三百十五生目 流転
テテフフに大魔法"ハウスオブスイーツ"を食らわせた。
文字通りの意味で。
「テテフフさんの1部、集まってこっちに来てくださいー、私です、ローズオーラです」
そろそろ大丈夫だろう。
声をかければ甘い塔に集っていたテテフフたちの一部がこちらに寄ってくる。
さらに光に包まれて1つに固まってゆき……
大きなテテフフが光の繭から出てきた。
進化テテフフ。
融合した姿だ。
テテフフたちはその煌めきを尾のようにながす。
『久しいな。それとも僅かな時か。今回の品は。手が込んでいたな』
「飴細工を気に入ってくれたようで良かったですよ」
『固蜜とは。良いものだ。こちらも』
どうやらかなり飴細工を気に入ってくれたらしい。
今度のもこれでいいかも知れない。
「それで、ア・ラ・ザ・ドはどうか聞きに来たのですが……元気ですか?」
『あの邪神か。初期の頃と違う。もはや奴が奴としての意識はない。ただし。問題は見つかっている』
もう意識が邪神としての部分が薄れたのか!
それは良かった。
テテフフが逆に飲まれないか不安だったが杞憂で済んだようだ。
だが問題とはなんなんだろう。
テテフフがわざわざ言うあたり嫌な予感がする。
「結構まずいことが発生しているんですか?」
『将来の話。そろそろ私たちが。邪神のいた世代が。入れ替わる。前の世代が死ねば。邪神はおそらく。邪神に戻らざるをえなくなる』
「えっ……かなりまずいことじゃないですか!?」
『とはいえだ。それは神が神に戻るだけのこと。転生で一時的に方向を変えたのみ。本流の流れには逆らえない。しかし。次が邪神になるか。良神となるかは。本人次第』
「なるほど……今度同じ神になるかどうかはわからないですものね。神になるのは決まっているとはいえ」
神としての方向性は長年の環境で決まる。
一度フラットに戻され神になった場合……
最初が肝心だ。
雪だるま式に神としての力と概念ががんじがらめになって行き。
最終的に神としての力に言動が支配されていく。
そうなれば邪神待ったなしだ。
そうならないためにはちゃんと力を制御下におかなければ。
ただア・ラ・ザ・ドに出来るだろうか……?
そのままでは無理な気がする。
『神として生まれる先。それが分かれば。変化が難しくない』
「でも、そんな都合の良いやり方って……」
『もう一度。転生魔法を使う。どの私かはわかっている』
もう一度聖魔法"リボーン"を……!?
その手があったか。
確かに小手先だけならば今度変えられるはず。
小手先とはいえその変化は大きい。
「でも、神を生む先って何なんだろう……知っている相手で神を生みそうな相手なんていないし……どうすればいいかわかりますか?」
『さあ。神のことは神に』
そりゃそうだよね。
ナブシウに聞いた方が良さそうだ
「わかった、ありがとう! 聞いてからまた来ます、襲わないでくださいね」
『見える時。認識できれば』
うーんかなり危ないな……!
ナブシウの家に来た。
前来たときよりゴチャゴチャとした物が多く整理され固められている。
錬金術に使うものだろう。
「神が生まれる流れは何かだと?」
「うん、ナブシウの神様じゃなくて全般的な神さま、特に現代のね」
ナブシウはその黒いダイヤモンドのような四肢を滑らかに動かし前脚を組む。
ナブシウなら昔からのことは知識が多いはずだ。
これまでの流れはだいたい話してある。
「神の生まれる先を指定するとは何とも風変わりな……だが、邪神と化して我が神の目端に汚いものが映るのは防ぎたい。知っている部分なら語れよう」
「ありがとうナブシウ、普段から錬金をローズクオーツに教えてくれたりするし……」
「何、全ては我が神のために……お前のためではない。それは努々忘れるな」
素直ではないのか本心からなのか。
ナブシウがナブシウの飼い主にぞっこんなのはいつもどおりなので気にしないでおこう。
「わかってる」
「では、まず神としては我が神が行ったように神が下々の者を神に染め上げる方法がある。それが私だ。次いで、無から生じる神。これは概念を世界に得るためどこかの超越した神が行う所業だろう。そして、神が神を産む。例としてはそこまではないが、少なくはない」
上からナブシウに蒼竜そしてホルヴィロスだろう。
なんとなく想像がつく。
私が理解しているのを見てさらにナブシウは続けた。
「神が下々の誰かに神の種を植え付けることもある。その他に、特殊な力を持った魔物が信仰を得て、そのまま神力を得たパターンもあるだろう」
処女懐胎に関してはちょっと思い当たるフシはないがその次のはおそらくグルシム。
「そして、下々の者たちの想いが集い、それが結果として神の存在が作られることがある」




