三百生目 設計
黄金の砂漠と言えばそこにアクセスするために必要な砂漠の迷宮アクセス権利争奪。
毎年祭りとして行われているが今年分はアノニマルース魔物と都市のニンゲンたちが激しいデッドヒートを繰り広げたらしい。
ギリギリで勝ったが運に左右されるため来年はどうなるかわからないと報告を受けている。
どちらが良いかどうかはわからないなあ。
そんなこと考えている間にAIと相談しつつ作成していたものが最終版まで出来た。
必要な機械知識も銃の部品や造りに関する基礎知識。
ここで案内される内容をひととおり覚えればなんとかなりそうだ。
その知識を踏まえて簡単銃作成。
最初の銃なので私でも手入れ出来るようにシンプルなものにした。
ここに持ち込めばいくらでも改良出来る。
射撃の弾丸は私の針を使うことにしてある。
針なら無限に撃てるし銃の材料に私の血を混ぜれば土の加護がかかり強力な力と化すはずだ。
作ってみないとなんとも言えないけれど。
デザインはあえて凝ってこの世界基準にした。
こっちの世界での武器は全体的に派手。
派手さが魔力導入や加護の付与につながっておりそこを意識。
まだ魔導的措置はやっていないけれどそのための下準備だけ行使してある。
私の針を撃ち出す関係上普通の銃とは造りが違うが……
この世界の基準である行動力で撃ち出す機構にはちゃんとしてある。
……火薬使ったりエネルギー弾放ったりは考えたけれどこの世界だと基準じゃないみたいだしね。
「うーん……後は」
私は本をパラパラとめくる。
この世界の銃について書かれているものだ。
現在の銃は安全性なども考慮して流行りは魔石を使い『杖』にみたてて弾丸を放つもの。
それに見立てて私の銃を組み立てて……
十分威力を発揮するには倉庫にある材料が必要だったので取ってきたり……
銃のコアに仕立てるものまで持ってきて後は製造するだけ。
昔この迷宮では勝手に銃らしきものが造られていた。
今改めて銃らしきものを造るのは造作も無いだろう。
設計図を完成として送る。
送った設計図を完成予想図として送り返され[決定]を目線で押す。
これでよし。
しばらくは待ちだから迷宮工場まで行こう。
私は管理室から出て歩いていく。
出入り口近くに魔物はいない。
基本設計どおりだ。
出入り口付近は迷宮内の魔物に対して認識障害がうむようになっている。
簡単に言うとなんとなくここに近づく気がなくなる。
そして迷宮出入り口の階段が見えなくなる。
そのまま進むと整備された屋内廊下がどこまでも続く。
途中にある部屋へ入ると大きな空間になっていた。
高低差のある広い空間は戦闘に使っても破損しないように気をつけつつほどほどに障害物や魔物たちの生活環境があったり。
……まあここの魔物たちって全て機械種なのだが。
機械種たちは独自の発展していて自然界と同じように機械が機械を喰らっている。
取り込んだ金属を元に成長するようだ。
そこはまあ前通りだが……
魔物たちから感じる圧が違う。
異様に強いような。
それに前までのガツガツとした生存環境を感じない。
余裕があるというか……目の前の魔物もゆっくりしているというか。
私みたいな金属じゃない相手を見てもほとんど気にしていない。
"観察"してみよう。
……うわっ!? 比較が[少し強い]だって!?
ここ入口付近だから弱い魔物のはずが……
しかも[少し強い]が最低であちらこちらに目を向けるともう少し能力高い者もいる。
大丈夫かな……いくら私が直接殴り合いがそんなに強くないタチだから低めに見積もられるとは言え。
こんなところ一般冒険者たちが入れるのか。
最低が少し強いということは少し前に出会ったあの顔が花の小さな神ぐらいの戦力以上がゴロゴロいる。
あの神……スイセンは直接対峙してはいないものの少なくとも神らしき力の強さはあった。
別に"小神罰"によって圧倒できるわけではないが純粋な殴り力で冒険中級者までならボコボコにできる。
もちろん色々と他の決まり方もあるがとにかく強い。
世界から愛された迷宮たちほどではないがそれに近いようなものを感じる。
急速に発達している原因はなんだろう……?
とりあえず彼等は刺激しないように駆けていく。
敵対する理由もないし向こうも仕掛ける気はない。
ガラス玉のような目カメラがこちらを視界の端にとらえるのみ。
なんならそのままスリープしようとしている。
なんだろう……この迷宮別に公開してもいい気がしてきた。
ちゃんと管理室以外に来るのは久々だったからまるで感覚が違うや。




