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二百六十八生目 意外

 魂に細工して様々な方法で星を陥れ灼こうとする謎の存在救済者。

 その相手に立ち向かうための約束……

 だけれどそこでなぜ私が出てくるのか。


「蒼、ワタクシにもまだわかっていません。そのあの日の結びとローズさん、そして転生者としての結びがどのように関係在るのですか」


「救済者などという敵は我が全て焼く! こんな者に頼る必要などないっ!」


「転生者には、意外性があるんだ」


 蒼竜がそっと指を掲げる。

 大きな爪がいつもよりもずっと目立っていた。


「もちろん戦力という意味ではずっと僕たちよりもローズは劣っている。けれど、転生者は救済者にとって想定外の1手になる。これは今まで集めたデータ的にはほぼ確実さっ」


「それが、蒼が転生者を選ぶ所以……というわけか。確かに思い当たるフシがないわけではないが……」

「僕はその可能性に惹かれた。そしてローズは見事その期待にこたえてくれた。勇者一行が魔王問題を解決してくれたとき暗躍していたのが紛れもなくこのローズさ」

「ちょっと!?」

「あとついでに今代の勇者も転生者だったよ、あっちは僕の管轄外だけれど」


 一気に場がざわめく。

 なんてことを言ってくれたんだ!

 バレた!

 当然朱竜は気に入らないらしく壁にもたれかかっていた姿勢をやめこちらを睨み詰めてくる。


「なん、だと! 焼けば尽きる虫けら如きが魔王を落としたなどとどんなまぐれを手に入れた……!」

「う、うわわっ」


 殴られる!

 と思って思わず背後へ跳ぼうとして。


「そういうのが良くないんじゃって」

「……チッ」


 ……目の前に翠竜がいつの間にか居た。

 木の上からここまで来て割り込んでくれたらしい。

 朱竜が諦めて帰りまた壁を背中にする。


 それを見届けてから翠竜はまた木の上へと跳んで戻っていった。


「あ、ありがとうございます……」

「いやいや、暴力は事前に止められて良かったわい」

「朱、神使に対して威圧的に迫る行為は相手によってはそれだけで命の危険に晒されますから、基本的に謹んでください」

「なんでこのような虫が、我を差し置いて魔王を……!」


 言ってしまえばあの時私がいて朱竜がいなかったからとしか言えない。

 世の中どれだけ強力な相手がいたとしても……

 それで世の全ての事柄を解決できるわけではない。


「ある意味彼女はびっくりするぐらいそういう相手と戦わざるおえなくなる命運だし、朱竜はそういうのにとことん悪い(・・)。おそらくはただ運というより、そういう流れなんだ」

「なるほど……外から来る、ということそのものが、概念を持っている、ということだな?」

「我のような常勝や壊滅の概念が救済者に影響を受けた相手を遠ざける一方で、不可能な勝ち手から救済者を誘引した上で、勝ち筋を得るのが意外性ということなのか? 気に入らんな……」


 意外性……それが私たち転生者が持ちうる概念なのか。


「それでも、長年の膠着状態を打破するにはほぼ唯一の手段だ、違うかい?」

「この大事なことを、運にかけるというのですか……あまりに不安なのですが」

「しかも、作戦の中心に虫を据えるということだろう? かなり無責任なものだ」


 ……えっ!?

 そういう話だったの!?

 当然のように私中心前提で話進んでいたのかっ。


「そんな、私はまだやるともなにも……」

「そうじゃなあ、そもそもの話負担が大きすぎる。ローズオーラのことも考えてやらんかい」

「突然わけのわからない事に巻き込んでごめんなさいね本当に……必ず後で説明するから」

「俺は良いぞぉ、そういう賭けは、好きだ!」

「まあ、僕も議題でいきなり通るとは思っていないさ。彼女の事を見届けてみてほしい」


 反対3賛成1で流れたらしい。

 正式に多数決をとってやる段階ではないらしい。

 蒼竜の事がさらにわからなくなってしまった……


「虫けらが……貴様は絶対に認めんぞ……」


 そして朱竜の強い反感も買ってしまった。

 こんな……こんな風になるだなんて。

 私……何か悪いことしたのかな……


「それでは一端この議題はここまで。ついでに今回の予算編成もします。ローズオーラは下がっても大丈夫です。その……おつかれさまでした」

「は、はい……」

「うわ、数字の話はやりたくないのじゃ……」


 やっと下がれる……

 祖銀にめちゃくちゃ憐れみをかけられた気がした。

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