二百七十九生目 毒薬
ビラビリリ対3人の敵。
しかし流れはほぼ決まっている気もする。
乱戦はビラビリリくんの得意分野だったらしくあっという間にひとりふたりと落とす。
ほかから狙われても数を削るのは優先する動きだ。
その方が効率的だとしてもそうそう出来ることではない。
さらにのこったひとりとビラビリリくんは何かを唱えている。
読み取る練習をしよう。
……なるほどこれはビラビリリくんの勝ちだな。
「雷撃ならっ」
敵のほうがほんの少し唱え終わりが早い。
仲間と囲んでいる間に唱え始めていたのだろう。
地面から光が集まり骨のような形に集まる。
土魔"ロックボーン"だ。
勢いよく光を纏った土骨を投げつける。
見た目よりも扱いやすく威力のある攻撃だが……
「だろうな」
わずかに遅れてビラビリリが発した魔法。
それは勢いの良い水流だった。
これだけだと普通の魔法ぶつかり合いだが。
そもそも敵が土魔法を放ったのはビラビリリくんが電撃を放つエキスパートだからだ。
土は電気を通さないかアースの役目を果たして逃してしまう。
それは水の多い環境で火魔法の効能が著しく落ちるのと似ている。
魔法は場の属性に大きく左右されるのだ。
しかし遅れてビラビリリくんが出したのは水魔法。
周囲に水がないように思えるが町民ならば多くの住宅に水があり地下水も走っている事はほぼ知っている。
威力減衰は特になく土は水を通してしまう。
もし土壁系だったら水流をせき止める可能性はあったものの骨土じゃあだめだ。
あっという間に水流へ飲まれ敵も飲まれる。
声を出すまもなく流し飛ばされていった。
水魔法って息もできないし見た目と違ってめちゃくちゃ痛いし怖いんだよね……
そんな敵への同情をしてしまう1撃で見事ノビた。
ビラビリリくんはどこから取り出したか素早く拘束輪を取り出す。
確かあれを首につけられるとどんな相手でも行動力を用いた技が使えなくなる本来は逮捕用の品。
もちろん悪用厳禁である。
「ホッホーウ」
さて私は彼等が起きる前にやることやってしまおう。
ビラビリリくんが拘束を終えたあとに降り立つ。
さっきまでの感じからすると……
細いトゲなしイバラを伸ばして口の中へと突っ込む。
正直かなり嫌な感覚がするがつとめて無視。
こういうのって確か奥歯に……あった!
探った違和感を引き抜けば仕掛け薬。
強く噛めば壊れるようにされていたもの。
詳しくは調べていないが自害薬だろう。
先程の戦いぶりを見てそういう性質の敵と判断した。
他の面々も引っこ抜いて……と。
最後に"見透す目"で怪しそうなものはひと通り取り上げておく。
亜空間にしまっていたらこの拘束のせいで取り出せないから安心。
さあ次だ。
追いつけば4つの影が激しい交戦をしていた。
数名相手が倒れこちらも少なくない傷を負っている。
向こうは……まだ7名いるからこちらが不利。
「ブラボー、デルタ、右翼抑えろ。アルファ、チャーリー、背後に回られるな。エコー、ゴルフは俺と動け」
そして指示を出している男。
明らかに練度が違う。
間違いなくリーダー格。
顔が見えなくてよくわからないが恐らくアイツが最も捕らえなければ真の相手……
「くっ」
「攻め込めぬ……なぜだ」
うーむ思ったよりバウンティーハンターたちが押し込まれている。
やはり不意打ちはこちらが上手だが正面から戦えば向こうが有利。
両者とも夜中の町中で激しい音がなる行動は取る気がないらしく暗器や爪が主な技だ。
しかし完全に私達から見て左側からの攻めを封じられている。
的確に攻め込むのを阻止されているようだ。
前線をそこで築くハメになっている間にフリーの2体が屋根へ回り込もうとするものの暗器を投げつけられ足止めを喰らう。
空いた右側からリーダーたち率いる3体が一気に攻め入る。
左右の2人はサポートらしく強化や邪魔を鋭く行えばいつの間にか煌めいていた暗器の光を振るう。
ビラビリリくんの隣りにいる1匹の影が突き裂かれ出血していた。
これは……勝てないわけではない。
勝てないわけではないが……半々。
どちらにせよ犠牲が多い。
私が今出来ることは限られている。
この姿の間大きく私が攻め入るのは難しい。
ぶっちゃけ"変装"が解ける。
攻撃されるのも最悪で喰らうと多分"変装"が解けてしまう。
そもそも裏の仕事に私が手を貸しすぎる事自体がまずい。
だとしたら……