三百六生目 射撃
射撃訓練しにきた。
ゴーレムのノーツは連続で射撃の的中央に当てたかと思えば今度は左右に動きながら当てている。
すごい……
「ノーツ、すごいよー!」
「ありがとうございます」
ノーツの射撃の腕に入る力がさらに増した気がした。
「さ、我々もやりましょうか」
オルオルさんが耳当てを私に差し出してきた。
いわゆるイヤーマフだが……
「あの私の銃は魔力放出で静かなので……」
「ああ、それがまっすぐ飛ばない理由かもしれませんな」
「え?」
「魔力の音がするほど爆発的に衝撃を与え、その勢いを受けてまっすぐ銃弾を飛ばすのです。こういう事柄を考えなくて良い火薬を使ったもののほうを新兵には勧めていますが、ローズオーラさんなのでそこは大丈夫でしょう。ぜひ、意識的にやってみてくだされ」
オルオルさんの好々爺的な目が私を射抜く。
うう……そんな期待に満ちたキラキラした目をしないで!
明らかにそういう段階じゃないから……!
そもそもあのとき発射したハリ弾丸は静かでも物凄い高速であちこち跳弾した。
あれより速度を増すように意識すると……どうなるんだ。
オルオルさんがなれた様子で耳あてをつけてくれた。
「銃を恐れないで。爆音はこの耳当てが防いでくれます。まっすぐ飛ばすコツは色々ありますが、ローズオーラさんに大事なのは心構え。思いっきりやることです」
オルオルさんは私の背にそっと手を置く。
どうしよう……練習なのになんだか緊張してきたな。
銃ビーストセージを取り出しイバラを使って構える。
魔力が爆発するように思いっきりか……
そういえば私は効率化できていてもその上から高出力化ができていなかった。
手数は増やせたのだから今度は1撃の重さをちゃんとしないと。
イバラを私の前に構える。
"鷹目"により第三者視点でチェックしつつ慎重に主観も使って的に向きを合わせる。
「そうです、やはり照準の合わせはちゃんと出来るようですね。ならば、あとは真っ直ぐ放つだけです」
どうやら今あったらしい。
感覚がよくわからず掴めていないが……
ガンナーの影響でなんとなくできているのかも。
あとはこのアイアンサイトに合わせて撃つだけ。
ただし……思いっきり。
私の力を叩き込む練習しなくちゃ。
イメージするんだ。
私の効率化された行動力使用を……
さらに根から出力を上げる!
全力を出すのに力むのではない。
この私の中にあるエネルギーを叩き込めるだけ叩き込む。
大丈夫この銃は神器だし『杖』だ。
杖は使用者の力を最大以上に引き出してくれる。
恐れず……信頼して。
力を送り込める。
「こ……これは? ローズオーラさん?」
銃がどんどんと魔力を帯びその動きで音が鳴り響きだす。
機械が全力で動くときのような音。
もっと集中して……
光が溢れ出し銃の魔法陣は輝き銃の周辺にあれこれと魔法陣の元が展開される。
なんも設定しておらずただ魔力を足していくだけの機構。
銃と弾丸へひたすら祝福するかのように。
アイアンサイトからも光が飛び出て見やすいサイトのようになる。
こんなふうになるんだ……作ったのは私とは言え工房は地球の迷宮だからわからないこともある。
「とんでもない力を感じるようなのですが、ローズオーラさん?」
さらに魔石が輝きコアが全力の魔力を帯びる。
……まだ。
魔力エネルギーが高まってきて周囲の景色が歪み光が分解されまるでレンズ越しにみたように虹がかる。
……もっと。
「ローズオーラさん!?」
エネルギーに耐えるために背後へイバラを複数本伸ばし脚にする。
神器なのだから神力を行使してみよう。
私の神力も足していけば周囲に魔法陣ではない不可思議な文字たちが浮かぶ。
これは……なぜかわかる例の文字たちか。
多分フォウのような創造神が使うから身体が標準で覚えているのだろう。
書かれている内容を読み取ろうとしたが高速で大量に重なり流れていくせいで可読性がない。
おそらく……感覚的にわかるのは私がやるのはこれらの文字を読み取ることじゃない。
集中し全力で爆発させ真っ直ぐ撃つことだ。
[力] [爆発] [直進]
なぜか急に文字が読めるようになったが今はもはや気にもとめない。
ただ視界すら限界まで引き絞り息すら止めて何も聴かずイバラの感覚すら忘れて。
撃つ。
「ろ、ローズオー……う、うほおおぉぉーー……!?」
銃から放たれた瞬間確かにその音が響いた。
爆発音。
そして魔力爆炎。
銃口が火を吹くというのをしっかり見れた。
凄まじい衝撃に耐え……
弾丸は放たれる。
それは弾丸だったのか。
それともビームなのか。
魔力爆炎のせいで纏った炎が直線を描き……
光と共に的を破壊した。




