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三百二十三生目 開始

 ローズクオーツとノーツがめちゃくちゃ踊っていた。

 しばらく踊り満足したのか拍手喝采されたあとこちらへと来る。


「すごかったね、お疲れ様」


「ふたりとも、こんなところにいたんだ! しかもいつの間にやらあんなダンスも踊れて……」


「これも訓練の結果です。ローズクオーツと調整を行い、素早く仕上げました」


「半ば即興だったんですけれどね! いい仮装服をもらったので、踊ってみましたっ」


 ふたりともうれしそうに話してくれる。

 なるほど……貰い物だったのか。

 ふたりとも街のあちこちに出かけまくっていたから多くの魔物と出会う機会があったからだろう。


「もらった相手にお礼言わなきゃ。誰かわかる?」


「いいえ、たくさんいる方々からあれこれあっという間に渡された物なので……多分、みなさんで協力して渡してくれたものだと思います」


「わたしたちは、わたしたちなりのやり方でお返しします。ローズオーラ様に苦労をおかけしません」


「ええ。この体、ダンスもすぐに覚えられたし、何よりこんな大規模なお祭りは初めて! わたくしの中をめぐるエネルギーが溢れそうで、興奮しぱなしなんです!」


 後で知ったことだが前日までスキマを見てはみんなの手伝いをしていたらしい。

 そのお返し品だった。

 私を介さないでもアノニマルースと良い関係が築けそうで良かった。


「アドリブというものも多数成功。姉妹機ローズクオーツがサポート」


「意外にもノーツがノリノリでこっちも助かりました。私達、種族が種族なだけにちゃんと表現ができて良かった」


 ゴーレムはまさしく無機物だしそのうえ人工生命で他の自然輪廻とはまた違う。

 ローズクオーツはそのあたりをうまくノーツを引っ張ったらしい。

 それでなんとかなるあたりもノーツが雰囲気より融通がきくということだ。


「よかったよかった、ローズのゴーレムたちも楽しんでて」


「ってうわぁ!? ホルヴィロスさんの首が横に!?」


「対象、スキャン。怪我なし。構造から判定、植物ツルで繋いでいる模様」


「ふふふ、良いコスプレでしょう?」


「驚きました……」


 ホルヴィロスはニコリと外れた首で笑う。

 ローズクオーツは良いリアクションしてくれたがノーツは解析してしまったようだ。

 やっぱり真面目だ。


「この後、降臨の儀に行こうと思っているんだけれど、キミたちはどうする?」


「わたくしたちは、まだまわって踊れていない場所があるので、そちらを優先した後合流させてもらいます」


「ほんと、休みの日なのになんだか働いているみたいで……大事にしてほしいけれど、とてもすごいと思うよ」


「えっ、そ、そんな褒めていただけるだなんて……!」


「好感上昇を確認。わたしは喜んでいます」


 ローズクオーツがハートを撒き散らすように踊り舞いノーツはガッツポーズをとる。

 危険なような気はしつつも彼らの食事と言われると褒めないのもだめだろうとなってしまう。

 匙加減。匙加減……









 ふたりと別れた後私達は改めて目標の広場まで来た。

 そこではもう暗幕が取り払われている。

 かわりに宙からたくさんの幻想的なランタンがぶら下げられていた。


 飾り付けも他のところよりも何段か重い雰囲気にしてあり浮かれた気分が歩みをすすめるごとに背筋を伸ばしたくなる。

 死を慈しむためのシンボル……つまりは宗教的なマークも宗教に限らずあちこちに取り入れられておりそのせいでより神聖さが増した。


 この場に静寂の魔法がかかっているかのようにみんな広場に近づくほど声量が落ちていく。

 賑やかでどこか興奮した面持ちのまま凛とした目になっていくのはこの場が醸し出す宗教儀式の貫禄だろう。


 本物を参考にして何度も調整して……

 けれど時間がないから最終的にプロのフィーリング任せになった。

 なのでこうして現地で見てちょっと感動している。


「凄いね……みんなが平気なら、ここに白い雪を降らしたいくらいだよ」


「絶対駄目だよ」


「もちろんっ! ローズやみんなを困らせるようなことはしないよ」


 ホルヴィロスは外れた頭でウインクしてくる。

 白い雪……ホルヴィロスの指すそれは季節で降るものではない。

 ホルヴィロスが飛ばして降らす猛毒の花粉だ。


 当然ホルヴィロスは言ってみただけだろう。

 ホルヴィロスは他の神と比べて私が絡まなければ常識的だ。

 ただホルヴィロスが雪を降らしたいというのは自分の神域に取り込みたいというのと似た話。


 ホルヴィロスなりの褒め言葉だ。


 私達が広場のイベント中心地までたどり着けば既に魔物たちがたくさん詰め込まれていた。

 ニンゲンたちも比較的高さのある体を活かして後ろからでも見てやろうとしている。

 その後ろにはサイクロプス系の巨人族が座る。


 場は熱さを感じさせないのに燃え上がる炎がうまれているかのような熱気だった。

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