三百九生目 修復
蒼竜が来るまで1日かかった。
再度イタ吉を回収して現場へ。
今度はイタ吉を少しだけ近いところに置き"影の瞼"を私から"率いる者"で借りてもらう。
「うわ、こんなヒビ割れてたのか!」
「近づくとすごく気分が悪くなる毒が撒かれているから注意してねー、イタ吉の力でも防げないよ」
「あいよー」
「俺達は最初から難しいな」
「だな」
イタ吉たちはこれで良いとして。
蒼竜と共に再び世界の故障だらけ穴開き壁のところまでやってきた。
結界が大きくひび割れあたりはバグっててモザイク模様多発。
私は"影の瞼"と神力結界なる蒼竜から教えてもらえた自身を守る神力の使い方を教えてもらった。
神力の方向性を変化させて[秩序][結界]にすると教えてもらえた。
私はまだ神として若いので感覚がわからず神器に頼って発動させる。
「そう、それで良いんだ。さすが1度無意識に暴走させただけあってうまいね!」
「す、すみません……」
さすがに私もこれは私が悪いと思う。
蒼竜はケラケラしているけれど。
銃ビーストセージに神力をじわじわと流し込んで私の身体を結界で纏うように覆えた。
神力が視えるものならば私は黄色で蒼竜が白色の結界を覆っているのが視えるだろう。
「いやいや、ここまでうまく壊すとはね……そう簡単には壊れないはずなんだけれど」
「どう、直せそう?」
「うーん……」
蒼竜が壁に向かって手でなぞる。
ひび割れたところを感じ取っているようだ。
しばらく手のひらを擦るように当ててうなずく。
「うん、なんとかなるね」
「良かった……」
「ローズならね!」
えっ。
とうしてそうなった。
わけがわからず蒼竜を見上げる。
「えっ、私に何をさせる気なの!?」
「ローズはここの管理者だろう? それなら手っ取り早く直せるのさ」
「まあ……迷宮の管理者ではあるけれど、そんなことできたかな……?」
私がここ荒野の迷宮管理者になったのはもはや多くの者が知っている。
蒼竜が独自のルートで仕入れていてもそんなにおかしくはない。
防衛戦争自体有名だったし。
ただ迷宮管理者としての機能にそんなものがあったかというと覚えがない。
最近も触ったばかりだったのだけれど……
「どうだー? 直せそうなのかー?」
「とりあえず、管理者室行ってみようか」
なかなか他の面々を入れたことのない管理室。
昔あったやたら大きな通路も通じたままだが今は脇道に裏通路を通った。
新しく作ったショートカットルートだ。
奥の部屋に着けばそここそ管理室。
昔の雑多な環境と違いだいぶ片付けた。
今は得たい情報にすぐアクセス可能となっている。
「初めてきたぜ」
「なんか緊張してきたな」
「おっ、これなんだ?」
「勝手にあちこち触らないでねー、一応セーフティかかっているとはいえ、この世界をいじれるものだから。それで、どうすれば壁の修復を?」
「神力を使おう。キミの力を流し込むところはあるかい?」
蒼竜もそこまで他者の管理室には詳しくない。
ただ今蒼竜が言ったような部分はある。
やたらでっかい板が地面の上にくくりつけられている。
この上に乗れば……
淡く光りだした。
私を認識したわけだ。
「これで大丈夫」
「あの穴が空いた部分の地図は出せるかい?」
「ええと……よし、出てきた」
簡略化した立体地図を部屋の中央空間に出す。
光を用いていて見た目より原始的な作りで行えている。
こういう分野は魔法技術のほうが得意なのだ。
「あー、上からは見えなかったけれど……」
「だいぶでっかく割れてんな」
蒼竜やイタ吉が言った通り地中側に結界が大きく裂けていた。
弾丸は地下から当たったのでそれはそうなるとは思っていたが……
おもったよりガッツリ開いていた。
ただ見る限り地面が外へ出ていったりはしないようだ。
それは結界が最低限働いているということ。
外へ出るのに意思の力がいるのだろう。
「まずは穴を塞いでしまおう。神力を注ぎつつ普段迷宮を管理操作するときみたいにやれば、可能なはずだよ。昔、聞いたことがある」
「どれどれ……あっ、神力で操作が出来る!」
神力を注ぎ込みつつ普段のように迷宮管理しようとしたら自然に出来ることが増えていく。
荒野の迷宮はもともと造りが誰でも感覚的に行えるようになっている。
私が整理したあとさらに良くしてあった。
操作している者の想いにこたえようとするデバイスだ。
しっかりと神力によってやれることを感覚的に提示してくる。
「こう、かなッ」
神力をきっちり流し込むと簡易マップ内のひび割れた結界にどんどん流し込まれる。
目標は全てキレイに埋めて世界の故障も片付けること。
これで問題ないだろう。




