表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/2401

十三生目 道化

残酷表現があるので苦手な方は深呼吸してからご覧ください

 道化のカードを引くことなかれ


 秩序を守らぬ悪い仔に

 道化のカードがやってくる

 誇りを汚す醜い仔に

 道化のカードが笑い掛ける


 我ら誇り高き一族に

 悲しい道化はいないはず

 もしも道化のカードを持つならば

 直ぐにカードを捨てるんだ

 なぜならカードを持つ仔はね

 いつか悲しい道化となるからね


童話 森の中は静かに より





 はっきり言って川が小さすぎた。

 浅いわ狭いわで水が少なすぎてイタチの脅威たりえなかった。

 魚たちも無残にピチピチ跳ねている。

 いや、そこはさすが魔物だ。

 意地で跳ねて川の中に帰っていった。

 速やかにレーダー反応が遠ざかって行く。

 そりゃあ、あっさり仲間が食べられてるし逃げるよね。


 観察の上昇した分の能力を確認。

[観察Lv.3 状態変化を見られる。また状態変化させられる可能性が高いものを見破る]

 ふむふむ、順当な成長だ。

 早速この地味に距離が縮まったイタチを観察。

[イナヅチLv.10 状態:正常 異常化攻撃:なし]

 ちゃっかりレベルが上がっている……

 どうやら少なくとも今は寄生虫でのたうちまわってはいないらしい。

 毒とかにもさせる攻撃がないし安心安全。

 さて私は……

[ホエハリLv.12 状態:正常 異常化攻撃:暗闇]

 ライトやダークは視界を奪う。

 視界を頼りにしている生き物にとってコレほどまでに危険な状態異常もないよね。

 このイタチはなかなか忌々しい事にまるで効かなかったけどね。


 さーて満腹になって毛づくろいし始めたイタチはともかくレーダーに遠く引っかかるものがいるのが気になる。

 単体で大きく色は黄色。

 イタチも耳をひくつかせているもののあまり気にしていない。

 ……大事をとって移動しよう。




 さて、あれからそこそこ移動したはずなんだけれど。

 ずーっと黄色い点が2つついてくる。

 片方は考えるまでもなくイタチ。

 もう一つの大きな点は明らかに私たちに意図的に接近している。

 イタチも遠くから延々追っかけてくる音に異常を察したらしく警戒中。

 ……なるべく木々の隙間に隠れるようにして待機。

 まぬけであってくれ。

 そうした私の願い虚しくそいつは草を踏み分ける音と共に現れた。

[ギザガコウLv.8 状態異常:なし 異常化攻撃:なし]

 我が父が大きな熊だと思った。

 こいつはそれより一回り大きい。

 私の知っている限りは虎に近い?

 大きさはまるで違うけど。

 サーベルタイガーの方が正確かも知れない。

 犬歯が異常に長く曲線を描いているが内側がノコギリ状になっている。

 ……あの内側に獲物を捉えたらどうする気だろう。

 こわい。

 ただ、驚異的に感じるのは父のほうが断然上。

 私からすればこいつからはまあまあ強そうだけど何とかならないかなぁ。 という程度だ。

 もちろん能ある鷹は爪を隠すとも言う。

 ……殺意そのものは剥き出しな気がするけれど。


 それは隣のイタチも同意と言った感じらしい。

 さて、どう立ち向かおう。

 こいつは私たちを経験にして飯にする気だろうから最低でも足を駄目にしてから逃げないと駄目だぞ? と。

 それは、鈍くキレは感じられない前足の振り回し。

 虎が前足の爪を出しながらブンと振った私の第一感想はそれ。

 そしてバキッ! と激しい音を出して私達が隠れていた、そこそこ幹の太さはあるだろうそれを叩き折った。

 あ、これムリ逃げよう。ソレが第二感想。

 イタチも完全同意と言った感じでむしろ私より早く逃げ出している。

 ……あいつ、私を囮にしやがったな!

 油断ならねえあのクソイタチ!!

 ダーク! ダーク、ダーク!! 




 私とイタチはどっちを後ろの化物に喰わせて自分は逃げるかのデッドヒート中。

 いやー目潰し駄目ですね、

 イタチと違って困惑してくれたけれど、目が見えないなら普通に耳と鼻使うわって言いたげに迫ってきている。

 後、攻撃は鈍重なのになんて足の速度。

 おそらく本当に素早さという面では大したこと無いんだろうけれど、身体の大きさがその差を埋めている。

 私たちは幼稚園児の三輪車を必死にこいでて虎は巨大トラックが荷物乗せて必死に走っている感じ。

 車輪の差がデカすぎる。

 それでもなんとか、なんとか小回り効かせて逃げ回っている。

 くそう、この感じからするとこいつは本来は私と同じように特に進化みたいなことはしていない。

 力量は大したこと無いのに体格差という点のみでパワーが違いすぎる!!

 ぬおお、脚がもつれるー!

 木を倒しながら迫ってくるのは卑怯!

 ひょいと攻撃を避けるという点は良いが体力が尽きたら死ぬ!


 !?

 レーダー正面に緑反応!

 挟まれる!?

 黄色化!

 いや、黄色のまま逃げている?

 虎の化物かも知れないと気づいたのか?

 まあここまで騒音たててるしね!

 こうなりゃアイツに追いついて、追い抜く!




「ええっ!?な、なに!?こ、これ!?」

 そう遠くから困惑する声が聴こえた時思わず耳を疑った。

 接近して見えたら驚いた。

 ホエハリだ。

 1頭しかいないのは気になるがそれを言ったら私も1匹だ。

 ストーカーイタチは数にいれない。

 こいつが逸れてくれれば後ろも逸れるかもしれないのにこいつは私に寄せてくる!

 私が離れようとしたらきっちりついてきやがる!

 お前が囮になれ、そういう強い意思を感じる!

 そんなのは数に入れない。


 明らかにおとなのホエハリはいきなり巻き込まれ驚きつつ逃げている。

「き、キミ同族、いや、ほ、ホエハリ?なんで仔どもが、群れといないの!?」

 このオジサンは知らないホエハリだ。

 クローバー部隊の1頭なのかそれとも別の群れのホエハリか……

「色々あって!とりあえず後ろの奴なんとかならないですか!?」

 知らないホエハリとはいえ殺しに来るイタチより遥かにありがたい。

 言葉が通じてなんとかなりそうなのが良いよね。

[ホエハリLv.29 状態異常:なし 異常化攻撃:眠り]

 ほら、なんとかなりそう。

「えぇ〜……」

 な、なんとかなるかな。

「命のピンチなんですッ! 私じゃあアレは明らかに倒せませんッ!」

「いや、そ、それはわかる、わかるけどほら、か、完全に巻き込まれた形なんだけど……」

 ……大丈夫かな。

「ごめんなさい!本当!同族のよしみだと思って!」

「ど、同族って……キミ、いや、仔どもだから、だとするとうーん……」

「お願いもうげんかいっ!」

「わ、わかったわかった!い、一瞬時間を稼いで! 横から斃すから!」

 一瞬か……それだけなら。

「わかりました、一瞬紛らわせるのでそのスキに! 合図で相手の方から目を外して!」

 行動力ならまだ余裕がある。

 だから思い切って力を込めてこいつを放てば……

「今ッ!」



視点変更:オジサン呼ばわりされたホエハリ


 全くツイてない!

 ホエハリの仔がこっちに走ってくると思ったらその後ろにめんどくさいのがいやがった!

 巨虎はああやって弱いやつを追いかけ回しヘトヘトになるまで待ってから確実に仕留めるやつだ。

 俺でも同族を見たら何となく足を緩めてしまった。

 まだ未練があるのか……

 ああ、俺の馬鹿! そのうえ安請け合い!

 俺の脚なら単独で逃げ切れるのに!

 イタチも同じように巻き込まれたタチか?

 仕方ない、やるっきゃない、やるっきゃない……はあ。

「いまっ!」

 合図と共に俺は道を変える。

 背後で驚くほどの閃光が瞬いた。

 あんな技隠していたのか!

 驚く間もなく怯んだらしい巨虎から距離を取る。

 気合を入れる。

 行動力を属性還元、属性を複数発生させ混合、自身の中で安定化。

 発現させて、一気に引き出す!

 全身を震わせ俺の中の檻を開け!

「うおおおおぉっ!」

 "進化"っ!



視点変更:主人公



 最後の全力疾走をしている時、不意にオジサンの方から爆発的な威圧を感じた。

 瞬間的には離れていても父ほどはありそうな力。

 これには虎も驚きそちらを見ようとする。

 逃げていたイタチですらだ。

「穿て」

 オジサンの声が響く。

 え? これオジサンの声? ホエハリ的に急にイケボになったよ?

 突然地面から土の槍が生え虎の前足を串刺しにした。

 虎は悲鳴をあげ必死に抜こうとする。

 ギリギリまでどこから出るかわからなかった、ジャックの使う土槍は私でもどこから出るか何となく感知できたし生成にワンテンポ必要だった。

 しかもこの槍は頑丈でなおかつ返しがついてて地面に縫い付けている。

 なんて魔法の力!

「落ちろ」

 闇のような色の弾が飛来し虎の身体に当たるとまとわりつくように広がる。

 すると暴れていた虎が急に大人しくなりそのうえ眠ってしまった。

 眠りの魔法だ!

 そして虎の上に飛び上がる影。

「薙ぎ払え」

 眠りこける虎に向かって影は直線上に放った水で薙ぎ払った。

 有無を言わさない一閃は首を貫き。

 ごとり。

 そう音をたてそうに見事に落ちた。

 血がどんどんと出て水がつくった溝を埋めていく。

 そして影は私達の前に降り立った。

「ありがとう、オジサ……ん?」

 その獣は私の知るホエハリではなかった。

 鮮やかな赤い毛に青模様が走り棘は美しいまでに輝いて凪ぐ。

 尾の先にはふわふわとした毛玉はなくなりそのかわり長くスラリとした美しさ。

 瞳は妖艶な紫を帯び揺らいでいる。

 筋肉や顔は確かにオスのホエハリだろうと思わせるが私の第一印象は思わず見惚れるような美しさだ。

 そして同時に思ったのは。

「どなた……ですか?」

「私だ」

 そう言うと彼は急速に黒く染まり霧散していく。

 色が戻った時にそこにいたのは先程のオジサンだった。

「ええ!? どういう事!?」

 イタチも目を白黒させている。

 ちょっと予想外すぎる出来事だ。

「あ、あれ? 知らない? そ、そうか、違う群れかな……」

「あ、はい多分オジサンとは違う群れになります」

「そっか……」

 なぜか少し安堵した表情を見せた。

 何故?

「いまのは、し、進化だよ。む、群れの王になるへ、"トランス"とはまた違う、そ、そういうの……」

 進化!? トランス!?

 ちょっと整理、ええとトランスとはたしか芋虫が蛹になり蝶になるアレ?

 私は自然とガウハリはホエハリの進化系だと思っていたけれどそういえば自然科学的にはトランスの方が近いのか……?

 まあまあ、とりあえずこの世界の常識に気持ち切り替えていこう。

「つまり、オジサンはホエハリから進化を? す、すごい!」

 いや本当に凄い。

 あれは、是非知りたい力だ。

 私が生き抜いていくための秘訣が込められている気がする。

「へへ……ホエハリの中でも、で、出来る奴はほとんど、い、いないんだぜ」

 そうなのか、いやジャックペアも出来ない時点でそうなんだろう。

 キングがガウハリになっているように変化したら定着するのがトランス。

 一時的に姿を変えるのが進化、

 私の中で何となくわかったのはこのぐらいだ。

 ならば今の機会を活かすしかない。

「進化、教えてください!」

「え?」

「是非!」

「い、いや、ち」

「私に出来ることならお礼はさせてもらいますから!」

「そ、そういう趣味はな」

「仔を助けると思って!」

「あ、は、はい」

 押し切った。

 言質とったり。

「よろしくお願いします!」

「うえ? あ、あれ? もしかして、今ので……うぇ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ