二百七十七生目 裏取
ビラビリリは影の仕事をしにフードをかぶり走る。
私はその上でフクロウのフックーに"変装"中。
あっという間に依頼主に到着した。
同じ場所に3人ニンゲンがいた。
ええと……誰が誰だ?
「ん?」
「あぁ?」
「誰だおめぇ」
3人寄ってたかってガラが悪い。
認識阻害という効果は基本的にかかればかかるほどに『普通』に思えてくる。
認識阻害の概念がかかると最悪で私でも看破は困難。
ただあくまで魔物の一部が自分の身を守るために使う認識阻害だと単なる偽装クラスが大きい。
このフードもそれを転用しているだけで『誰かはわからないがなぜか近づいてきた魔物』ぐらいは認識されている。
あと私は普通に頭の上。
「……道を訪ねたい。夕闇通りはどちらか」
「はぁ?」
「どこだそれ?」
「……こっちだ。青道から繋がる」
この感じ酒瓶もっている3人目が正解か。
双方無言のまま歩む。
当たり前だが青道も夕闇通りも存在していない。
符号というやつだ。
急に空気が変わったことにもあんまり気づけず残された2人は肩をすくめるのみだった。
私たちは裏路地の誰もこなさそうな場所までたどり着く。
こんなところまでキレイにされているのは……
アヅキの性格がなんとなくうかがえるな。
「多くは語らん。この『掃除』を任せる」
「……承った」
ビラビリリも明らかにモードへ入り身分を隠しているらしく普段とはまるで違う声色と口調。
ええと手渡された木片にはと。
ふむ……どうやら徒党を組んでいる悪漢の親玉を討伐してほしいらしい。
ただ現在の場所がわからないのと繋がりそうな話がいくつかと。
つまりはまずどこにいるか調査してそれから討伐と洒落込む必要があるわけだ。
思っていたより難しそう。
しかし2つ返事でビラビリリくんは受領するとすぐに木片を亜空間にしまう。
詠唱もちゃんとやっているけれどまるで雰囲気が違って別人みたいだ。
それだけしっかりと気を使っているということなのだろう。
風が吹きすさぶと共にビラビリリは高く跳び上がっていくつかの段差をつたい天井まで移動した。
突然のことに相手からしたら急に消えたかのように見えただろうなあ……
ちょっと真似してみたい。
そのままどこかへと走り去る。
任務のために調査だろうか。
「ローズさん、気づきました? あの依頼、嘘です」
「えっ!?」
嘘をあっさり看破した!?
たしかに何か違和感はあったけれど……
この身体では満足に五感理解もできない。
「隠していたけれどにおいに嘘をつくとき特有の汗が。それと、先程の木片に在った罪状は明らかにでたらめです。スラムどころかアノニマルース全域で集団強盗をした履歴はいままで1度も成功例がないはずです。全員即捕まるか事前に防がれています。そもそも、そんな目立つこと即報道されますから」
あー……
あまりに納得した。
そういえばアノニマルースって別に治安悪くないや。
それは郊外でも同じでなんならそこらへんにいる魔物が高い火力を持って犯罪者とバチバチしあうことすらある。
歩いているだけで私より強いだろう魔物もいるからね……
もちろん……神も。
ここが100万都市ならともかくそうでもないまだまだ田舎だからぶっちゃけやりあう環境もうまみもない。
面倒な相手が暗躍するぐらいでフォウがさらわれたのもあまりに弱いとか小さくて台車に積載したらわからないとか様々な条件が重なったからだろうし。
それすらビラビリリくんに狩られている。
「ヤメトク? ホッホー」
「いえ、受けます。裏取りされていて通っている依頼なので何重かに思惑があるのでしょう」
「ホッホー!?」
えっ受けるの!?
意外な言葉に思わずフクロウとしての目が丸くなる。
フクロウなのでまんまる。
それほどまでに信頼があるのか。
ビラビリリくんは手がかりを探しに駆けて行く。
夜。
カラスの目がきかなくなりフクロウの目が輝き出す。
ビラビリリくんはひとつ大きく息を吐いた。
「……いましたね。調査通りなのが不気味なくらいです」
「場所ハコッチデサガシタカラ大丈夫! ホッホー」
「それはそうですけれど……果たして彼らはどんな罪を担っているのかと思うと不安が残るので」
確かに聞いてまわったり調べてまわったところ彼らの事は特定できた。
今隠れて上から見ているが総勢13名。
普段は全員バラバラに行動していてラインが見えないが……
とある時間だけこうして集まることを隠れ尾行で見つけた。
彼らは練度が全員一定以上あると言っていい。
そう……ごろつきや悪漢じゃない。
訓練された兵かはたまた何か。