三百二十五生目 特急
仮装をした魔物たちやニンゲンの彼らはもはや夕闇の中で彼世と混じり合い今やこの夜があけるまで生命ならざるものに身を任せている。
それがたとえ仮初めであったとしても生きることと死ぬことの表裏が裏返っているだけ。
「今、死と生ははっきりと繋がり、今私達がここにいます。きっと死霊系の魔物の方々も混じっているでしょう。死霊系の方々は逆に今、『生きている』とも言えるのです。この世界は残酷でも、こうして巡回しています」
遠くにいるグルシムの瞳は何を映すのか。
けれどなぜか少しだけ嬉しそうにも見えた。
「私達は死んでもどこかで繋がるのです。良くても、悪くても。だからこそ、収穫の精霊神アラザドは始まりと終わりのつながりを祝い守ってくれます。より繁栄をし、より大きな渦になっていくように」
壇上の魔物が歩き横へと逸れていく。
舞台の明かりが消されてゆきかわりに今回の本題が照らされていった。
「収穫の精霊王アラザドは実りから得られる甘みを好む甘党といわれます。今ここに捧げ物と祭壇を用意し、今後のさらなる発展を祝って、降臨に儀を執り行いたいと思います」
歓声が湧き上がる。
それはそうだ。
見たこともないお菓子の家なるものが出来てなおかつお菓子の家は食べられると聞いている。
流れから捧げ物やら祭壇やら言うものがお菓子の家だと知っているだろう。
終われば食べられると周知もしてある。
まさしくメインイベントだ。
壇の奥は明かりに照らされてもどこか不気味に薄暗い。
だからこそところどころ輝く魔力が放つ淡い光浮いて見える。
「あれって……魔法陣形成の元?」
「見たことないな……出来上がったらわかるのかな」
「そもそも複数であんな端の方まである魔法陣形成の元を満たすなんて軍事魔法でもそんなに……」
魔物たちも詳しいものらは不可思議そうに話しニンゲンたちはその知識から不審がる。
ひと昔前アノニマルースを焼いた軍事魔法はこちらの傷を癒やさせず残したが……
こちらは記憶に消えない味と思い出を残すようにしよう。
舞台の端からアカネやハックにバローくんなどが歩いて出てくれば場から少しざわめきが起こる。
暗闇の中を彼らが歩いて行き私が最後に歩む。
『いちにーさんはい』
"以心伝心"で念話を伝え"同調化"でみんなの思考を共有化。
ぶっつけ本番の動きをやるためには裏でどれだけトリックを使えるかによる。
みんなの仲良し度は結構曖昧バラバラなため念話での調整はかかせない。
スポットライトが私だけを照らすように動く。
めっちゃくちゃ眩しい。
魔女の帽子を深く被り肩から下全部を覆い隠すマントを纏い踏みそうなほどに長い。
快活に歩かないように慎重に動きスポットライトの動きに合わせる。
なんとか姿勢を崩さず光と共に中央付近まで歩めた。
よく見るとここにマークがあり客席側からだと見えない。
それにこの場の飾り付けが目を奪うから高い視線を持つ巨人系統でも難しいだろう。
もし見られてもなにかある程度しか思わない。
なぜなら魔法陣構築の元である杭やら魔石やらがやたらめったあるからだ。
『起動準備完了』
『配置に付きました』
『まず裏側作動行きます』
私のスポットライトが絞られていく。
かわりにその分の光を分けるかのように淡くこの舞台にいる魔女たち全員をそれぞれ照らした。
裏方たちの動きにより空中にポインタたちが浮かび見える。
順に広場を取り囲むように篝火たちが灯っていく。
説明通りの迎え火だ。
さらには内側へも篝火が焚かれこうなってくれば客たちはいやがうえにも雰囲気に飲まれるしかない。
私達の首周りには司会と同じ魔術具があり少し喉を鳴らせば拡声される。
『さん、はい』
魔女全員が揃って同じ動きをする。
ただマントから片腕を出しただけでも。
痛いほど十分に視線が集まったのを理解してから。
「「箒よ!」」
全員が一斉に同じ杖を取り出す。
箒型のものを私からスキルを借りて空魔法"ストレージ"で出しただけだ。
「「おお……!」」
しかしそれだけでも雰囲気にのまれている観客たちにとってそれだけでも静かな感嘆符に変わる。
良かった。
これなら成功に近づける。
箒を同じように掲げれば場の興奮は静かなのに燃やし尽くさんばかりの高まりを感じれた。
なおこの杖たちは特急料金払って職人たちが泣きながら仕上げたもの。
ほんと申し訳ありません!
『良いですね、いけそうです』
『魔法陣展開開始して、ホルヴィロス!』
『わかったよ、ローズ!』
ホルヴィロスは魔法陣作成のための本を持っている。
前やってわかったが本という『杖』と銃という『杖』2本持ちで詠唱やるのは大変。
神力を持ってて存分にふるえて詠唱に集中できるようにするにはホルヴィロスが裏方につくのが一番だった。




