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三百五十五生目 超力

 ルイスマーラが光を飲み込んで進む魔法を放った。

 ボンガティは魔法に対策するため手を使って念力を放つ。

 互いに実体が無いため力の衝動をぶつけ合う形になっている。


 やがて力が相殺したがいに砕ける。

 ボンガティはその裏側にルイスマーラがいないことに目を険しくした。


 そのまま背後に振り返りながら手を伸ばし……

 影から目を光らし斧を振りかぶる姿。

 念力を込めて……


 当たるかと思いきや投げつけられた何かが代わりに捕まらされる。

 投げつけられたのは大きめの石たち。

 代わりにルイスマーラが横に駆けて……


「同じ手を使うほど不慣れではありませんよ」


 斧が重々しく振るわれた。

 ボンガティは慌てて体をそらし空中ゆえに滑るよう離れようとしたがキレイに軌道を狙った一閃。

 再び重い刃によって打撃(・・)され吹き飛び地面へ転がる。


『ぐっ……!』


「あなたのように硬い相手でも問題ないように、この武器は押し切るように出来ていますの。斬撃であるのに関わらず中に響く打撃を鋭く内部に届ける……凄いでしょう?」


『いい加減にしてもらいたいっ』


 ボンガティへの追撃をルイスマーラがしようと駆ける。

 しかしボンガティも即反撃。

 より強力なサイコパワーを発揮して広い範囲に念力波を(エフェクト)で見える形にして発動。


 ルイスマーラを空間ごと縛る。


「うっ」


『物を飛ばすのはサイコパワーの児戯にすぎん、本当の恐ろしさは、そのエネルギー力そのものにある!』


 周囲の景色が歪むほどのパワーがボンガティから発せられるとルイスマーラが苦しそうに呻く。

 電気でも光でも炎でもエネルギーそのものが過ぎればそれは身を焦がし焼き付ける。


 エネルギーの塊がぶつけられているのだから身を焼くような衝撃波だろう。

 やがてひと息分使い切ったのか放り投げるようにルイスマーラを念力で吹き飛ばしボンガティは肩で息をする。


『……硬いな』


「ふむ、この程度でしたか?」


 手応えが浅かったことにボンガティは不満げに。

 確かに喰らったはずのルイスマーラは平然と立ち上がりニコリと笑う。

 痛がるそぶりなど見せないプロの戦闘屋だ。


 華麗に土埃を払ったあと……

 急加速からの1撃。

 横から見ているとわかりやすいが今のは直線上の相手を騙す足運び。


 緩急の付け方がうまくボンガティも焦って対応しようとし斬り裂かれる。


「とはいえ、あなたも十分硬いではないですか」


『っく……ニンゲンごときの、柔い身体と、一緒にするな……!』 


 互いに様子見は終わったと言わないばかりの連続攻め。

 斧とサイコパワーのぶつけ合い。

 連続した命の削りあいにより互いの生傷が増えていく。


 ボンガティは必死に下がろうとするがそのたびにルイスマーラが踏み込む。

 見ているこっちがヒヤヒヤするような戦いだ。



「距離を取ったほうがあなたは得意みたいね。下がらせないですが」


『グッ……なぜ止まらん、さっきは止められたはず……』


「1度見たからというのもありますが……そのサイコパワーとやら、だいぶ癖が強いじゃじゃ馬のようですわね。ほんの少しでも乱れれば効果が十全に発揮できなくなる。芯を避け武器や小手でいなしてあげれば、単なる武器のように避けられますから」


『まさか! その野蛮な武器で、このボンガティのサイコパワーを弾いて受け流している!?』


「また乱れていますのよ」


 互いに削り合っているとはいえその有利不利は明らか。

 サイコパワーの乱れを見逃さず武技を発動。

 低く横に薙ぐ素早い一閃がボンガティの足元をはらい……


 そのまま寸分のスキなく打ち上げるかの如く縦へ振り上げ。

 体勢を崩し大きなスキを晒したボンガティが見上げたのは武技によってとんでもない動きで跳び上がったルイスマーラの姿。


 そのまま縦回転して降りてきて斧が脳天に振り下ろされ……


『……っ舐めるな!』


 止まった。

 ボンガティの前に交差する2つの刃。

 それは不可思議な虹色に近い色を放っているが明らかに(エフェクト)のみで実体がない。


「まだ出せるではないですか」


 武技としての型は終了したためルイスマーラは相手の上から降りるように離れる。


『野蛮な者に我が力の奥を見せることになろうとは……』


 その瞬間に念力で出来た刃が1本消えた。

 武技の反動と動きでルイスマーラの反応が遅れた。

 気づけば1本の刃は横から彼女の首を狙って振られる。


『だからこそ、その命ここで絶つ! 脆弱で野蛮な存在は我が念の刃に無力!』


 防ぎも回避も間に合わない。

 血しぶきが舞う。


 ――だからこそ。


「なるほど、魔法防御帽子の抵抗を抜けるとはなかなかやりますね」


『……な!』


 まともに首へ受けておいて首の皮一枚で刃が完全に止まる事態は異常だった。

 

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