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三百六十生目 禁酒

 カルトス団のひとりをのがしたがこれで良しとした。

 逃げ込んだ先の領土もわかり書類も取り返せれた。

 むしろ収穫が多いくらいらしい。


 その後は戦後処理をし……

 会議が開かれた。

 私は参加せず結果から言うと『やっぱり隣も信用できないよ』ということだ。


 色々とひどいことはわかったがとりあえずこちらの被害は軽微。

 特に書類が持ち出されなかったのが大きかった。

 なお執事長さんは後日ご遺体で見つかる。


 それは後日のこととして……

 私たちは戦いの翌日にはもう行動を起こすことにしていた。

 朝食を食べがてら互いの紹介だ。


「まさか、戦場にもう来るとは思っていなかったので本当に驚きましたよ。誇り高い獣の気配を感じておりましたが、ローズオーラ様、噂はかねがね」


「改めまして、よろしくおねがいしますルイスマーラさん。その、誇り高いって言われるとちょっと恥ずかしいですけれど……」


「フフ、こちらは人同士のいざこざにさんざ悩んでいる立場。ソレと違って澄んだ獣の誇りというものを間近で感じたからこその感想ですから」


「あはは……」


 なんだか少し気恥ずかしい。

 獣の誇り……そういうのは考えたことなかったな。


「それと、今のように姿を人型と獣型で変えられるというのも興味深いですね」


「便利ですよ、私はルイスマーラさんの竜人とニンゲンを切り替えるなに驚きましたけれど。だいぶ珍しいですよね。あ、これおいしい……」


「ええ、なかなかいないとは聞きます。鱗をなくした姿を取るというのは、トランスした後から学んだことなんです」


 朝食1つとってみてもさすが貴族だ。

 食べたことがなく香り高いものがいくらでも運ばれてくる。

 サラダがもうシンプルなのにおいしい。


「わたしたちのコックが、こうして非常時にも出来る限りと働いてくれました」


「本当に助かります、おいしいですとお伝えください」


「ええ」


「父上、母上、こうして再び会えるように、また……亡くなった者たちのためにも」


「もちろん、今日も『仕事』をしよう」


 しばらくそうして雑談し。

 食事を終える。

 さて……この後やるべきことは。








 私はあえて屋敷内で待機となった。

 賓客としてもてなすのでこんな状況とはいえもてなしているていを崩すのが危険だったからだ。

 再度襲ってこないとは言えない。


 アール・グレイは騎士たちと共にとある仕掛けをしに出かけ屋敷内はたくさんの働き手やフィノルドさんそしてルイスマーラさんがいる。

 ルイスマーラさんの見立てではカルトス団をわざと逃したことでかなり時間を稼げるらしい。

 魔物たちの群れもあのあと適当なタイミングで逃げていったらしいし。


 敵リーダーを倒したことにより治療や立て直しに大きく時間もとられるだろう。


 私はタイミングを見てルイスマーラやフィノルド……つまりアール・グレイの両親と共に地下へ行く。

 崩壊した部分はプロの修復士たちや私が魔法やら建築やらで順に直している。

 地下では他の目が無く安全。


 外には持ち出せない多数の調査資料がここに隠されていた。

 大半は調査している時の資料だがそれは逆に言えば王族糾弾準備の証拠になりうる。

 なかなか危なかったわけだ。


 それと気になったのは……


「わりと他国の情報が多いですね」


「我が国は地理的にも環境的にも、やや他国との文化的交流が薄く、独自の思想や発展も多く、ゆえに歪みへ鈍感になりやすい。わたしたちは立場的に辺境伯として、1番海外に触れやすいため是正も行う立場なのです」


「何が間違った腐敗で何が風土として習慣的にただしいのか、それを見極めるのは内の目と外の目を持たなければ難しいものですわね」


「おふたりは、何から王政が異常に悪化していると判断したのですか? 集合の禁止に関しては聞きましたが……」


 正直この国にまだ詳しくないから善悪の判定がよくわかっていない。

 階級社会なのはなんとなくわかったけれど……

 宗教と風土によってはそこらへんだいぶ違うから一概には言えない。


 殺人はどこでも駄目だけれど。


「ここ辺境は帝国から国を護る要、しかし一時期帝国内が混乱し、圧力をかけられるタイミングにも放置、それどころか王都集中とかで軍力を削られ、ルイスマーラが日々残念そうで……」


「ワタクシは、そうですね……酒類の宗教上、いくらかの制限があり、それらはそれぞれの人々で細かく分かれているのです。しかし、王宮はそれ以上の制限を国全体に施し、ワタクシたち貴族にも及んでいて、酒の香りを楽しむのが生きる糧であるフィノルドが、かわいそうです」


「仲いいですね……!」


 ふたりは顔を見合わせ上品に笑った。

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