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二百六十六生目 違和

 蒼竜が求めるもの。

 蒼竜が神使として欲しがる候補。

 その基準が私にだけはわかった……


 だからこそ恐ろしいほどに心が冷えた。 


「生まれる前から……? 魂を見て選ぶことに、そこまで意味はあるか? 生まれついての魂など、単なる活力。星の流れから僅かに生み出された意思がわかれ、身に宿る、それだけに過ぎないはずだがな」


 金竜が(いぶか)しみ竜のヒゲをいじる。


「そうではない魂がある、ということじゃろう? なるほどつまり……『転生者』の魂じゃろう!?」


 翠竜(すいりゅう)の言葉に私は私が驚くほどにビクリと震えて動揺してしまった。

 身体が揺れたことに気づかれていないだろうか。


「転生者? 確かたまに星の外から来る魂のことだったか、しかし、転生者は珍しいとは言え少なくはないだろう、例え目星を付ける方法があったとしても候補が多すぎてやってられんだろうっ」


「転生者たちの大半は微生物、虫、植物あたりになって生まれ変わりを自覚することもなく生涯を終える。仮説として、幸運な魂たちは転生前のカタチに近い姿で生まれるみたいなのさ。さらに極稀に元とは違う形を取るのもいるけれどね」



 衝撃やら混乱やらでぼーっとしかけていたらとんでもない話をぶち込まれた。

 うっそ……微生物じゃなくてよかった……。

 転生前は獣でも魔物でもなかったからホエハリに産まれたのは奇跡だった。


「転生など気にしたことはなかったが、そうなると今まで食べてきたものに、転生者が含まれていたのかもな。まあ、わざわざ気にしていたら何も食えんがな!」


 金竜が蒼竜の話を遮って鷹揚(おうよう)に笑った。

 蒼竜は肩をすくめるような仕草をして仕切り直す。


「で、僕が追う魂は先程の条件全てを除いた魔物に転生したもので神にはなっていないもの。もちろんニンゲンも含んでいるよ。ただし初期から僕が見守るだけで僕はそこから手を加えたりしたりはしない。僕は転生者がどう生きるかをずっと見てきた。何も成さずに、あるいは無念のうちに死んでいくのを」

「なんというかまあ、儂が言うのもなんじゃが、あまり良い趣味ではないのう」

「趣味じゃない、仕事だよ仕事。僕は可能性を託せる相手は転生者しかいないと思っているんだから」


 蒼竜が不敵に笑い周囲はどよめく。


 私にはなんだか別のものが見えてきた。

 蒼竜が盤面を挟んで見えない誰かと向き合っている。

 そして互いに盤上の駒を進めていくのだ。


 私は蒼竜側の駒のひとつ。

 周りには同じく転生者という駒が無数にある。


 駒が軽快に音を鳴って動く。

 時間が進むとともに少しずつ。

 いつの間にか他の駒は後方で待機したままになったり相手の駒によって(たお)される。


 盤面を進んだ(わたし)に蒼竜の指が添えられて。

 次の場所(マス)へ進んだ時。


 駒は成る(・・)


 そんなイメージが私の中に広がった。


「全く、気が遠くなる作業じゃなあ。間違いなく手を取り加えたほうが良いじゃろうに」

「フン、虫に期待をかけるのはまるで理解ができないが、虫の扱いそのものは心得ていると見える。虫など虫たちにその営みを任せれば良い。死ぬ時は死ぬし生きる時は生きる」

「朱竜の言うことはともかく、僕ら神が下手に彼らへ手を加えれば、彼ら自身がどこまでいけるかの成長性を奪ってしまうじゃないか。だから僕はただ見守るんだよ。大事な命たちだからこそねっ」

「いい言葉で濁そうとしましたけれど、本音が垣間見えていますよ。蒼にとって彼らはというものは観察対象でしかないというね」


 ゾワリとした。

 彼ら5大竜がどことなくニンゲン的でその根本的な違いがある事を改めて認識させられる。


「いやまあ、そこは僕一応生まれついての神だからね」

「全く、下々の者たちとちゃんと手を取り合わぬと本当にいつの間にか破綻するぞい」

「ホントギリギリの綱渡りだな! ちゃんと大地に住まう者たちを育て上げてやらんと、飢えた大地では枯れちまうぞ」

「……」 


 祖銀が私の方をチラリと心配そうに見た。

 今私はどんな顔をしているのだろうか。

 私自身で確かめる勇気は無かった。


 してあげる……やってあげる……

 そして命たちが好きだから見届けてあげる。

 ここが私と生まれながらの神との 差……


「蒼竜が自身の力によって神に育った転生者を求めていたのはわかりました。ローズオーラが候補者になった理由も転生者だからでしょう。けれど、それが私たちの目的にどう役立つのか、そこが知りたいのです」


 祖銀が無理矢理方向性を変えた。

 私に気を使ってくれた……

 根は彼らと同じ神でも祖銀には思うところがあったらしい。


「それはローズオーラにも考えてもらおうかっ!」

「えっ!?」


 そうしたら今度は蒼竜が私に話題を振ってきた。

分散していた視線が私に集まる。

 祖銀が申し訳なさそうな顔をしている。

 貴方は悪くないです。


 さっきからずっと心が落ち着く間がないっ!


「そもそも、僕ら5大竜がなぜこんな宇宙(ところ)で僕らが集まっていると思う? ここが大事なところなんだ」

「宇宙に……そもそも宇宙にこんな場所を作れる技術はどこから……」

「ココは前からあるものを再利用しているだけなのですよ。内装はともかく外装はワタクシたちも完全に理解しているわけではないのです」


 うん……? 再利用?

 そりゃ今のニンゲンたちの技術レベルでは打ち上げられないけれど……

 だったら一体誰が。

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