表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1457/2401

三百六十二生目 奴隷

 私は冒険者ギルドへ行くことにした。

 

 そう思って屋敷から街まできたのだが…


「活気は凄いけれど……何、これ……?」


 辺境の街は海外と交流する関係で比較的にぎやかだった。

 帝国とは緊張のあるやり取りはしているものの商人にとってソレは大きな商機でしかない。

 だからこそ街は栄えているのだが。


 そこでは人々が売られていた。


 こういう時大抵は比喩表現か奴隷だ。

 この世界は死霊術師がいてスケルトンたちを労働力として売っている。

 しかし宗教や法律の違いで死霊術師が立ち入れずかわりに奴隷をとる国も前世的に考えても珍しくはないだろう。


 ただ。違う。

 善悪や感情として奴隷を私は良くないと言えるが私の視点はズルなので置いておくとして。

 奴隷は人権なく扱われがちだが同時に労働力としての価値は認められている。


 奴隷船みたいなとんでもない扱いもあるが言葉を話し生き物として接せられ最悪家畜みたいな扱いはされている。

 だが……目の前にある光景は違った。

 ニンゲンが陰部だけ隠し適当に積まれている。


 この時点でドン引きしたのだが看板に[1個あたりの値段]が書かれ……

 積まれた方には[汎用品質]

 多少少ない方に[高品質]

 わずかに座らされているのが[超高品質]と書かれている。


 個というのは本当に個……つまり石やりんごを数える単価で書かれている。

 (ニン)ではない。

 大河王国語にもその違いはある。

 ちなみにスケルトンたちは体という表記なので扱いがスケルトン以下。


 値段にもそのまま現れている。

 スケルトンたちは単価を前世風に直して約20万円からのスタートが基準でそもそも量売りせず値段も決めずオークション形式などでかなり高額な取引になるようにわざと作られてある。

 目の前の汎用品質はこの国基準で直して4から5万円ほど……


 高品質が10万円くらいで超高品質は時価と書かれている。

 いやあ……当たり前だが人ひとり売る額じゃない。

 奴隷の価格崩壊だ。

 何もかもおかしいとしか思えない……が。


 私は今回そういうのに首を突っ込むのは出来得る限り禁じられていく。

 端々でどうこうしても仕方なくむしろ新鮮な感想を持ち帰るのが重要。

 そしてあの積まれたニンゲンたちとは別のところで奴隷取引所を見かけた。


 どういうことなんだろうか……?

 なぜ複数の箇所で?

 いくつも気になる箇所は有るものの我慢。


 この外にいる奴隷か何かたちはそこまで厳重に確保されているわけではない。

 何ならこの不遇な環境でみんな笑顔や気楽そうな顔で黙っている。

 奴隷商人が客相手にカウンターごしに話しているという不気味さ。


 奴隷市場というのは良くも悪くももっと陰鬱とした熱気でいるのが基本だ。

 買い手は高い金を払ってニンゲンを買うのに必死だし奴隷たちは自分たちの人権が売られどう取り扱われてしまうのか戦々恐々として。

 少なくともこんな気楽じゃないし奴隷が暴れないようにする施策はたくさんある。


 ただ見た限り彼らはフリーでフリーなのにあんな劣悪な環境で暴れずにいる。


「――てわけでさ、シドラにやらせるんじゃあ難しいんだ」


「改めて言うまでもありませんが、シドラと違ってオークション形式ではないにせよ、シドラと値段はそこまでかわりません、そこは良いですよね?」 


「もちろんだ、他にも性的な事はさせない、教えに背いたり矛盾することを教えたりさせない、不法投棄しない、もろもろ全部知ってるって。デマジーたちにはどんどん鉱山を掘って貰わないと困るんだ。シドラは危険な仕事はかなり渋るが、デマジーたちは心底楽しそうにやるから助かるんだ。石の見分けはシドラたちがやるしな」


「はいはい、そこまでわかってるなら問題ないですよ、どいつにします?」


 ……早く冒険者ギルドへ行こう。

 私の脳内翻訳感覚でシドラに合いそうな翻訳は奴隷だった。

 ただ宗教的専門用語に近いのか他の言葉に置き換えたさいに若干語弊が生じる。


 何せシドラは奴隷層という感じの言語に聞こえた。

 奴隷落ちするわけじゃなくて……違う意味合い?


 デマジーは資材って意味に近くなる。

 どういうことなのか……

 私はまだ闇に1歩踏み入れただけな気はする。


 危なくないように表通りを歩いていく。

 本当にさっきみたいな光景を除けば街は活気に溢れ人々は労働に精を出し快そうにしていた。

 だがちゃんと注意して目を配れば他の国ではめったに見られない違いがちゃんとわかる。


 まず商人や道を行き交う人々それに店の中で鍛冶屋や床屋をしている者など。

 彼らの服はそこそこちゃんと仕立ててあるものでいかにもな市民だ。

 しかしそのすぐ側で真面目な顔をして裏方仕事したり掃除やモノ運びをしつつあれこれと会話し指示や交流する者たち。


 彼らがシドラ……奴隷だろう。

 服装は頑丈そうだがあきらかに中古の継ぎ接ぎでその腕や足に隠されてはいるけど枷が垣間見える。

 ここではわからないけれど多分工場なんかにいけばもっとたくさんいるだろうなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ