三百四十六生目 作戦
カエリラス系列と思われる敵たちが山の中に隠れ潜んだ。
国境の帝国側にいるが山中は悪魔の目つき魔物が放たれ危険。
私たちは1にも2にもなくすぐ引き受けた。
ちなみに引くほど感謝し倒された。
リウさんの立ち回り方……結構私は苦手かもしれない。
主にどんな悪条件でも飲まされてしまいそうで。
私たちは門の裏手の道なき山の獣道から侵入経路をたどることにした。
まずは地道な調査だ。
「アール・グレイさんは来なくても大丈夫だったんですよ? 私が本業ですし」
「誓いを立てた以上ワタクシも働いてみせます。それに、先程言われた特徴が気にかかるのです」
「アール・グレイさんたちを襲った連中ですか」
「はい。もし奴らならば……カルトスならば赦してはおけません」
「カルトス……?」
地面を探れば明らかに最近ニンゲンが駆け抜けた跡がある。
複数人いるようだが……
においを覚え駆け出す。
「ええ。彼らはどんな悪事にも手を染め非合法な依頼も請け負う悪逆の限りを尽くすわりに社会のスキマに入り込んでいる厄介な組織です。感覚的に言えば、帝国でも大暴れしたカエリラスと似てはいますね」
「なるほど……本当に厄介な組織ですね。カエリラスと同じならば、なおさら今回のは逃がせませんね」
ここでもカエリラスとのつながりが見えたか。
……なるほどここで一旦追手を巻くために細工している。
ただこんなの私にかかればないのと同じだ。
アッサリ方角を看破し走っていく。
「ええ。そしておそらくは、ワタクシの仲間を襲った奴ら……無傷とはいかず、戻ろうにもドジを踏んで右往左往しているのでしょう。ここで確実に潰します」
そう言ったところでアール・グレイは額の汗を拭う。
「ところで、これはどこへ向かっているのですか? とりあえずついて行っているのですが……」
「あ、もっと速度上げられますか? 犯人たちが潜んでいる方向にあたりがついたので進んでいるのですが」
「いつの間に!? あっ、その、大変申し上げにくいのですが、山の上だとこれ以上は……」
「なるほど。では姿を変えるので乗ってください」
肩で息をするアール・グレイを見てやり方を切り替え。
姿をグラハリー風4足型に切り替えて軽く全身針鎧を纏う。
この状態なら大人がのっても足はつかないしグラつかない。
亜空間から魔法で鞍を出す。
前乗ってもらった経験から役に立つ時が来ると思って作ってもらっていたのだ。
魔法鞍でクッション性もよくサイズが可変で便利。
ちゃちゃっとイバラで取り付けた。
「な、な……!?」
「では、どうぞ」
トゲなしイバラを2本そっと伸ばす。
それに対し困惑しながらアール・グレイがおどおどとした手付きで触ってきて。
とりあえずオーケーぽいので箸のように掴んで持ち上げた。
「うわっ!? 軽々とっ!?」
そのまま私の背に乗せ……
鞍にドッキング!
これでよしと。
「こんな風に姿を……! 噂通り、いや、それ以上……!」
トゲなしイバラでシートベルト。
つかまってもらって出発準備完了だ。
「多分、乗鳥はできますよね? 舌を噛まないでくださいね」
「も、もちろん。わかりま……うわっ!? 速いっ」
イバラにちゃんと掴まってもらってシートベルト完了したらダッシュ。
車よりも速いよ!
山道なのにね。
ササッと捜索してザックリ検討ついた。
放ったはずの悪魔の目持ち魔物が見つからないのは不安だが……
ニンゲンと違いにおいがあっちこっち行っててそちらは追っていない。
自然洞穴の中で火を炊いていた。
煙が出るのはどうしようもないが魔法を駆使して煙を隠しているらしい。
便利だなあアレ……
中には3人。
全員が武器をそばに置きほぼノータイムで構え出せるようにしてある。
さすがに狭い洞窟内で先手を取って戦うのは難しいな。
「……どうなさったのですか? もしやカルトスたちが?」
『あ、念話つなげますね。中に3人いますが、これで全員かはともかく結界を貼って伏せています。割と訓練をこなしていて、私たちが踏み込めば即バレますね。ちょっと狭くて奥まではこの体では侵入できないあげく、魔法も派手なの以外は難しくて、派手な魔法だとどさくさに紛れて逃げられるのが1番怖いですね』
『お、おお……なるほど……そこまでわかっているのですか』
アール・グレイは私から降りる。
そして少し考えて。
『何か思いつきました? ないなら雑に魔法放ちますけれど』
『いや……ワタクシに素人考えながら、やってみたいことがある』
アール・グレイは一体何をする気なんだ……?
でも任せてみよう。
その琥珀色の目が強さに満ちていたから。




