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三百四十九生目 入国

「ありがとうございましたあぁーー!! 本当にあなた様方のおかげで!! こうして捕らえられました!!」


「あ、はい」


「ワタクシなどほとんどなにもしていない……いや、兎にも角にも、これで通してもらえますね」


「それはもちろん!!」


 あの後悪魔の目は無事浄化し破壊できた。

 神力のおかげか所詮小型だからなのか空気に消えるように目はなくなったのでアッサリ終えられた。

 良かった……


 捕縛者の引き渡し。

 保護した魔物の譲渡。

 依頼達成報酬の交渉。


 それら一通り終えて……










 今山を登っている。

 今度は整備された国境道だ。

 私たちはそこを大河王国側へ向けて移動していた。


「かなり高待遇を引き出せて良かったですね」


「はい、私は交渉ごとが苦手なので任せられてよかったですよ。無期限パスがもらえるのはかなりの高待遇でした」


「そのぐらいはお任せください」


 アール・グレイは笑顔で答えた。

 私は今山登りのためにもアール・グレイを乗せて移動中。

 色んな意味でこのほうが良さそうだし……


 テクテクと進んでいく。

 驚くことだが乗せているのに疲労が感じられない。

 なんだか不思議。


 これこそ"人騎一体"の効果なのか。

 私の身体みたいに騎乗自体が不安定にならない。

 まさしく乗る側のスキルか。


「見えてきましたよ。ここが国境線です」


 歩いて行けばそこには1つの頑強そうな砦施設が。

 兵たちが少数ながら見えているし奥には帝国側だけじゃない見慣れぬ兵もいる。

 そして上には2つの国旗が風になびく。


「おおー。なんというか感慨深いですね。これが本物の国境……」


「別に国境門が偽物というわけではないのですけれどね。ただ山中はグレーだし、ここからはまさしく私たちの国、大河王国です。乗せてくださりありがとうございますローズさん」


「いえいえ」


 国境の砦近くまで来てからアール・グレイは騎乗解除する。

 そしてアール・グレイだけが砦の方へ近づく。

 兵たちがこちらを見てざわついているようだ。


「な、なんだ……?」


「魔物に乗ってきた……? 正面からか?」


「いや、あのお方……しかし……」


 アール・グレイは兵たちの前に進みまた出入国許可書を出す。

 前みたいに話して通してもらえるように頼んでいるようだ。

 今回は前と違って警戒も解かれているし何よりフリーパスに近いので楽に入れそうだ。


 少しすれば兵たちが完全に武器を収める。

 事前に説明が飛んでいただろうからアッサリだ。


「よし、では行きましょうか」


「私はこのままでいいのかな?」


「はい。門は貨物も通せるように大型なため、問題はありません。受け側は私の管轄にもなりますし……」


 確かにいきなり向こう側から鎧を纏った魔物が来れば何事かとなるけれど……

 まず辺境伯の範疇になるし私は帝国側のフリーパス的なものをもった。

 これは大河王国が見た場合賓客と思われるそうだ。


 一応それでもやることはやる。

 軽い問答。軽い身体検査。

 そしてかなりしっかりとしたもてなし。


 元々アール・グレイの事が向こうの兵は確実にわかるのもあってめちゃくちゃ慎重に対処された。

 何かミスしたら物理的にクビが飛びそうで私がヒヤヒヤしたよ……

 門を抜け砦から離れふたりで並び

下山していく。


 ちゃんと境目結界を抜けられたようだ。


「ここからは脚の負担も考えて乗らずに歩きでいきましょう」


「わかりました。じゃあ私も楽な方に変えますね」


 変に兵士たちの前でコロコロ姿を変えると毎度騒がれてしまう。

 しかし今はいない。 

 私の姿をイチバン楽なケンハリマ風姿にかえた。


 これが1番身体の体重にかかる負担が少ない。

 エアハリー風の飛行姿?

 そんなものは楽に入らない。


(らくなのに……)


 アインスに身体任せればね……今はちょっとね。


「とりあえずカルトスも少しは捕まえられたし、無事入国できたのでちょっと安心ですね」


「はい。ただ一部の仇とれましたが、まだまだカルトスは多く潜伏しているはずです。彼らも下手ゆえに足切りされたとも考えられますから」


「ええ。私も直接この国を見て、危険の現況を見つけられたらと思っています」


 私は結局伝聞でしかこの国をしらない。

 果たしてアール・グレイの知ったことや話そして危ういまでの正義の輝きはどこまで信用できるのか。

 大河王国に蔓延る問題は。


 今この時間も大河王国に関するデータを裏で多くの魔物たちに集めてもらっている。

 それがどのような答えを出すとしても……

 私は下山し大河王国側門を出たのだ。


「ついた! ……おおーッ」


「眼前に広がるのは我が大河王国が誇る聖なる川、ウクシツ大河です」


 ここの位置が少し高いからこそよく見えるのは広がる平地。

 ずっと遠くまで光を照り返し輝くのは国の代名詞にもされているウクシツ大河だった。

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