三百一生目 機銃
地球の迷宮内を進んで行く。
中は私が良く知っている。
地図も完璧なためそこまで迷わず進めた。
特に魔物生息図は大事。
機械種の魔物たちはたくさんいるものの安全な魔物たちのほうが多い。
簡単に工房までたどり着けた。
ちょっと散策しただけでも随分急ピッチで変化していっているのを感じられる。
マップにない家を覗いたら機械魔物たちの巣だったし。
機械魔物たちが何か文化を起こしているのかよくわからない飾り付けがあちこちに見られた。
さすがに機械なだけあってどんどんとハイクオリティな知能になっていっているらしい。
工房は自分の身体の重要部分をカスタマイズするのにも使っているようだ。
なので今私の目の前でフル稼働中。
ベルトコンベアで運ばれた材料たちを使い次々と組み立てられていく。
化学と魔法の組み合わさった世界だ。
地球の迷宮と銘打っているが工房を見るにかなりファンタジーな力も合わさっている。
まあそれらひっくるめて世界にある力が科学なのかな?
ともかくガチャンガチャンと音が鳴り響くたびに形が変わってゆき。
私が終点まで移動すればちゃんと出来上がった銃がそこにあった。
昔はリボルバーを直すことになったりもしたなあと思いつつイバラでとる。
この銃はなんてことはないシンプルなハンドガンだ。
ただしイバラ用に1部違うが。
本来なら持ち手兼マガジン入れの部分は穴が空いたままでイバラをここから入れる。
そのまま上まで通してからイバラを銃に巻きつける。
重心にはしっかりとコア魔石がありそこからにぶい金色の魔法陣が綴られている。
イバラを実際に通してみる。
するりと中に入って外へ出し……
イバラを巻きつけた。
イバラの感覚的にここからかな……トゲを出して切り離す。
トリガーへイバラを伸ばして……
大丈夫そうな場所に向けて撃つ!
トゲは勢いよくハンドガンから飛び出してゆき……
見当違いの方向へと飛んでいく。
「うえっ!?」
キレイに柱角に飛んでゆきえぐり弾かれる。
まさか跳弾!?
そのまま何度かあちこちに飛び回り……
目の前に飛んできた!
反射的に足を上げればその地に弾丸が落ちる。
刺さってやっと止まった……
「あ、はは……」
銃……難しくない?
当たり前だが中央に照準はない。
向いている中心に弾が飛んでいくことはない。
別に銃身から発射されたものがそんなに逸れるわけではないけれど私が撃つと反動の殺し方や真っ直ぐ整えるやり方がまだ分かっていなくてすごくズレる。
これは特訓がいるなあ……
「何か不都合な点はございましたか?」
「ああごめん、単に下手な撃ち方だっただけ、大丈夫だよ」
「ありがとうごさまいます。それでは刻銘と名付けをしますが、銃の名前はどういたしましょう?」
工房からAIがこちらを管理者と見て話しかけてきた。
見られていると思っていなかったからびっくりした……
名前か……何も考えていなかった。
私の剣はゼロエネミーだ。
それを踏まえて銃に名前を与えるなら……
うん。
「じゃあ、ビーストセージで!」
「承りました。案内に従って配置してください」
ベルトコンベアたちから少し離れた位置にある機械の台座が光っている。
ここに置けということかな。
コトリと置けば一瞬光が走った。
おそらく形を読み取ったのだろう。
上部から機械が降りてきて……
ガチャンとハマるとすぐにまた上がっていく。
どうやら出来上がったらしい。
銃の片面ずつに銃名と刻銘がされていた。
ちゃんと刻銘はローズオーラだ。
ちょっと地球の迷宮って書かれないかヒヤリとしたが大丈夫だったらしい。
それにしてもこの銃……
何か設計図のものとは違うような?
銃全体の光反射が色どおりじゃなく何か魔力的な不可思議かつ美しい輝きになっているし……
何か見ているだけで吸い込まれるような感覚を覚える。
そして持てばただしっくりくるだけじゃない。
凄まじい力が流れ込んでくるような錯覚を覚える。
何なんだろうか……?
まあ良いや。
考えていても仕方ない。
これであとはひたすら練習するだけだ。
改造や数増やしは後。
まずは1つうまく扱えることだ。
ゴーレムたちの武装もここで整えられるかも。
ノーツもローズクオーツも手頃な訓練場所に悩んでいた。
ここで暴れ者と戦えば丁度いいかも。
うん……決めた。
折を見てここのことを限定公開しよう。
私は地球の迷宮から空魔法"ファストトラベル"で出た。
そしてしばらくは訓練に明け暮れることとなる……




