三百五十九生目 必中
"クエイク"は地震という魔法。
逃れる正解はルイスマーラみたいに空を飛ぶこと。
ただ跳んだくらいでは床上に乗った瞬間吹き飛んで転ぶ。
彼女も吹き飛んでころんだためすぐに追いつける……!
「アイタタ、腰と脚が……!」
「後はワタクシが!」
ルイスマーラが飛んで彼女の目の前に飛んで先回りし道を塞ぐ。
呼応して彼女も立ち上がるものの傷ついている。
元々戦闘向きではないのだろう。
「では、カルトス団の事を洗いざらい吐いてもらいましょうか」
「いたた……痛い? いや、痛くない、そうか、これは、きたきたっ」
すると彼女が急に元気な様子を見せた。
私は警戒しルイスマーラは素早く外用の斧を振り下ろす。
すると……
斧が急に空振った。
そこにいたはずの姿がない。
代わりに空へ影が移る。
「上です!」
「くっ!?」
「はぁー! 間に合った! じゃあねっ」
彼女の背中から新しいパーツが映えていた。
第二段階!?
背中からは甲殻みたいなものが翼みたいに伸びそこからたくさんの鱗じみた羽根。
何より……速い!
話している間にもぐんぐん加速していってあっという間に空へ消えようとしている。
「まだ!」
アインス空へお願い!
(わかった! もんくはいわないでねー!)
ドライ照準サポートを!
(ロング・ショットで誘導弾か。まだ自信のないジャンルだが、やっぱりぶっつけ本番こそ燃えるな!)
私は背中から翼の針を生やし高速で飛行する。
めちゃくちゃアクロバットに高速化するので私はさっそく体の感覚をアインスにぶん投げた。
多少耐えられるようにはなっても酔いはするよ!?
向こうは加速しているがこちらも負けてはいない。
問題はこの状況で当てられるかということ。
風は凄まじく距離は遠い。
神力を使ってまたフルパワーだ。
私自身は銃に集中し神器として展開する。
また前みたいに光で補助パーツやサイトが現れて……
ズーム……4倍……8倍……12倍。
弾丸は誘導弾……トゲのね。
"針操作"を最後まで維持。
[必中]
神力での作られた概念をまとい……
発射!
全力で力を込めて撃った弾丸は爆音をたてて発射される。
弾はするどく風を裂いて飛び……
彼女の背後まで迫る。
「なっ!? んっ!」
あと少し……というところで身を捻った。
それで避けられ……たと思ったが。
なんとポーチにあたり中身がひっくり返る。
破損した影響で空間魔法作りが壊れ中身がぶち撒かれたのだ。
そのまま書類が大量に散る。
「し、しまった!」
「それっ」
だが誘導の効果はまだ続いている。
確かに曲がればもう私の加速と銃の加速速度加算による超速度威力は望めない。
でも当たることの効果が大きいのだ。
弾は1度完全に通り過ぎた後……
くるりと向きを変え。
再度突撃。
書類の方を見ていた彼女は完全に不意をつかれる形になり反射的に防いで腕へと刺さる。
「ギャッ!? まさか、この体に深く刺さって……うぐっ!? ぐっ……」
彼女は高速で飛びつつも腕のトゲを引き抜く。
かなり深く刺さっていたらしく血が飛び散った。
外殻は1点だけ破壊され周囲が多少砕けただけだが……
そこから外殻ごと体を破壊しようと溶解毒が回りさらに僅かな時間で全身へと体調を悪化させる複合毒が回っていく。
そっち系は強そうな仕事だし解毒しにくいブレンドにしておいた。
溶解毒の方は生活魔法の毒をきれいにするためのもので必死に流しているが複合毒はその間にも巡っている。
ただ威力は大したことなくこれで死に至らしめるには全然足りない。
あくまで妨害用だ。
「こんなの……絶対お前だけは、許さない……!」
「待て! 逃げるなー!」
「獣さん……待ってくださいな。あいつはあのまま泳がせてください…
」
背後遠くから声。
ルイスマーラが飛んでおいつこうとしてきたのだ。
かなり距離があるし私もたまたま声を拾えたが。
言われたとおりアインスにはUターンしてもらいルイスマーラの元へと飛ぶ。
ほんの数秒が重なったやり取りだったが凄まじく濃厚だった気がする……
「どういうことですか?」
「良かった、声が届いた。ハァ、ハァ……あの女に関しては書類たちを取り返せただけ十分です。カルトス団なのも判明していますし、実際に捕らえても口封じや彼女自身が逆の意味合いで証拠とされかねないのです」
「逆の意味合い……つまり、善良な市民を拉致監禁しているとかなんとかのあたりですか?」
「ええ。それと、この先の領土を飛ぶのは危険です。彼女が逃げ込んだのは最も近い隣の領土……上空とは言え不法に入れば、それすらもワタクシたちが悪しきように言われましょう」
うへえ大変だそれは。