三百四十二生目 漏洩
アール・グレイの話は続く。
「ワタクシは招かれた機会に招かれざる王宮奥地へ忍び込みました。それが先程の記憶です。そこで通常ハレムよりも更に奥へ潜んで、まさか本当に隠れハレムがあるとは……」
「あの隠れハレムはそんなに危ないところなんですか? なぜか男児もいましたが……」
「そう。それなのです。隠れハレム自体、どれほど悍しい事が行われているかわかりませんが……それ以上にあの場で未成年の男、他の召使いと共にいるというのが、最悪の事なのです」
うーむピンとは思い浮かばないが確かに少年があんなところにいたのは不思議だ。
誰かの子供ってわけでもないだろうし。
「つまりなんだ、他者に公開できない場所で、何が起きても文句言われないところに子供がいるというのがってことか?」
「それもあります。しかし、ハレムはとても淑女の方へ口にするのは憚れる目的で、さらに隠れハレムとなると、法や倫理すら無視した事も行われるでしょう。その証拠そのものが、その召使いのひとりとして少年がいたということ。我が大河王国では、子どもに翠竜神のもたらす花と果実を手に取り食べさせるのは、法律以前に宗教的に禁じられており、ハレムは紳士とは言えない男たち向けの施設で、男同士が翠竜神がもたらす果実を食べ合うのはもってのほかとされていて……つまりは、2重3重に悪と判断できます」
「えっと……その、翠竜神がもたらすーというものとは結局どういう……」
「も、申し訳ありません、その回答だけは、後で文にしたためますので、どうかこの場では、ワタクシを信じていただきたい……」
なんなんだろうか……?
まあアール・グレイの話はなんとなくわかる。
少年が王宮の隠された奥地で労働させられているわけだ。
奥地は何をしても良いという場所らしく……
宗教観と国や時代の倫理的違いからか特に女性よりも男性がそこで働いているのがマズイらしい。
別に召使いなんて男性が男性に接待しても良い気はするがそこを口挟んでややこしくするつもりはない。
ともかく整理すると。
「その男子が王宮奥にいるというのは、大河王国の王族にとって重罪であり、腐敗の象徴、ということでよろしいですか?」
「ええ。それで民衆たちは怒りに燃え、王位継承権持ちたちも無視できないことになります。他の不正も芋づる式で引き出せるでしょう。ただ、現状はワタクシの記憶のみ……国内では誰が敵で味方か判別しきれず、辺境伯である父はワタクシたちに海外の政治的に大河王国とつながりが薄く、実力が確かな者にしっかり捜索させるよう命じました。元々父やワタクシは、最近の王族に強い不信感を覚えていたので。しかも辺境伯という立場上、信任を置かれていて、自由に動けましたから。ただ……」
「どこからか、情報が漏れたのか、襲撃された?」
「はい。ただ、すぐには襲ってこなかったのと、今まで襲ってきたのは下賤な輩や凶暴化しやすい魔物の誘導あたりで、しかも父とワタクシたちが完全に別れた後。向こうも確信があって動いているわけではないようです。速達郵便は出しましたが、果たして向こうの状況はどうなっているのか……」
辺境伯をやっている以上国境付近を任せる関係で基本的に寝首をかかれずに済む相手として認識されているはず。
それなのに襲われるだなんて信頼がないというより内通者がいるとしか思えない。
そんな状況は確かに国内では誰にも信託できないわあ……
アール・グレイも意気消沈といった顔持ち。
しかしその琥珀色の目だけはしっかりと意思を保っていた。
「その、そういえば肝心な王政を私たちは詳しくないのですが、どのような環境になって不信感を?」
「多すぎてきりがないというのが実情ですが、決定的になったのは集団の禁止ですね」
「集団の禁止……まさか、たくさんのニンゲンが集まることそのものを、法で禁じたのですか?」
「やはり海外の、しかも魔物の方からしてもバカバカしい法律ですよね。これで祭、祈りの集会、話を交換する会談、全て一定以上の人数は禁止されています。兵の集団訓練ですら、外部から監視官がつく窮屈さです。ワタクシの仲間も最低限にしたため、余計におくれをとってしまっていて……」
「正直、効果がえげつないほど出ていますね……」
これは抗議活動をうまく捕まえるための法律なんだろうな。
もうそこまで行ってしまうと末期な気がする。
「んで、俺達に依頼を? なんでだ」
「本当は最初、隣国からも評判高く聞くに誉れ高い勇者様に頼もうとしたのです。しかし、勇者様は最近表で活動をされていない様子。それ以上の活動履歴をさぐることもできず、不安定すぎるということで、仲間をあたったのです」
アール・グレイが軍の兵士に指示を出してとある本たちを出してもらう。
すごい他軍の兵ですらこんなにちゃんと扱えるあたり本物だなあ……
本の中身は……




