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百三十九生目 二大

「びっくりしました……まったく気配を感じなかったので」

「あ、そうなんだ。僕からだと普通に見えてたからどうなのかなって思っていたけれど……」

「いやースゴイね! あんなことも出来るんだ!!」


 妖精ふたりが加わり賑やかになった旅。

 ドラーグは褒められていてなかなか嬉しそうだ。


「それにいきなり目の前に居た時はびっくりしたよ!」

「魔法で飛んだ先にいたなんて驚きました」

「あ、私達も魔法で飛んだばかりだから……」

「そうなんですね、被ったわけですか」


 私の空魔法"ファストトラベル"のように特定の場所に飛べるものを使ったようだ。

 印象的な場所が必要なのでそのためか。

 あそこは2つの奇岩が組み合わさり丸を作っているから誰の印象にも残りやすいだろう。


 妖精たちに案内されつつ本来の話に戻る。


「それで私達のお願いなのですが……とある2匹の魔物たちの戦いを終わらせて欲しいのです」

「2匹の魔物?」

「そうなんだよ! もうすっごい揉めててさあ! たくさん死んでるし困るんだよ!!」


 うえ、何それめちゃくちゃ怖い。


「両陣営部下たちは大したことはないんだ。! しょせん強いやつに惹かれただけだからな! だけれども問題はその2トップ!!

 奴らが争えばその場所はむちゃくちゃになっちまうんだ!!」

「そろそろその場所につきますが……」


 妖精たちが話しながら移動していた方角は確かにまだ地形を記録していないところだった。

 だからこそその付近に足を踏み入れた時に異常事態に気づく。

 急激に魔物反応が減る。

 この荒野は基本は凹凸が激しいが描き出される地形は不自然なほどに平ら。


 いや正確には……

 地形を壊されまくり多数の破壊の爪痕が残る無残な土地。

 まるで闘技場のように切り抜かれていた。


「うわ……もしかしてあれかな」

「うん? まだついていないけれどもしかして遠くが見える系?」

「うんまあ似たような感じ。地面が抉られまくってて平らにならされちゃってるやつ」

「あーそれぞれ、まあ今は近づいても平気だから行こう行こう」


 妖精に引き連れられるまま歩き数分。

 ついにその場所へとたどり着く。

 直接目で見たそれは……異常だった。

 大地が抉れ壊れ崩れならされている。

 荒野とは言え低い草木ならば頑張ってたくさん生えているこの迷宮の中でここだけが切り取られているようになくなっている。


「何度見てもコリャやべーわ」

「幸いな事に彼らはこの争いで傷つき、また互いに全力を尽くしたため力を使い果たして、今はおとなしいでしょうか……」

「まあ時間の問題だろ、ほっときゃここら一帯全てこうなる」

「えぇ……」


 これ私がどうにかできる範囲越えてるよね?

 ここが闘技場か何かだと言われたほうが納得する。

 大きいドーム1つ分くらいなってないかなこれ。


「わ、悪いけどさすがにこれは」

「ああ! お願いします! 頼める相手なんてほとんどいないんですっ!!」

「ボク達の群れまで巻き込まれるのはもうゴリゴリなんだよ!! この迷宮がめちゃくちゃになっちゃうから、外から来たキミたちに頼むしかないんだ〜!!」


 ん? 今のって。


「ここが迷宮の中だって知っているんだ?」

「ん? ああ、まあボクたちの他と比べりゃ変わっているからね」

「私達、ニンゲンという種族とも交流しているし、他にも仲がいい種族がいて、一部からは『迷宮の味方』とも言われているんですよ」


 そういえば前聞いたところではコボルトと呼ばれる魔物はニンゲンと交流していたっけ。

 ひっそりとこういう交流している種族は多いのかもしれない。


「で、『迷宮の味方』さんは迷宮を荒らす敵に対して手も足も出ないと」

「グフッ」


 活発な方の妖精に言葉が刺さる。

 割りと気にしていたらしい。


「ええと、私達も別に迷宮の味方というわけでは……ここで新しく大勢で住めないかなとか、色々開発出来ないかなって思っているわけだし」

「ああ!! 別にそういうのは良いんだよ! バンバン破壊されてバンバン死ぬのが困るだけだから賑やかになる分にはむしろ歓迎!」

「本当に私達の力不足は痛感しているんです。だからお願いします!!」


 ううーん。

 確かに私達が結局ここに棲むにはヤバそうな2匹の争いを止めなくては無理。

 それに今サラッと一部とは言え棲むことに賛同をもらえた。


 チャンスは大きいが相手がわからない以上リスクが大きすぎる。

 ただなぁ、ここで見捨てるのもなぁ……

 これは、私の訓練している『アレ』を早く完成させなくてはならないかも。


「ううーん、こう、双方の情報はある?」

「あ、はい! 少しだけですが……」


 そう言って提示された情報は彼らの戦いの始まりからだった。


「ボクたちが知っている限りの始まりは、ごくささいな事だったよ! ニンゲンたちが狩りをしている時にたまたま別の魔物たちもとある2つの魔物の群れを狙ったんだ! で、それがまたたまたま双方子どもが産まれる前!」

「それでだいたい同じ時期に産まれた2匹は生まれつきとても強かったと聞きます。追い詰められたから頑張ったとかでしょうか?」


 う、もしかしてそれって二つ名モンスターかな。

 前冒険者たちに聞いた二つ名モンスターの特徴と一致している。


「それでしばらくはまあ多少強い子がいた、程度だったのですが……」

「同時期に産まれて互いに互いの群れを警戒していたからか、その2匹が意識しあうようになったんだよ! それで成長した頃には互いに手をつけらんないほど強くなってて一触即発って感じになったんだよ!」


 後は何かほんの少しきっかけがあれば、か。


「ということはその後に、ちょっとしたことから?」

「うん! 互いの下っ端たちがそっちが先に殴っただのどうだのと騒ぎ出してそこからはあっという間! 」

「僅かな時間の戦いではありましたが永遠にも感じるほど長かったものです……

 それほどおぞましい戦いがこの地で広げられました」


 妖精たちは深いため息をついた。

 ここで見たものは彼らの記憶の中で地獄になっているらしい。

 おそらくそこで心が折れてしまったのだろう。

 私も見てたら尻尾巻いてこの迷宮から離れると思う。

 まあここに住んでいる彼らはそうはいかないか。


「それで彼らの特徴は?」

「ええと、一方が大きな蛇みたいなやつ! ひと目見ただけでヤベェ奴だってわかるよ!」

「爆発するような砂のような煙で何もかも吹き飛ばしちゃうんです。もう一方の魔物もそれに苦戦していました。そのもう一方は大きな蜘蛛です」

「火と水を同時に使ってなんかヤベェ爆発起こすんだ! もう互いにドッカンバッカンだよ!」


 ……もしかして粉塵爆発と水蒸気爆発じゃないだろうな?

 もし互いに理解してやっているのならばエグすぎる相手だ。

 地形が抉れて壊れているのも理解できる。


「他には何か?」

「いやー、棲み家を知っているくらいかな! 危なすぎて近寄れないからさぁ!」

「もうしわけありません、ですが互いにまだ全快ではないということだけは風の便りで聞きます」


 噂だから信憑性が微妙か。

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