三百六十六生目 依頼
2020/12/14 投稿順ミスで話が前後しました。もうしわけありません
階級社会というものを味わった。
この状況どうするか……
とりあえず階級を笠に着る彼らには階級を使えば効果的か。
「キミたち3人は、解放したらこのことを忘れ、権力に驕らず、真面目に生きていく事。ちゃんと周りのため自分のためね。また何か悪いことを聞いたら、この剣が今度こそ首をはねて、私が再度くっつけて聞くから」
「え、えぇ!? どういうこと!?」
「なんかメチャクチャ怖い……!」
「ほ、ほどけた! うわああぁー!!」
「「わあぁぁー!!」」
剣ゼロエネミーの蛇腹剣状態を解除したらダッシュで逃げていった。
多少はお灸を据えられるといいけれど……
何せ法的に彼らは罰せられないらしい。
そして目の前の相手……
ボロボロなのに私のせいで震えている。
私は意識的に指輪をしている右手を隠した。
「大丈夫、私は味方。ちょっと待っててね」
このまま"ヒーリング"をあてつつ適度に距離を取る。
露骨に震えが収まっていくのは複雑なものだがああいうのは本人がコントロールできるものでもない。
仕方ないものだろう。
さて……手はいくつかある。
まずホルヴィロスを呼ぶ。
向こうの都合次第だが完璧な治療を施すだろう。
問題はホルヴィロスは街中に呼んだらひどいことになる。
見た目は白い犬なので思いっきり魔物だ。
私と彼がアノニマルースにワープするのもなしだ。
私単独は問題ないが少年をつれていればあっという間に検知に引っかかる。
冒険者としての権利もない以上少年をむやみに不法出国の罪をかぶせるわけにもいかない。
そしてこの階級制度の感じからしたら病院なんて絶対やめたほうがいい。
奴隷に施す治療なんてたかがしれている。
他の国ならともかくこの国では絶対駄目だ。
だとすれば……
「……の、あの! も、もう大丈夫、元気だけは、なんとか!」
「あ、ごめん考え事していた」
"観察"してみたら少年の生命力は満タンだった。
"ヒーリング"のしすぎは体に毒だし止めてと。
「かかりつけのお医者さんはある?」
「え? いや医者なんていない……じゃなくて! ブラドマナのお墨付きなお方に、これ以上何かされても、おれ返せる物が……」
治ったばかりの腕を突き出してイヤイヤと振ってくる。
やっぱりまだ筋肉が痛んでいそうだ。
それと右腕は左腕に比べて動きがぎこちないあたり本調子から遠い。
「ううん、困っているヒトを助けたいだけ。とりあえず移動しよう」
「えっ? ……え!?」
少年……名前を読み取ったところ1番下の名前はウッダだった。
ウッダくんの手を取ると空魔法"ファストトラベル"でワープ。
たどり着いた先は屋敷だ。
「こ、こここここっ、領主様の」
「入ってー」
ウッダくんがフリーズバグを起こしている間に連れ込み……
メイドさんや執事さんたちに引き込まれ。
血と汗を拭い。
医者の観察と処置それに指導。
血を作るのに必要な食事も与えられ……
「うまっ……ってまって!? 一体なんでこんなことに!? おれに一体何をさせる気なの!?」
「え? とりあえず元気になってもらおうかと」
「おかしいだろ……でしょう!? こんなことって、絶対奴隷にはありえないですから!」
「いいえ、間違ってはいませんよ。確かにこの国としては間違いそのものですが……」
言葉に場の空気が震えるような錯覚。
部屋に入ってきたのは館の主がひとり。
ルイスマーラだ。
私はそちらの方を見たらルイスマーラが優しい笑顔を見せてくる。
どうやらこれは良かったらしい。
この階級社会に結構不安だった。
この屋敷はあれだけの騒動があって全員確認できたのにもかかわらず私は資材に出会ったことがない。
もしかしたら働き手の中に奴隷はいたかもしれないがみなきれいなため不明。
単にいらないからというわけでもないだろう。
おっとそうだ。
なまえを調べたけど聞いてからいわないとさすがに不審極まる。
「えっと、キミ名前は?」
「あっ!! も、申し遅れました!」
ウッダくんは勢いよくテーブル席から降りて膝をつきうずくまる。
その動作の騒がしさは多分貴族的にはマナー違反だがウッダくんにとって全力のマナー行使には違いない。
「おれ、じゃない、わたしはチルマルド・オールン・シドラ・ウッダ。畏れ多くも……えーと……お誘い? おまねき……」
「食事を先におえたほうが宜しいですよ」
「は、ハッ!」
またひっくり返るような動きでテーブル席につきテーブルマナーもあったものじゃない動きで漁るように食べる。
おいしいのは事実なのだろう。
「依頼どおり、素直な感想を持ち帰りました」




