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三百五十七生目 陰動

 屋敷にルイスマーラと共にワープした。

 相変わらずボロボロのままだが逆に言えば何もかわりがない。

 ルイスマーラは迷いなく屋敷の庭をかけていく。


「あれ、どこへ行くんですか? 玄関はあっちじゃあ……」


「ええ。しかし玄関から入ればすぐにバレます。屋敷の中全員に悟られていない今でなければ、潜伏者があぶり出せないのですよ」


 ルイスマーラは横から回り込み裏の従業員用出入り口につく。

 そこで何かの小道具を取り出して扉に張り付き……

 うなずく。


「仕掛けはない。突入します」


 ルイスマーラが合鍵を使い解錠して中へ。

 そのまま先に進むルイスマーラへ続いていく。

 中の屋敷は比較的普通の様子だが……


 ルイスマーラがピタリと止まった。


「おかしい、配置に違和感がある……」


 ルイスマーラが何か小物たちの配置を気にしだした。

 他にも家具の1つ1つも調べていく。

 私にはにおいがここの屋敷にいる面々しかないということしかわからない。


「うん、だとしたら……まずいですね」


「敵が?」


「ええ。しかもかなり腕が良いですね。ただ……こちらも対策はあるのです」


 ルイスマーラは近くの壁に向かってゆき……

 手のひらをかざす。

 すると行動力が何かに反応したらしく壁が変形していく。


 機械的な動きではなく魔力のようでまるで水みたいに動く。

 形が成るとそれはレバー。

 力で引いて上から下へ下げる。


 屋敷のどこかでガスのような音がした。

 同時に私の耳にだけ届くようなかすかな咳込みみたいな音……


「うん……? 今、誰かが咳を……」


「どちらですか?」


「ええと……あちらです」


 私が向いた方向に対してルイスマーラが歩いていく。

 ただ歩くだけでも淑やかさを感じるのがすごい。

 何せ鎧着込んでいるのに。


 あれこれと部屋をいじり壁に手をやればこれまたルイスマーラに反応して床が変化していく。

 これは……地下階段だ。


「これを使います」


 ルイスマーラが自分にある飾りの1つを握ってなおかつ行動力を込める。

 すると輝きを放ったと思えば私とルイスマーラにだけ(エフェクト)をまとえた。

 これは……どうやら外気から守ってくれるバリアらしい。


 ルイスマーラが地下へ駆けて行き私が続く。

 地下は白い煙が充満しており少なくとも良い環境ではない。

 そんな景色最悪な状態でもルイスマーラは気にせず駆けていく。


 何がすごいかってとにかく地下すら広いということ。

 辺境伯は伊達ではない。

 屋敷も一部を見た限りだしちゃんと見たのは崩壊後のみ。


 たぶん崩壊前なら大河王国指折りの城で良いんじゃないかな……?

 派手さは少ないが国防を考えた造りとするとこれはすごいお城な気はする。

 詳しくないけれど攻めて燃やされて崩されるというのも内部犯がかなりうまく手引した結果やっと出来たと考えれば凄いことだ。


 何せいたずらに兵を消費させる必要はないから攻め落とせていたらそうしたはず。

 ぶっちゃけ夜間奇襲に対してボコボコにして勝っていた主力部隊も『集合の禁止』法により部隊をいくつかに割っているとはフィノルドさんがこっそりこぼしていた話。


 アール・グレイ単独だからまだあまりわかっていなかっけれど帝国と隣接する辺境伯……めちゃくちゃ偉いし凄まじい力の持ち主なのでは?

 引き受けた以上やるしかないよね。

 うん……


 そうこう考える余裕が有るくらいは走った頃。

 ルイスマーラが突如立ち止まった。

 外気シャットアウトの影響で今においがよくわからない……


「そこですね」


 ルイスマーラは室内用に普通のエレファントナイフを抜く。

 躊躇いなく踏み込めば廊下に人影。

 ひとりだ。


「フッ」


「ゲホッ……何!?」


 咳き込んでいた影は機敏に動きエレファントナイフの斧刃は空を切る。

 もうこの時点でわかる……

 あの時戦ったカルトスたちより強い!


「あなたは……執事長、なぜ?」


「…………」


 対面した相手は執事長と呼ばれる御年寄だった。

 しかしその目はギラついていて無言を返してくる。

 武器を出さずに身構えているのは自身の不利具合を察してか。


 ただ……今の一連で違和感を感じた。

 ニオイはわからないが音や動き。

 それに目や行動力の波長。


 この感じは……


「ルイスマーラさん、彼は見た目通りの御年寄なんだよね?」


「ええ、我が家に長年仕え続けている由緒正しい家庭の者で、彼も既に70を超えています。だからこそ、彼だけは裏切ることはないと思っていたのですが……」


「だったらおかしいですね。彼、年齢と中身の動きやエネルギー感覚が一致していません。まるで、若い誰かが皮だけ被っているような……」


 私の言葉にルイスマーラの目が鋭くなった。

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