三百十六生目 勝算
ナブシウが言った神が生まれる時……
魔物とかニンゲンとかの想いが生み出すパターン。
この神もよくわからないがもしかしたらアラザドって元々こういうタイプだったのかもしれない。
彼は自身のあり方に縛られていた。
もちろんそれは肥大した恐怖と痛みの感情という力に飲まれていたからだが……
そう想像され祀られた結果生まれた神だったのかも。
そうなれば……使えるか?
「わかった、ありがとう。その最後に言った神の生まれ方って、何か準備あたりいるのかな?」
「さあな、さすがに私にはわからない。大いなる我が神ならば造作もなく知ることだろうが……そうだな、推察するとしたら、神に必要な環境を先に整えることではないか?」
ナブシウが考えながら答えを出す。
神に必要なもの……
誰かの想い……つまり信仰?
けれど神の発生条件は結構バラバラだ。
どう考えれば良いのか。
「さっきまでの話だと結構バラバラだったよね……」
「何、古代からの物を復刻させてしまえばいい。現代では共通項がなくても例外がたくさん生まれているだけだ。または、見立てが広域化した。その中身は、神を祭ろう壇、みなに覚えさせ話として固まる名とどういう神かという知識。それと、信仰……つまりはその神がいるとどれだけ祭れるかだ」
「祭壇、多くの民たちの中に共通した存在、名前……そして想い。うん? これって……もしかしたら……いけるかも」
「勝算があったのか?」
「細かいところはみんなやナブシウと相談して詰めなくちゃいけないけれど、そういう条件ならば、ちょうど明日が良い。なぜなら――」
私はナブシウに計画を話す。
これならうまくいくというところまで話を詰め……
他の神や身内たちに計画を最終詰めする。
日付的にギリギリだが結果的にテテフフたちに話を持っていけて。
その複眼でこちらを無機質なようにも見える視線を向けてくるのに耐え。
なんとかテテフフにも了承を得た。
そうして。
当日。
「「ハッピーハロウィンー!」」
お祭り当日。
町中ではすでにみんな大きく盛り上がっている。
今年は私恐ろしく忙しかったため準備段階で見回る事はできない。
だから今日アノニマルースへ遊びに来る面々と共に新鮮な気持ちで本番を迎えられる。
疲労は強めにあったが僅かな仮眠を最高の睡眠質に"睡眠無効"の効果でうまく使ったのと……
妖精の泉にある回復の泉とホルヴィロス流回復マッサージを受けて回復した。
「医者としてはこの状態を健康に治っているといいたくないけれど、診断的には健康そのもの、ローズは変なところで丈夫だからね……」
「健康キープには気を使っているからね!」
「気を使っている魔物は徹夜なんてしないんだけれど……まあ、ともかく身体の過信は禁物、大事な儀式なのはわかっているからこそ、やり遂げる前に倒れちゃわないようにこまめな休憩を挟んでね。回復魔法と薬でごまかすのは駄目だよ」
ものすごい見てきたかのような指摘が刺さる。
やはり医者って診れば過去の病歴すらわかってしまうのだろうか。
さすがに祭りでハメを外しすぎて痛い目を見るつもりはない。
「うん、こんなところで肉体死を起こしている場合じゃないからね」
私は鏡やトゲなしイバラを使いパパっと着替える。
今年は去年とは違って正道で行く。
まずホリハリーのように2足歩行型になって。
その上から服を着込んでボトムも履き珍しくヒールブーツも履く。
紫のとんがりぼうしもかぶって仕上げ完了。
胸部の石を強調するためインナーを工夫して腹は隠しつつ胸だけ出す。
私の構造的にいわゆるニンゲン女性の胸ではないだけれどね。
よしできた。
「魔女の仮装!」
「うわあっ凄く似合っているよローズ! 仮装なのかどうかはよくわからないけれど、ローズが着たら凄く映えるよね」
この世界で言う魔女の箒という『杖』を持つ。
ちゃんと先っぽ……下げ緒の部分が曲がりコア魔石を抱え込むように宙で設置してある。
魔術磁力バランスというもので保っているらしい。
ホルヴィロスが仮装かどうかわからないと言ったのもうなずける。
前世感覚だと仮装だがこっちだと魔術士でしかない。
確かに若干魔術士の普段着にしては若干豪華だし実用力が曖昧だが。
いつもの仕立て屋さんに頼んでやってくれました。
針子も兼任しているとは言え他の依頼もあるだろうしアノニマルース内にどれだけの隠れ私の服担当がいるのだろうか……
それはともかく。
ホルヴィロスに見送られつつ家を出る。
ホルヴィロスは夜の部で何か見せてくれるらしい。
昼は家の中で接客だ。
私の家は今年もハロウィン飾り付けしてある。
前々とは違い複数で完璧なハロウィン仕様。
中にホルヴィロスを残しておくので危ないところはちゃんと封印できる。




