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三百二十四生目 幕裏

 降臨の儀が行われる土地はどこか不思議な世界のような……

 常世と切り離されたかのような空気が流れていた。

 はっきり言ってしまえば人工神域だ。


 もちろんまだなんの効果もない。

 ただ場の空気を醸し出すのには十分効果があるようだ。


「すごい……まだ時間まであるのに」


「それだけ期待されているってことだね。さすがローズの案! 報道ギルドも間に合ったみたいだし」


 ホルヴィロスが目をやった先には手に特報の文字が入った荒い紙。

 いわゆるところの新聞紙だ。

 既に間に合っているとはとんでもない速さでの書き上げ。


 報道ギルドはこういう点信頼できる。

 面白いものにはどんどん飛びついてくる点だ。

 きっと今も会場のどこかに取材班のブン屋がいるのだろう。


「それじゃあホルヴィロス、本番で」


「うん、肩肘張らずにね!」


 ホルヴィロスに外れた頭はともかく笑顔の尾振りで見送られる。

 ニンゲンたちのコミュニケーションと違うのはこういう表情筋以外のコミュニケーションだ。

 前対談で真顔過ぎて引かれていたことがあるらしい。気をつけないと。


 奥へ歩めば舞台がある。

 私はその裏口へこっそり回り込んで……

 舞台裏にひょっこり顔を出す。


「こんばんはー」


「「こんばんは!」」


 スタッフたちが既にたくさんいた。

 今回表舞台に立つのは行動力に長け魔法系に長けた者たち。

 各々が各々『魔女』の格好をしている。


 いつものメンバーではなくこのために召集された者たち。

 しかし中には知り合いもいた。

 ダカシの妹であるアカネ。


 弟のハックマナイト。

 そして研究者バローくんだ。


「みんな、忙しいところ協力ありがとう」


「ローズさんにそろそろ借りを返さないとね」


「お姉ちゃん、似合ってるね!」


「なんだかこうして同じ作業するのは久々ですね」


「「よろしくお願いします!」」


「うん、みんな今日は張り切っていこう。肩肘は張らずにね」


 そんなことを言いつつも私も緊張がある。

 ホルヴィロスには見透かされたがこれは私自身に1番必要な言葉だ。


 私も席について本番用の装いにしてもらう。

 ちらりと見るとアカネは今髪のセットしていた。

 アカネの髪はニンゲンの特長とも言える長さがある。


 せっかくなのでということなのかどんどん編み込んでいっている。

 ニンゲンのプロが担当していてマンツーマンといった様子。

 それを周囲の何名かが目を輝かせているが同職とも言える者なんだろう。


 編み込みと結いは非常に丁寧でまだまだ子供のアカネがみるみるうちに大人の雰囲気になっていく。


 ハックは私と同じ感じの種族であるケンハリマでさらに今は進化することによりフタハリーという2足の姿になっている。

 雰囲気合わせのためにか私と対になるように明るい配色の同じタイプの服でもちろんハイヒール。

 違うのは彼のそばに浮いた分身という名の肉らしき何かがあるということ。


 そちらもついでにホラーペイントされているのでなんだか本物の魔女っぽい。


 バローくんは化粧合わせしていた。

 彼は成長し少しずつ大人の顔づきに近づきつつあるはずだけれど元がキュート系の顔立ち。

 ハックもそうだがちゃんと化粧と仮装やらないと一気に会場が和やかになっていく顔だ。


 あまりこの時代ニンゲン男性の化粧はしないがバローくんはフクロウ系の力を身に着けたニンゲントランス体。

 そこはむしろ羽飾りというやり方で少しずつ真面目な雰囲気に作り変えられていく。


 そして私。

 スタッフさんと私で話し合いながら毛先を切りそろえ……

 化粧して毛のツヤだしや雰囲気変えする。


 子供顔は私もあまりひとの事をいえないがホリハリー風ならば問題ない。

 もっと本格的に妖艶とも深淵とも言える見た目へ。

 そして装いも今の動きやすい姿から本格的な儀式用の装いへ。


 その動きにくい服で儀式しなくちゃいけないのでうっかり服を破らないようにしないと。

 外からの声がだんだんと大きくなっていく。

 それは儀式の始まりを告げる者が壇上に上がったということ。


 さあ……完全なる通し練習は1度も出来ていない。

 泣いても笑ってもぶっつけ本番だ。







「――として、ここに収穫の精霊神アラザドに今年1年の収穫への感謝と終わりへの祈りを捧げ、まためぐる時を喜びましょう」


 拡声のネックレスと呼ばれるつまりマイクとスピーカーがセットになったものを使い壇上の魔物は語っていく。


「私達がここにいるのは、亡くなったご先祖、それに生きる過程で食べた生き物たち、生き残るために争い敗れたものたち、他にも様々な要因で死にゆくものたち、たくさんがいます」


 魔物にそういう考えはあんまりないタイプが多い。

 単純に興味深いのか耳を傾ける様子が見て取れた。

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