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三百二十生目 同胞

 若鶏の3姉妹が祭りに来てくれた。

 コッコクイーンたちだ。


「プルプル?」

「ああそうか。イエローがアラザドっていう神に関して聞きたいらしいんだけれど」

「神って何!? 私達よりえらいの!?」


「いや、えらいとかえらくないとかはないけれど……収穫の精霊神アラザドというのは――」


 私は信号機(あかあおき)にアラザドについて説明する。

 ただ彼らに説明するのはあくまで表向きの方だ。

 最後までマジックに付き合ってもらう。


「――として収穫を甘い力に変えて、祝福返ししてくれる良い神様が降臨する予定なんだ」


「大丈夫なのそいつ? 騙されていない?」


「誰かを食べることでやっと生きられるということは理解できるから、わたしは信じてあげるのよ」


「プルプル」


 ブルーはどこかでキラーコッコに買わせたのか串焼鳥しお味を啄む。

 一応ちゃんと脳内訂正しておくが共食いではない。

 アノニマルースで出る現在の肉は殆ど魔物じゃないし魔物だとしたら特別なもので草食組がいる祭りでは取り扱わないからね。


「そういえばそれを食べるための資金って結局……」


「ツケだよツケ!」

「プルプル」

「うん、わたしたち未来の卵を一部売る契約にしたよね」


「助かるよ」


 彼らは祭りも含めアノニマルースへ遊びに来たがっていた。

 しかし準備費用と現地消費どちらも半端ではない額がかかる。

 けれど野生なキラーコッコの彼らにとって金銭概念なんてものはない。


 だが礼のものを渡すという概念は昔私とやりとりしたさいに覚えていた。

 警備兵や死体……つまり肉の提供などを考えたもののそれはこっちで断った。

 ちょっと困るからね……


 なのでツケという形になるが将来彼らの卵を買い取る契約にした。

 元々コッコクイーンは卵の量をある程度調整して大量に産めるらしく多少は問題ないらしい。

 それと彼らの宗教観とも言うべき常識的として別に多少卵を渡そうと悲しい出来事ではないそうだ。


 ……そもそも調べたところによるとキラーコッコは産まれて約3ヶ月で群れを追い出され鍛えぬいた上でどこか別の群れにスカウトされるという熾烈すぎる生態をしている。

 キラーコッコたちは自らを軍と呼ぶがなるほどと思わざるおえない生き方と思考だ。

 コッコクイーンの卵は非常に大事だがキラーコッコとその卵は恐ろしいぐらいに扱いが軽い。


 ゆえにちゃんと高額契約だし将来的には彼らの貯金としてこちらの銀行で管理することとなるが希少な野生キラーコッコ卵を得ることになったのだ。


「プリンセス、こちらに希少そうな輝くツボが」

「プリンセス! うまそうな、焼きそば? なるものを持ってきました!」

「なんか店の向こうにいた魔物を買うというやつをやってきましたー!」


「最後のは返してきてね……店員さんだから……」


「プリンセス」「プリンセス!」「これを」「プリンセス」「ほら」「プリンセス!」


 キラーコッコたちが帰ってきてめちゃくちゃうるさくなってきた!

 ただこの程度の会話は日常茶飯事らしい。

 誰が誰に話しかけているかも簡単に聞き分け将来のクイーンたちは対処していく。


「あら、いただくわよ」

「キミとキミ、さっきの焼鳥もう一回買ってくるのよ」

「プルプル」


「「ハッ!」」


 あっという間に指示を終えキラーコッコたちは去っていく。

 うーむあの指示力……

 見ない間に見習ったほうが良いぐらいに成長している。


「すごいね……」


「どうお? わたしの実力」

「もちろんわたしが最高なのよさ?」

「プルプル!」


「相変わらずイエローがなにを言っているのかはわからないけれど……みんなはわかっているみたいだし、大丈夫だよね」


「プルプルー!」


 イエローが怒りの体当たりをかましてきた。

 ポヨンと跳ね返る。

 思っていた感覚とだいぶ違って驚いたらしく目を丸くしていた。


「……プルプル?」


「あはは、力量差がね……それじゃあ、とにかく楽しんで。また夜に!」


「夜になんとかいう広場ね!」

「はてさて、行くとは行ってないわね」

「プルプル」


 若鶏3姉妹とわかれた。

 そういえばグルシムもずっといたがすごく影が薄かったな……

 今もスッと横に現れる。


 彼らも何か関わってほしくなさそうに下がっているぐらいにしか思っていなかったのだろう。

 3姉妹の性格的にも踏み込んでくる興味を持たれなかったか。


「……」


「うん? どうしたのグルシム」


「…………同胞だな」


「どこが!?」


 びっくりしているとグルシムは目線をこちらに投げかける。


「獣の地獄を背負っていた鳥だ」


「あー……うーん……確かに獣のなめした革は背負っていたけれど……単なる仮装だとおもうよ?」


「…………そうか」


 無表情ながら目がすごく残念がっていた。

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