「です」と「だ」が混じったな……
とりあえずざっくりとはわかった。
結構システム段階でえげつない組まれ方をしているのが。
子供は家族のものにならないというのがえげつない。
絶対施設や団体に所属させられ同時に維持費用のため積極的に売られる。
生活費は家族が持ち労働だけは施設でさせるというのがどれだけ施設側有利で効率的か。
その仕組みに疑問を持たないように余計な読み書きではなく宗教的な仕組みの話や労働についてだけ学ばせて……
将来は家をもたせ結婚させ子を担うのがただしい道だとレールを完全にひいてある。
なるほどこれは奴隷からいろんな意味で抜け出せないのだろう。
今は言及されなかったがこの感じなら家庭をもたされた後多く子を産むように圧をかけるだろう。
そして出来上がるのが奴隷の安定供給ライン。
そりゃあ街中でたくさん見かけるし値段も異様に安いわけだ。
これはもう労働家畜だ。
後は……ウッダくんの言葉。
「ウッダくん、さっき自分で少し稼いでいるって言ってたけれど、あれって?」
「あ! そうだそうだ、言おうとしていたことがあったんだ。おれがあそこで襲われていた理由でもあるんだ」
意外なところで話がつながった。
ウッダくんの話を邪魔しないように続きをうながす。
「おれは元冒険者なんだ。あれは海外から来た職だったから、生まれに関係なくつけた。みんな服装もバラバラだったし、暗黙のルールで1番下以外の名前は言わないようにしていた。明らかに仕立ての良い鎧を着たおぼっちゃんが泥と血に塗れておれと組む、そんな不思議な世界だったんだ。けれど……」
ウッダくんはそこで言葉が少しつまる。
思い返されるのはあの冒険者ギルドのありさま。
閉鎖され完全に終わった空間。
「なくなっていたのは、残念だったね……私も冒険者だから、すごく困った」
「えっ、ローズも冒険者だったの!? どうりで……っと脱線。空いた時間の鍛錬は大事だからって普通に働けたし、おれでもわずかに稼げたよ。だからかな、冒険者協会がなくなってもたまに思い出しては来ていたんども……あいつらも似たようなことをしていたんだ。あいつらも元冒険者だから」
「つまり、顔見知りにあんなことをされたの!?」
「あいつら、おれを見つけたらいきなり名前を……フルの名前を聞いてきて。断るのも難しいから答えたら路地裏まで引っ張られて。おれの持っていた小金と装備を奪って、鬱憤ばらしにおれを……」
思ったよりも最悪だった。
この階級社会ではただでさえうっかり上の立場に逆らえない。
それを利用したあげくのこれだ。
おそらく奴隷が上級平民に手を出したら信じられないくらいの重い罪がくだる。
そうするとただこの嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ。
「なるほど、冒険者……だからあの痛みにも耐えられたんだ。気も狂わなかったし」
「いやかなり耐えきれてはなかったぞ!? あれのせいで9割以上感謝の気持ち吹っ飛んだからな!? 生きていた中で1番痛いからこのまま死ぬのかと思ったら腕治るし! 気分はおかしくなりかけたけれど体がなんともなかったのと、その指輪を見て気分が一周したんだよ!」
……貴族の指輪が意外な効果を発揮していた。
「元気になって何より。マウスピースのおかげで奥歯も割れなかったしね」
ウッダくんはゲッソリしていた。
小さく「あれそういう意味だったのか……」とつぶやく。
そういえば急いでて説明していなかったな。
「……あいつらとは特別仲が良いわけじゃなかったけれども、でも同じ冒険者になれてた。それなのに、あんな風に外でなって、どうしてだよ……ヴァイドに逆らうと魂が汚れて、生まれ変わるときにシドラにされるんだ、俺は生まれ変わったらブラマドラになりたいから耐えてきたのに……」
ウッダくんはあの時の受けたいくつもの痛みを思い出したのかどんどんと嗚咽を漏らしていった。




