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百三十四生目 奇跡

 ハイエナたちの追跡は容易だった。

 近くに巣穴があったのだ。

 "観察"した説明文どおりに巣穴周りに骨が散らばっている。


 数は先程と同じ……いや違う。

 どのくらいかは分からないが子どもが3匹いるようだ。

 昔の私達と姿がかぶる。


 回復が使える者はいないらしく互いに舐め合ったり骨を砕き食べたりしている。

 まあ大丈夫かな……?


「どうでしたか?」

「うん、大丈夫っぽい」


 その様子を遠くの岩陰から"鷹目"で見ていた。

 この様子なら大丈夫かな……?

 ……あれ?


「なんだろう、なにかざわついている。あ!」

「え、何があったのですか?」


 ざわついていた理由は上空だった。

 上空からハゲワシのようで首周りが赤くもこもこな魔物がハイエナたちの元へ降りてきた。

 仔ども狙いかはたまた……


「状況が変わった、行こう!」

「え、あ、はい!」


 走りながら状況を説明する。

 "鷹目"はハゲワシの行動を映し続けさせた。

 仔どもたちの前にリーダーが立ちふさがって……あッ!


 私達が近くへと辿り着いた時。

 タカの攻撃からリーダーを守り赤い血を散らしたハイエナ。

 さらに何匹もスクラムを組んでリーダーたちを守ろうとしている。


「くっ、まさか死んで……あなた達下がりなさい!」

「いいえ、我々が守り抜きます!」

「今の内に逃げてください!」


 血を流し倒れたハイエナは今命の灯火が消えようとしている。

 あれは助からないだろう。

 普通ならば。


「アヅキ、ドラーグ! あのハゲワシを!」

「はい!」

「わかりました!」


 ハイエナリーダーが私たちに気づき恐怖の表情を浮かべる。

 私達と挟撃された、そう考えたのだろう。


「任せて」

「えっ!?」


 だがアヅキがハゲワシに殴りかかりドラーグがハイエナたちを守る。

 それを見たハイエナリーダーは混乱していた。

 まあ私たちは捕食者にしか見えないだろうしね。


 私も3種の魔力を混ぜて身体に纏わせる。

 これで準備は整った。


「うっ!? そんなに力を隠し持っていたの……!?」

「大丈夫、治してみせる!」


 ハイエナリーダーが何か言っているがそれどころではない。

 すぐに聖魔法を展開。

 "リターンライフ"!


 魔法陣が地面に展開する。

 今、こと切れたこのハイエナの魂をこれより外に出さないための結界だ。

 ここからは集中力の勝負。


 ハイエナリーダーが困惑している中で魔法を強化していく。

 施行回数はこれが初めてなせいで成功率が低いかもしれない。

 蘇生魔法だからね。


 それでも成功させるために惜しみなく力を注ぐ。

 私が魔法の光を死んだハイエナに惜しみなく降り注いだ。

 光は着地すればまるで炎のように舞い上がりその身を包んで行く。


 全力疾走するかのように私の体力と集中力を奪っていく魔法。

 汗をかくほどに暑くなる。

 その間にも光の炎はすっかりハイエナを包んで燃え盛った。


「成功してくれよ……」


 祈るように魔法を唱える。

 一瞬ハイエナの包む光が強く瞬いた。

 同時にキンッ! と澄んだ音が鳴り響いた。

 魔法陣が消え光が収まる。


 結果はどうだ。

 成功が、失敗か。

 周囲は何が起こるのかと固唾を飲んで見守る中…、


 ピクリ、と動いた。


 自然と肺に空気が届けられる。

 カッ! と目が開かれると同時に強くむせた。


「良し、成功」

「な!?」

「いきかえったー!?」


 ついでに"ヒーリング"と"無敵"を上乗せ。

 苦しそうだったのがずいぶんと和らいだようだ。


「まあこんな感じで、今は味方だよ」

「あぁ、嫌……さっきの地揺れといい……恐ろしい……!」


 私が微笑みかけるのとは裏腹にハイエナたちはリーダーを含めて固まり震えていた。

 よくわからず困惑しているのは先程治したハイエナだけだ。

 うーん、まあ固まってるし順番に"ヒーリング"と"無敵"同時がけしていこう。


 ハゲワシの方も問題はないようだ。

 アヅキが接近しハゲワシとの肉弾戦。

 ハゲワシの速い飛行にアヅキは苦戦していた。


 あざ笑うかのように細かく当ててくる動きにうまくついていけなかった。

 しかしハゲワシがアヅキばかりに気を取られている中で気配を抑えていたドラーグが背後から強烈な一撃。

 背中からグーパンチされ慌てて逃げていったようだ。


 ハゲワシが弱者狙いで助かった。

 下手に強い意思で戦いを挑んできたら大変だった。

 そうこうしているあいだに私も治療をしていった。


 "無敵"は接触前提だから強化しての全体ヒーリングだと意味がない。

 前足で同時に当てていても2匹までか。

 "変装"で二足でその場に立てれば何とかなる。


 まあまだまともに歩くことすら出来ないので細かくオンオフしてドンドンやった。

 最後にハイエナリーダーをやればやっと震えが止まってくれた。

 治療を受けている間目をつむり震えていたから大丈夫かかなり心配だったが大丈夫だったらしい。


「それでは改めて、敵ではないですよ」

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