二百六十七生目 救済
2020/09/07 多重状態の解消と中身の修正により理解しやすくなりました
現在5大竜が会議中の宇宙ステーションのようなここは再利用している場所だった。
「なんでも、神々の大戦争時に対外宇宙のために利用していた物の1つらしい。俺達は地上系の神だからな……宇宙の神から中古になったここを借り取ったってわけだ」
「ここは戦闘区域からはだいぶ遠いから心配はいらんぞ。たまに神域の揺れは伝わってくるがな」
いや待った待った。
えー……何? 神々って何?
神がドンパチしているの? 今も? 宇宙で?
そういえば以前暴れたやつらを迷宮の月に封印したという話を聞いたことがある。
本当に宇宙規模の話だったんだなあ。
なんというか私自身神というものに対しての底をまだまだ見抜けていなかった。
「えーっと……」
「困惑しておるようじゃのう……まあ、大半の事は気にせんでいいわい。それより大事なのは、ここを借りている理由じゃのう」
そうだ。さっき蒼竜に聞かれたことだ。
地上でなく宇宙でわざわざ5大竜が会議する理由か……
やはり地上だと問題があるからだろう。
「あ……地上では出来ない話をするため、ですか。地上だと聞かれたくない相手に聞かれてしまうから」
「そうじゃな」
翠竜が肯定してくれた。
確かにここならよほどのことがない限りスキルですら聞き耳を立てられることはない。
「特に『結び』に関することを地上で話すことは出来なかった。僕らが戦っている相手は実は僕らからすらもみえていないからだ」
「みえていない……相手?」
「もちろん影や空気と戦っているわけじゃあない。未だ全容が掴めていない相手というわけだ」
さらに大きな話になってきた。
神も正体がわかっていない地上だとどこにいるかも掴めていない相手が敵なのか。
「その相手の名を我々は、救済者と呼んでいる。向こうが名乗ったことはないが呼ぶ名がないと打ち倒すには困るからな」
救済者? 敵対する相手の呼び方が?
「過去、神々の戦争時にそういう奴がいたんだよ。この星を救うためと言って大きな力を掲げてね。それなのに星を灼こうとしてね、困ったものだよ」
「この星を救いたいという意志の元に星を攻撃した者がいまして。打ち倒した後に魂を捕獲したところ何者かによって魂が縛られていることが発覚したのです。その正体を知るために魂に手を加えようとしたところ自壊して魂の奔流に戻ってしまい……未だワタクシたちにも正体が掴めていない星を救済の名の元に壊そうとする何者か、それを“救済者“と我々は呼んでいます」
蒼竜の話を分かりやすく解説してくれた祖銀がため息をつく。
うわあ……今私はとんでもなくややこしいことに巻き込まれていることを理解した。
神に成ってしまうということはこういう事情も見えてきてしまうということなのか。
「最近はヤツも大人しいと思うておったが、今度は虫どもが魔王を蘇らせたと。虫どもだけでは不可能である魔王の復活を成し得たのは裏で救済者が糸を引いていたからだろう。今度こそ根ごと引きずり出し焼いてやろうと思っていたのだが……勇者とやらが我の獲物を横取ったのだ。虫の分際で……焼いてやる……」
ば……バレてない!? バレてないよね!?
朱竜はこちらを見てもいないからバレてはなさそう。
勇者グレンくん……絶対朱の大地に行かないでほしい。
今度会うときに言っとかないと。
というよりもそんな大きな渦なのか。
カエリラスは恐ろしい巨大組織だっだがカエリラス自体は多くの組織に支えられていたものだった。
そのうちの1つに仕掛けられた別意図の悪意があると考えれば恐ろしい。
……そうだ。
かつて地上を月の大地に置換する彼らの作戦は月の悪魔のうちどこかがやらせようとしたものだった。
今思えばあれって……
大きな悪意の一端に触れた気がした。
「俺達の戦いは続いている。出来うる限り仲間が欲しい………が、なぜ彼女に? あの日の『結び』を果たす力があると見込んだ理由は何だ?」
また私に視線が集まった……
「その前に………。さて、ローズオーラ。ここで2問目だ。あの日の“結び”が何か分かるかい?」
嫌な試験を受けさせられている……
『結び』。地上にいる救済者に露見しないようにするために伏せている五大竜の約束ごと。話の流れから私が考えついたのはひとつだ。
「救済者を倒す約束、だよね」
「正解! そう、救済者自体の完全撲滅が僕らの目的なんだ。それによって命あるものたちを正常な状態に保つことができる」
正解したけどイラっときた。
けれどなぜそこで私が出てくるのか。
それがまだわからないな……