二百六十四生目 約束
5大竜たちに中央机へ来るように促された。
レグリアのほうを見るものの……
レグリアはこちらを優しく見守るのみ。
「えっと……」
「大丈夫さ、きっとキミならばね」
「うう……」
なぜそんな何も知らない私に対してそう思えるのか。
死んだら骨は拾ってほしい。
仕方なく机の方へと移動する。
そして全員から見える目の前へと出されて。
自然に神使たち含む全ての視線がこちらへ集まった。
これはひどい。
正直私がある程度こういう経験に鍛えられていなかったら倒れていたところだ。
「ハッハッハァ! そなたが蒼の神使か! 俺が金だ! そして……」
「儂が翠竜というわけじゃの。ほかは、知っていそうだから問題はないの?」
「は、はい……」
正直めちゃくちゃ緊張している。
早くココから逃げ出してしまいたい。
「ふむ! この小さき神が本当に……たったひとりの神なんかが本当に、あの時の約束のために……? 俺は正直分かんねえなっ」
「蒼、ワタクシは彼女に直接事前に会ったことがあるから少しだけ察するものがありました。彼女、どこで拾ったのです」
「うーん、あんまり本人の前でそれを言うのは無粋ってやつなんだけどなあ」
「氷蒼の、言っていることがめちゃくちゃじゃぞ。神使には何も伝えていないのか? 意味も伝えずか?」
翠竜が呆れて背中から倒れる。
そのまま落ちそうになり……
脚を引っ掛けて止まる。
そして何事も無かったかのように蒼竜を睨んだ。
「無駄だ。1番分かっているだろう、蒼神がどんなやつかを」
「はあ……全く。話がすすまんから、順にやるかの」
「そうだね! ネタというのはちゃんと順番に話さないと、ただ羅列した他者の情報だなんて死ぬほどどうでも良いだろうから」
「言いたいことはわかるが、言っていることは最悪だなっ! ハハハッ」
金竜が笑うけれど私は全然笑えない……
というよりやはり身内でも蒼竜ってこんな扱いなのか。
私大丈夫なのか……!
「正直、みなさんが何を話しているのか、全くわからないと言いますか……」
「そのために貴女がワタクシに聞いてくれたおかげで事態が判明しました」
「ええと……それはあの日の結びを得るもの。雪を超えてゼンと化せ。ですっけ」
「その言葉は……本当はみだりに使うわけにはいかないの。ごめんなさいね、貴方に何も蒼が教えていなくて……」
祖銀にここまで申し訳無さそうにされるとすごくこちらも申し訳なくなる。
そして今の言葉みだりに使うわけにはいかないというのははっきりわかった。
蒼竜と祖銀以外の5大竜の目つきが私を射殺さんとするかのようになった。
「ほらみんな、顔が恐いよ?」
「蒼神を跡形もなく粉々に出来れば、その必要もないのだが」
「気持ちだけはわかってしまうのう……ただ、流石に氷蒼のも単なる妄言や保守で使ったんかでもあるまい。それは儂らに覚悟を決めるためのものじゃからな」
「それにあの時の言葉は約束として私が縛っています。蒼が蒼なりの覚悟がそこにあったのでしょう」
「で、俺としてはまずこのちんちくりんの神にしか見えん存在を、ちゃんと来歴から知りたいのだが、どうかな? おっとお嬢様の事悪く言ったわけじゃねえぞ、むしろ俺はちんちくりんなものが好きで、たまに集めている」
「ゴメンナサイね、ワタクシたち自覚はあるのだけれど、今の感覚や下々の倫理とか……そういうのにやや疎くて、失礼がおそらくかなりあるから許してくださいね。神使たちから考えは学べるけれど、どうしても根が擦り合わないことが多くて……」
「い、いえ……蒼竜である程度は慣れています」
なんというか今の若い子についてこうと必死なお年寄りたちだ……
ただまあ朱竜や蒼竜みたいに自我を突き通そうとするよりはいいけれど。
蒼竜は今の感覚というものをミーハー的に身につけるけれどなんというかずっとズレが有る感じが拭えないんだよなあ……
「哀しい慣れですね……」
「とりあえず前提なんだけれど、ローズは神への成り上がりなんだ。元は単なる魔物」
「なんじゃと……!? まさか、成り上がり個体じゃと。神の生まれではないのか?」
「信じ難いのですが事実そのようなのです。蒼竜が承認していた事実確認が取れています」
「アッハッハッ! 良いじゃないか、成り上がり、上昇結構、どんどん良くなれ!」
「フン……神など所詮……」
「ははぁ〜、それで、なんで氷蒼のは、こやつに承認を?」
うん? 今朱竜が何かを潰すように呟いたような。
ただ話は気にせず流れていく。
「元々、地力で壁を超えそうだったんだ。別にそこで安全壁を作っておいてやるのも良いものだろう? 別に後ろから押してやるわけでもないんだからさ」
「それもそうじゃが……答になっとらんというか……そもそも氷蒼の、今まではほとんど神使をつれなかったし、前の神使はここに入れなかったのに、なぜ……」
翠竜が渋い顔をした。




