三百六十八生目 義務
ルイスマーラは笑顔だったがウッダくんは逆にひっくり返りそうなほど驚いていた。
「お、おい! だめだよローズ、そんな国に喧嘩を売るようなこと言っちゃあ! 特に貴族様に言うなんて……命がいくつあっても足りないって!」
「私としては厳格な階級制度自体も困るけれどそれをのぞいても、こういうことを隠れて裏で言わなければ一族郎党の命が危ないとか、反逆罪になるとか、そもそもヒトをヒトとして考えられていないシステムが、あまりに冷たすぎました。街の活気と裏腹に、流れているのは過熱を抑える冷却オイルみたいな……悪いところを詰め合わせたような内容でしたね」
「ローズ!」
ウッダが足元に縋ってくるものの大丈夫。
目の前の人はこれを超えることを証拠付きで国を巻き込み王に叩きつけて蹴り上げるつもりだから。
その証拠にゆったりとルイスマーラは肯定する。
「大丈夫ですよシドラ・ウッダ。私はノブリスオブリージュを海外から学び入れ、取り入れていますから。気に入らないからといって処刑するぐらいならば、初めから海外から彼女を招いてはいませんよ」
「……あ、偉い人は下々の人たちのために働こうねって意味だよ」
「え!? そ、そんな変じゃないか、だって、おれよりエライ奴らがおれを斬りつけても……」
貴族の義務……か。
彼女は時代も国もまだまだ人権意識など難しいのにここまで確かな話を持てるだなんて。
階級社会が必要とされる時代に彼女のような考え方がどれだけ重宝されるか。
そしてどれだけ受け入れられづらいか。
ウッダは自分で言って思い出したかのように右腕を抑える。
そこにはまだ痛々しい治療のあとがあった。
「すべてのニンゲンが、階級に関係なく様々な考えをもっている、と言うことで、それは本来保証されなくちゃならないし、そういう意味で奴隷はいないほうが良い。けれどここでは自由意志すら剥奪された資材と呼ばれるヒトビトもいる……まるでスケルトンを無理やり再現したみたいに」
「ワタクシも海外でスケルトンたちは見たことがあります。宗教的に大河王国では使われていませんが、非常に便利そうなのと同時に資材の姿がかぶって複雑な気分にさせられたこともありますね」
「問題は、スケルトンは結局無から自由意志に見えるように組み込んだ作り……つまりゴーレムづくりに似たものでしかなく生命とは違うんだけれど、ニンゲンはニンゲンとして生まれた後で無理やり加工して資材にしているだけに過ぎないということですね。結果は同じでも、彼らは何もかもを奪われている」
「なるほど……やはりあなたの意見は参考になりますね。ただ外の国だからというよりも、もっと自分なりの考えがあって話しているように思えます」
「ありがとうございます」
あんまり深堀りされすぎると前世に辿り着いちゃうからほどほどで逃げないと……
ルイスマーラは信用できるが宗教の話とは違うである別世界や前世やらの話は困惑させるだけだろう。
ここの宗教はまだ詳しく知らないけれど。
スケルトンは有機的な生命に見せかけているがゴーレムの一種にすぎず実は機械に近い。
疑似魂を発生させそれで行動させて……と前世ならひっくり返るくらい異様な技術だが。
機械的に置き換えるとCPUを作ってそこから指令を出させて動かし……とよくある感じになる。
彼らは確実に死してそれを寄せ集め浄化し機具を作っただけなのでサンゴから作られたチョークより安全かつ人権やら魔物権利を有していない理由もわかる。
だからこそ自由意志を持つ目的で作られたカムラさんがすごすぎる。
カムラさんは高度機械制作によりAIというか人工知能と呼べる粋にまで高めた存在。
あれは完全に1個人だろう。
さらにゴーレムのノーツは知能というよりはAIシステムで今後どうなるかの境目。
ローズクオーツはほぼ事故で前世持ちの魂が混入してしまった。
なのでローズクオーツは完全な個人なのだが……
……そうだなあやっぱりここにローズクオーツも連れてこよう。
それはあとにするとして。
「それと、こんな子供が奴隷とされていましたが、諸外国と奴隷の意味合いが違うのですか?」
「おれはそんなにガキじゃねえよ! もう11だし、本当は、もう自前で少しは稼げてたんだ!」
「そうですね、この国では生まれによってシドラ含むすべての階級が決まり、今世の行いによって来世の階級が決まると解釈されています。奴隷は15になれば大人として所属していた場所から売られ、買い取られたあと給与を稼ぎ、自身の額分買い戻してまた第一次産業などをこなします。生涯奴隷ではありませんが奴隷という立場から抜けるとこはありません」
気になることがまた複数あるなあ……




