三百十九生目 三羽
お祭り内で声をかけながらみんなの様子をチラ見。
ドラーグは1%の姿になって小型化。
大量のドラーグがそれぞれ仮装し人気を集めていたし……
ジャグナーは「こういう時にこそ」行われる犯罪に備えて警備基地にかかりつけになり各地と連絡し続ける。
ダカシはアカネにたかられるように連れ回されあれこれと買わされ……
同じものを見て同じものを味わう。
ただそれだけできるまでがあまりに長い時間だった。
他にもちょくちょくと見知った顔がいた。
バローくんは研究の手を休め全身を覆うようなフード付きマントを被り魔物の群れにまじり……
ナブシウはハチャメチャに魔物たちに好かれ逃げていた。
速度の関係で全く逃げ切れていない。
それとなにかの仮装らしきものをしていたがもみくちゃにされていた。
ナブシウが纏うものなんてナブシウの神に関することしかない。
多分理解してはいけないし理解する前にもみくちゃになって助かった。
そして。
「ガンガン片っ端から制圧ー!」
「わたしたちが勝つことのみが、明日へ許された道なのよー!」
「プルプル!」
「「ハッ!」」
「この声って……」
やたらと騒がしい方に歩んでいけば。
そこに彼らはいた。
白色レグホンぽい魔物たち……キラーコッコがあちこち飛び回っている。
キラーコッコたちは普段場が特殊な音で包まれ中に入るものたちを音で殺してしまうが……
今は騒がしい程度。
理由はリーダーの支持が良い事と彼らの脚についている受信機リング特別バージョンが原因。
元々キラーコッコのような特殊災害を起こすタイプの魔物に対する研究は行われていた。
科学技術を思い出しバローくんたち研究班が研究。
九尾博士が何度も作成し試行錯誤した中の1つ。
神力すらこもっているから実質私の聖遺物。
色々とやって音災害に対し苦戦していた穴を神力で埋めた。
それは反音させて音の波で中和させる装置はさすがに未来まで防げないから。
ほんの僅か遅れる。
その僅かでひどい目に合う。
だから神力でほんの少しの間だけ音を抑える結界をキラーコッコの発声部分に張る仕組みを動かすための力。
魔力を彼らから引き出してうまく防ぐのが役割なので少量で長く使えるという計算。
しかも音のうち漏らしがなくなる。
むしろ神力があってやっと防げるとかどれだけ異常な力なのかがわかる。
だがそれらはあくまで彼らが普段以上におとなしくしていてくれるならの話。
本気を出したらやぶれてしまうかもしれない。
ださないのはクイーン候補生たちが『他者に迷惑』という概念を覚えたからだろう。
それを条件でアノニマルースに祭り参加を許可したのだから。
昔その候補生たちは3羽のひよこだった。
そのひよこたちは時を得て成長し……
今。
鳥用サングラスのおもちゃをつけゆったりと歩く並んだ赤青黄。
前よりずっとスレンダーになりまるで大人の鶏に片足踏み入れたかのような佇まい。
青春を華やぐ期間である若鶏の姿で……
3羽とも獣の毛皮をなめしたものをまとい歩く。
鳥だが獣など恐れるにたらずと。
優雅にそしてどこか恐ろしく。
お嬢様コッコクイーン3姉妹が成長しそこにいた。
威風堂々とした佇まいはまるでセレブ。
クイーンという名が重荷になりきらないような力づよさ。
大した仮装していないのにあれだけでハロウィンの姿が成立している着こなしっぷりだった。
「レッド、ブルー、イエロー!」
「おおっ! おひさー!」
「ごきげんよう。この不快な制限を外しちゃいけないのローズ?」
「プルプル!」
赤い若鶏に青い若鶏そして黄色の若鶏。
コッコクイーンなだけあって大きい。
今の私と並ぶかそれ以上の大きさ。
「大きくなったねー、ちょくちょく報告は上がっていたけれど、どう?」
「この装置? いつものように声を出しておけないなんて、困るよねえ守りが薄くなるし」
「そもそもこんなに声を汚くするなんて……ありえないのよ!」
「プルプル〜」
コッコたちにとって普段の声は美声に聞こえるらしい。
逆に世でいう美声は汚い。
そして私達からしたらコッコの普段声は特殊な力が乗っていて鼓膜破壊もの。
何度も使者が足を運び音量と音域の調整装置折衷案をがんばってこなした。
危険すぎる音と力の発生に関してはそもそもニンゲン界で長年研究されておりかなり参考になった。
そして出来上がった今がかれらがギリギリ許せる範囲の仕上がりだ。
ただニンゲン界の研究は最終的にどう家畜化するかを念頭に置いていたのでこれは使えないだろう。
なぜなら彼らと協力体制を設けて彼らの我慢で成り立っているので。
ストレス過多により何日もつけさせるのは無理。
野生のコッコクイーン卵は格別においしいがおとなしく家畜化は諦めてもらおう。




