二百七十生目 中心
私と祖銀が向かい合いお茶を飲む。
ホッとするが話す内容は今まさにあった話のまとめ。
どこか落ち着かないのだった。
「蒼竜が勇者ではなくローズオーラに目をつけたのはまさしくなるべくしてなったのかもしれませんね。意外性と言っていますが蒼竜なんて面白そうかどうかしか、考えていないので深く考えなくても良いと思いますよ」
「は、はぁ」
ちょっとわかってしまうのが……
頭を抱えそうになるが祖銀の前で友達感覚しているのもおかしいのでやめておく。
祖銀の話は続く。
蒼竜はたくさん目をつけるもののその中身は非常に雑だ。
というより目をつけるだけで何もしない。
死にそうになっても助けない。
死んでもこんなものかと放置する。
悪事に走っても面白がるだけ。
私と出会うきっかけも蒼竜の僕と私が出会ってそんなやついたなあと思い探ったらしい。
そう。
ぶっちゃけ私はホエハリに生まれた時点でほぼ捨てられていたのだ。
「……でも、逆に考えれば私は別に蒼竜の操りゴマではなかったんですね」
「蒼竜が他者を操るような性格と力があれば、むしろここまで負担をかけさせずに済んだのでしょうが……」
祖銀は呆れるようにつぶやく。
なるほどこういう点だ。
確かに蒼竜が愉悦を追い求めるどうしようもないヤツだが……
祖銀の言うようなコントロール下に置ける神のほうが優秀とは思えなかった。
神として優れるとはそういうことか。
そして私は紆余曲折あり神使見習いになる。
蒼竜は私のことを高くかっていることそのものは事実だそうだ。
そして魔王討伐時に私は神となり正式な神使に。
私がそうなった時点で正式な採用を考えていたのだとか。
特に……
「魔王を仲間にした……らしいですね。朱竜には意地でも伏せた方が良い話ですが。その意外性こそがキーになると、彼ははなしていました」
「ええ、絶対言わないでおきますっ」
絶対に死にたくない。
二度と何があっても。
小さな神になり私が死んでも復活出来るようになって強く思うようになったことは意外にも生への渇望だった。
死ぬというのはあらゆる思考をしてもどの方面からも避けるべき存在でしかない。
肉体が無事だと言っても……後遺症がなければ何だってしていいわけでもないと同じように。
路地裏で尊厳を陵辱されるような行為をされたときに『死ぬわけじゃないから』とはならない。
到底受けいれられず魂に深い傷を残す。
なぜなら記憶がほとんどない私でもあの時……
初めて自分で殺害をしようとした時に蘇った記憶で殺害をできなくなったほどに。
私の奥底に延々と疼く傷と化すのだ。
「そして……例の言葉についてです。分けて説明しますね。あの日の『結び』とは、御存知の通り救済者の根絶です。いたずらに魂をいじり自身の矛先にしつつ本人は自覚なく正義のために星を灼く……そんな事を許していいはずもありませんから」
「それは私も同意しますが……私がそこの中心にされるだなんて」
「それが、得るもの、という部分ですね。つまりローズオーラならば必ずや救済者の根絶をやり遂げてくれるという願い……または計算」
祖銀にも蒼竜が読み切れていない部分はあるのか言葉を揺らす。
蒼竜はどちらもかもしれない。
根本的にああいう感覚なのだが行動するときに思考しつつ最適化しようとしている気はする。
「そして、雪を超えてというものはかなり変則的といいますか……降り積もる雪は蒼竜の時を表しています。ここで蒼竜のメッセージのことを表しているのですが、それを超えてということは、長き間待っていた時間を終えるということです。正直救済者へは今の所後手後手でしかないので、私達長年の軛を外す時だと……蒼竜はそう考えています」
「そ、そんなに重く……何か作戦が?」
祖銀はなんとも微妙な表情を見せる。
竜なのにここまで複雑な顔を見せるあたり祖銀のニンゲン慣れと感情の強さがうかがえる。
「一応、『ゼン』と化せがそれなんですけれど……つまり最悪命をかけてローズオーラのサポートしろという、恐ろしくあなただよりのものなのよね」
「……え゛っ」
思わず変な声が出てしまった。
でもこれは出てもしかたないともいえる。
つまり私が救済者を倒すかもしれないから全面サポートしろというもの。
「多分、『ゼン』とはなにか気になるとは思うのだけれど……蒼竜が遥か昔に好きだった、既に失われた文明の言葉で、意味は終わりや究極、それに果てのことよ。こんなこと言ってあらゆる意味で承認されるはずかないのに、朱竜を止めるために言った……とは思うのだけれどね……」
祖銀ですら場を読み切れているわけではない。
単なるハッタリかはたまた……
そのために私の存在や5大竜の存在がBETされていそうなんだけれど。




