二百七十四生目 梟目
経験不足によるレベル不足。
もっとも重要でありそして最も困難。
日常生活を送るだけでは上がらない。
新たな土地。
新たな戦い。
新たな挑戦。
そういうことを常に重ねるしかないのだが命や財産それに家族とBETするものが多くなればなるほどまともにできなくなる。
かつてのビラビリリくんも同じ事にハマっていた。
結果安易な道に走ろうとして詐欺られたわけだが。
経験を積むことによるレベル上昇は本当に大きい。
スキル1つでやれることは大きく増えていく。
スキルとスキルの組み合わせで相乗効果は大きい。
というわけでちゃんとおさえるべきことをおさえ適正な位置での迷宮探索は非常に効率的なレベルの上げ方。
イタ吉の方針は間違っていない。
それはともかくとして遠い目をしているビラビリリということだ。
「僕……あの地獄を少しでもくぐり抜けたからこそ言えるんです。貴方は本当にすごい。称賛するしかないって」
「あ、ありがとう」
ビラビリリくんが褒めてくれるなら素直に受け止めてよう。
「そうして僕は、地獄をなんとか抜けてトランスもした後、冒険者を続けるにしてもあまり群れをあけていたくなかったんです。自分の群れは大事ですからね」
「それも……そうだね」
彼には幸いな事に群れの仲間たちがいた。
彼らを食わして群れを発展させるためにアノニマルースまできたのだから……
まずはビラビリリが働くしかない。
冒険者稼業は成功すれば大きいが……
安定しない。
後とにかく安全のためには費用も大きい。
さらに何日も家をあけるため家に食わせるための相手がいるならかなり難しくなる。
必然的に別の手を迫られて。
「その様子だと今、冒険者としてはやっていないんだね」
「まだほとんどランクも上がっていませんし、上げられた力も普通よりはマシ程度……すぐ安定して稼ぐにはやり方を変える必要があったんです」
「それが、自警団かな」
ビラビリリはなんだかばつが悪そうにする。
あれ違ったかな。
「その、そこまで立派な組織じゃないんです。僕らはあまり繋がりもなく、影でこそこそと悪どい相手を殴り倒し、依頼者から懸賞金を受け取って倒した相手の財布ももらっていくような……」
「もしかして、賞金稼ぎ?」
ビラビリリは今度こそ肯定した。
なるほど賞金稼ぎ……
バウンティハンターとも言う。
当たり前だが盗人だからといって盗人から盗んで言い訳がない。
正式な許諾……つまり警備や冒険者依頼または騎士とか軍でないのに暴力を振るうのは基本的に良くないとされる。
もちろん現行犯を私人逮捕する権利は誰にでもあるのだが。
彼の様子を見るにそういうことではないのだろう。
暗殺者とはまた違うが彼もまたそういう裏の稼業だ。
非合法な暴力でどんな相手でも倒してしまおうというもの。
「……梟の目」
「っ!?」
やっぱりだ。
ビラビリリが驚いた声になっていていない声をあげる。
「組織というよりはひとつの頭を中心としたネットワーク。鷹の目同士は名も顔も知らず裏路地や郊外などどうしても警備の目が届かない場所をパトロールし、同時に現行犯を発見次第制圧。それと同時に頭が裏取りした情報を元に依頼を受け、犯罪者を討伐する。あと清掃活動なんかもするところで、認められてはいない組織ながらも警備隊からはぼ認識され、警戒はされつつもまるで互いに監視体制のようになっている……あと普段はゴミ収集もしている」
「ど、どうしてそれを!?」
カラスマークの清掃係。
表の顔はそれだしほとんどは表の顔しかしらない。
しかし清掃係のごく一部が裏の顔を持つことをしらない。
夜に輝く猛禽の目を。
私は清掃係を頼んでいただけなんだけどなあーー!
そりゃ作った相手が相手だし知っているよ!
さらにいえば別に暗部はバウンティハンター組織だけではないし……
「まあ、色々とあってね……」
「なんだか聞いたらマズイ気がするので、聞きません……!」
「助かる……」
私の目がどんどん死んでいくのを見て止めてくれたようだ。
ちなみに今の話……
周りのものたちはそこそこ距離もあるし移動しながらだからまるで聞こえていない自身はあるし……
彼らの腕に受信翻訳機はない。
私達は先程の場所まで再び歩いてきた。
警備所からはそこそこ距離があるのにもかかわらず。
「……僕がこうしてここらへんを見回る理由も、やはりわかっているんですよね」
「うん、彼らは……ニンゲンたちの町で住めなくなった者たちだ」
アノニマルースは来るものだなんて基本的にカエリラスみたいな相手でなければ拒んではいない。
そして昨今の急激な入居増加。
それはアノニマルースの力が十二分にあっても……
こうして歪みを生んでいた。




