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二百九十生目 煙管

 毒物というのは身近なところだと酩酊するもの。憩い。興奮。

 そしてどれもこれも問題視されるのは依存症を発するもの。

 使ったら死んだり麻痺したり気分が悪くなるものはそもそも法律で使用制限されていて薬物になるものは薬事法に則って運用されるので今は除外。


 そして毒物を使った戦いは数多くあり初心者冒険者を卒業するころにはつねに万能解毒薬を懐に忍ばせている。

 自身の解毒作用を加速化させ毒に打ち克つこの世界では一般的な解毒剤。

 なので前世の世界よりもあらゆる毒物の扱いが軽い。


 酔っ払いが寝始めると口に解毒薬突っ込まれて復活するのがこの世界の風物詩。


 魔物たちは種族ごとに使用割合が大きく変わっている。

 種族の分かれ方はまず大きくわけて毒に弱いものと毒に強い者にわかれる。

 そもそも毒物を扱ったり身体が土やら鋼やらついている魔物たちは毒に強い。

  

 そして清めたモノでないと受け付けにくいタイプや無毒の植物なんかは忌避している。

 そのため早急にタバコや酒に関する整備は急速に進められていた。

 これは私も意見を出していてちゃんとまとめている。


 私はもちろんめちゃくちゃ毒物には強いがそれとこれとは別なのだ。

 ホルヴィロスにもアドバイスしてもらっている。

 特に飲酒と喫煙はどことなくダーティーだったり火を扱うものは憧れの対象になったりするため耐性がない魔物と子どもたちへの配慮がすごく必要になっている。


 そして魔物たちにとっては臭害とかスメハラとか香害とか呼ばれるものに対して特に注意が必要となる。

 自分たちの毛皮が臭うのと明らかに危険そうなにおいが漂うのでは鼻の捉え方が違う。

 ちゃんと決められた場所でなおかつ身の手入れをちゃんとしなければ酒気ですら周囲に被害が及ぶ。


 さてそんな毒物たちに抵抗があり回復もできついでにすぐ手を出してしまうようなやつといえば。


「うーん……やっぱこの新種はどうもクサさが先に来て、スッキリ具合が悪いな」


「そうかい? クセが少なくて気分だけ味わうには最高だと思うけれど……今の僕のタバコは、とにかく形が良いよね。くわえててカッコいいのは必須条件だ」


「うーむ……アノニマルースで使うには俺のこのタバコ、どうも方向性が合いそうにない。おそらく売れないと商人へ伝えないとな」


 イタ吉に蒼竜そしてジャグナー。

 3名が葉巻や煙管を咥えながら密室で話していた。

 換気用の魔法が天井で渦巻く。


 私は隅の方で報告書を書いている。

 吸わない立場からの視線も必要になるのだ。


 イタ吉は鋼の尾を持つので尾刃タイプの1匹なら手入れさえ怠らなければ平気で他2匹は吸わない。

 マズルが長めにあり手先も凄くは器用ではないため補助具を使っている。

 ジャグナーはその岩鎧が体内の悪い物質を吸着して逆に頑強になっていくのだとか。

 握りつぶさないように同じく補助具つき。


 そして蒼竜は……まあ蒼竜。

 ニンゲン風の姿を扮しているし神なのでなんでここにいるかわからない。

 遊びに来たとしか思えないな……


 皇国は喫煙や飲酒の自由化を文明交流の推進として強く推し進めている。

 迷宮という環境にある街のためアノニマルースは半ば自治領になっているが当然皇国からの圧力はある。

 現在は『魔物の街ゆえ事情が特殊』としてのらりくらりと圧力をかわしつつ制限をかけたままだ。


 私は知っている。

 100年か200年かしたら今度は必死に制限をかけだすだろうということを。

 先にある程度手を打って姿勢だけは自由化しているという形にしたい。


 今後数十年後を左右する話なのと私が口出ししているのもあって秘書ではなく私が来ている。

 ちなみに時代が時代なだけあるのと魔物たちの耐性がそれぞれ違うのがあってタバコの中には『こんなの仕入れたら大変なことになるよ!』というものもある。

 そこらへんの判断が即下せるのは間違いなく私なのでクサいのを承知でここにいる。


 こういう時は頭を切り替えて分析モードにすることにより臭みが気にならなくなって私の脳内では様々な成分が解析されていく。

 主に解析するのはアインスだけれど。

 それでも書き留めるのは私の仕事だから休めない。


 とりあえず1匹1頭1柱の煙をよく見比べることにした。

 当たり前だがこの世界は特別なものが多い。

 煙が特殊な光を放つタバコはびっくりした。


 とりあえずこのタバコたちは普通のようだ。

 ジャグナーは早々に見切りをつけてタバコの先を握りつぶす。

 火の始末が出来ないものにはタバコは絶対行き渡らないようにしている。


 もし途中から規制だの年齢だの免許だの高税だのいい出したら確実に荒れるので今という最初の時期にガッチリ固めておくに限る。


「ローズ、他のはどうだ?」

「うーんと……次はこれを試してみて」

「なるほど、太いな……どれどれ」


 吸い口をどこかまだおぼつかないように切り落としゴミをちゃんと捨ててから熱した火魔石を加工したものに押し付け燃やす。

 ……みんなこの後は私も含めて生活魔法で身を清めようね。

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