三百六十五生目 貴族
少年の腕を治療した。
わりとズタズタだった部分を聖魔法"トリートメント"で治したので凄まじい治療痛がはしる。
脂汗を浮かべ唸り声を上げて……
それでもじわじわとしか腕は治らない。
"ヒーリング"同時がけで多少苦痛の緩和は出来ているが骨など人体に致命的な痛みに対して我慢できるように人体が作られていない。
しかも先程までの攻撃での痛みはぐちゃぐちゃになって血も失っていたし意識も朦朧としていたからまだなんとかなった。
しかし治療痛に関してそうはいかない。
常に新鮮な痛みが無駄に送られる。
気を失ってそれを無理やり覚醒させられるのを繰り返し。
正直拷問ではある。
やっぱり麻酔いるよなあ……
ホルヴィロスからもらうのを本格検討したいけれどその場合私が麻酔を学ばねばならない。
毒素のあれこれは少しずつホルヴィロスから学んでいるものの麻酔方向はまだまだ。
眠らせたり麻痺らせたりより雑にダメージ与える方が楽なんだよね毒の配合……
それはともかくとして。
ひっくり返りそうになっている少年を支える。
「大丈夫じゃないよね? けど腕はとりあえず繋がったから、少しすれば落ち着いてくるよ」
「んん! んー! んん……! フン……ウン……! フンー……!」
目をグルグルと回し白目剥きかけているがなんとか保ったらしい。
正直血だらけで衛生的にも問題が有る。
腕は魔法で治しただけだからこれから正式な治療が必要。
これは経験談だが強さが上がると単にパワーや速度が増すだけではない。
私たちは腕や腹が一部取れたところで再度くっつけて戦えるが……
こんな一般的な相手だと魔法を使って治してもしばらくの間継続治療がいる。
もちろん私たちも完全に平気ではないので細かなチェックは大事。
病気にかかってしまう可能性は大きい。
魔法治療による過剰性魔法依存症とかになるとかなり辛い。
ちなみに体が魔法に治されることに偏りすぎてしまって魔法前提で体を治そうとしてしまい体が自力で治療ができなくなる病。
体は当たり前だけれど生きているだけで新陳代謝で摩耗していく。
それがなかなか摩耗だけして新しく生まれないとなれば……
それはともかく。
剣ゼロエネミーにより縛り上げられた3人はすでにグロッキー状態。
戦意ダウンしたのとわけのわからない状態により抵抗する気も失っているようだ。
「話せる? 血が足りてないからふらつくと思うよ。口の中の物をだして……」
「うう……」
少年は噛み締めていた板を吐き出す。
残った歯型がどことなく噛み締めた痛みを表していた。
「彼らの言うことが本当なら、このまま衛兵につきだしてもだめなんだよね?」
「そ、そう……助けてくれてありがとうだけど……彼らは罪に問われない…………うん?」
困ったな……適当なところで放ってしまうかな。
"無敵"の効果によって私への敵愾心の方は下がりきっている。
向こうもことを荒立てないように動くだろう。
そんなこと思っていたら少年は私の手を取り指輪を見る。
「これ……」
「うん? ああこれキレイだよね」
「いや、そうじゃなくって、これって、この色って、ブラドマナが人を保証している時の……指輪!?」
「「ぶ、ブラドマナ!?」」
「ああ、あの瑠璃色は!?」
「本物……!?」
なんだかざわついた後今度は痛いほどにシン……と静まり返る。
みんなどんどんと顔が青ざめていく……?
少年すらもだ。
「ち、違うんです! こいつがやれって!?」
「そ、そうだ、です!」
「バッ……!? 違うっ! 全員共犯だっただろうが! なんならお前が最初に言い出した!」
「嘘だっ! なんならお前が――」
なんか……身内で争い出した。
「ち、違うんです……ブラドマナ様の保証したお方だと知らなくて……生意気な態度とったあげく、治してもらうなんて……しょ、生涯隷従だけは……どうかご勘弁を……!」
「えっ? キミも震えて……一体いきなりどうしたの?」
みんなこの貴族の指輪を見た途端態度が一変した。
私の脳裏に思い浮かんだのは言葉。
あの時の『名乗る時階級を偽るのは罪』ということ。
目の前で震えているニンゲンたちを見てはっきりした。
この階級社会……重すぎる!
絶対に指輪を外さないようにとはこのことだったのか。
私もここまでのものだと理解していなくて末恐ろしくなってきてしまった。
奴隷に資材……
平民やその上のヴァイド。
そして貴族。
すぐに見捨てないでくれと言われた意味もわかった。
この国は……いびつだ。
宗教や法が許しても限度を超えているとしか言えない。




