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三百三十一生目 覚悟

 砂漠の迷宮。

 そこには1つの大きな箱があった。

 その箱が今上部まで完全に塞がれようとしている。


 その箱はナブシウと融合したテテフフたちを中に内包し。

 ローズクオーツは外で最後の仕上げをしていた。


「本当に閉じちゃって良いんですかー!?」


「愚問だ。むしろしっかり防げないという事が1番困る。我が神の偉大なる力の一端を振るうのだ、生半可なことで余波を防げると思うな」


「わ、わかりました……! 無事に帰ってきてくださいね」


 ローズクオーツが最後の仕上げとして屋根を塞いでいく。

 ローズクオーツは屋根の上から心配そうに宝石の目を輝かせるが……

 やがてそれすらもなくなる。


 そして残るのは暗闇。


『良い腕の。技術だ。察するに。弟子か』


「まだ我が神に見せられるほどのものでは無いが、ここで使えないような鍛え方はしていない。これで内面は曲面補強され、ちゃんと力の逃げる方面もつくってある。これで思いっきりやれる……」


『信頼しているな』


 ナブシウが魔法を唱えテテフフへ転生魔法をかけていく。

 緑色の(エフェクト)がテテフフ融合体を下から照らす。

 地味な見た目だが発動すれば効果は大きい。


 これで転生待機状態になった。

 この後死ぬことで発動する。

 その前に魔法のエネルギーを切らしてしまえばだめだが。


「信頼、か。しているのか……?」


『ああ。ナブシウにしては。何よりも』


「それは……なんだか悪い気はしない。本人に言うつもりはないがな」


 ナブシウは暗闇の中でわずかながら顔を緩めた。

 テテフフも何を言うでもなくただ浮いているが……

 徐々に浮き出る邪念が強くなっていた。


 テテフフ自身にももう抑えきれていないらしい。

 閉じ込めが完成した時点で強く害することそのものなのだから。


「クッ……意思もない力の亡霊め、ただただチカラに対して反発するだけのものが、その存在、我が神に対して失礼千万っ」


 もはや邪神としての意思はテテフフが剥奪している。

 害意とは1種悪意の意思。

 喜ぶようにそれを取り入れに来ているのは邪念という力の塊。


 あれが暴走した神力の行く末だ。


『おそらく。時間がないのだろう』


「ああ、あちらも時間がないらしい。ならばちょうど良いというもの。今、最後の仕上げをする」


 ナブシウの全身が(エフェクト)に包まれていく。

 どうやら分神で色々やるためにかなり力を貯めていたらしい。

 凄まじい力でナブシウの姿を大きく変化させる。


 ナブシウによるとこれは進化ではないらしい。

 元の力を少し出している状態だそうだ。

 足枷は外れ大きくなった体は力強さが全身から溢れている。


 ナブシウは半眼を開けて暗闇の中を見つめた。


「次で、確実に決める……むっ!」


『もしや。使うつもりない。そう言った。あれを使う気か』


「ああ。我が神の被造物、私が無能だと思われるのは我が神にとっての侮蔑。頼まれ事とはいえ、完璧にやるために好き好みはしない」


『ナブシウ』


 テテフフがどこか感心したような念話を出す。

 確かに……ナブシウは今まで傲慢というか自分の神の威を借りたような態度で慢心しまくっていた。

 それが今やむしろ自分の神を含めるとはいえ誰かのために戦うことを慢心せず行えている。


 その姿勢そのものも外から学んだ結果を示しているようだった。


「はあぁ……っ」


 ナブシウは先程よりも更に力が高まっていく。

 この先は私も知らない。

 ナブシウが放つ真の力……


『ローズクオーツ、まだ近くにいるな?』


『は、はい、天井付近に』


 ナブシウが念話してローズクオーツの位置を探る。

 そして返ってきた言葉に嘆息を吐いた。


『はぁ、まだ自身の力を過信しているか……または私の力を侮っているらしい』


『えっ、どういうことですか!?』


『どうも何も、この石箱程度で完全封殺できる技を放つと思うのか? 今すぐ全力で離れろ、足が遅いなら魔法も使え』


『え、ええ、そんな強い技使って、先生は……?』


『気にするな、走れ!』


『必死に飛んでますっ!』


 ナブシウがそう話している間にも(エフェクト)が身を包んで行き一部が別の形作る。


「我が神よ、ほんの僅かな時、我が神の名誉と秩序にかけて御身の寵愛から離れ、命を賭して聖戦を行う事を赦したまえ」


 (エフェクト)は錬金術で作られたらしい小さな鍵になる。

 美しいが質素でナブシウの趣味とは違う。

 まるで他者のものだった。


 鍵はひとりでに動き吸い込まれるように最後の拘束具へ向かう。

 それは首輪。

 鍵穴に刺さると宙に文字が浮かんだ。


[承認]


 ガチャリという音と共に鍵は消え首輪はすぐにでも外せる。

 ナブシウが完全なる真の姿を取り戻そうとしていた。

 

「さあ、叔母上も覚悟を」


『ナブシウ。良き仲を持ったようだな』


 その時。

 輝きが突如不安定になり同時に邪念が恐ろしく強くなってナブシウに襲いかかる。

 それに負けじと光が強まるものの異様に不安定。


 なんだか嫌な予感がして。


「我が最終技」


 ローズクオーツにも視界をつないだところで。

 首輪がナブシウから落ちた。


「壊炎獄」


 凄まじい揺れと共にナブシウとつないだ線が消える。

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