二百六十二生目 翠竜
5大竜のうち2竜が会議に到達した。
――それだけで私が感じる威圧感はとんでもなく高まっていた。
2つの巨大な神たちが机を挟んで座っているというだけで私の存在が飲まれそうだ。
これほどまでに5大竜というのは凄いのか。
これほどまでして過去の話だが魔王に負けたとなると確かに……
そう蒼竜に対して同情するわけではないが。
確かにショックを受けるし魔王関係を避けたくなる。
ビリビリと伝わってくる空気感で鳥肌がたち毛皮が逆立つ。
普段単体ではまるでこんなのを感じないのに……
今会議室に5名揃ってしまったらこの場のエネルギーはどれほどまでに跳ね上がってしまうのか。
「今回は、新たなる銀竜を連れてくるかと思っていたのだが、まさかいつもの銀が来るとはな!」
「確かにワタクシは引退しましたがね、やり残した仕事に関することなら、ワタクシだって出てくるのですよ。まだあの子に全部投げるほどには、ワタクシは弱ってなどいないんですよ」
「そうか! ハッハッハッ! 銀が元気だと俺も嬉しいよ!」
金竜はその長くのびた髭を指先で軽くいじっている。
しかしかなり快活だ。
ここまでドストレートな神も珍しい。
祖銀はそんな金竜を意にも介さずティーをすする。
金竜も無視された事に対して気にもせず大胆に笑い椅子に座り込んだ。
神使が料理を運んで行き机の上に置かれた肉に手を伸ばし豪勢に口へ運ぶ。
「すまんなあみんなっ、時間をとらせてっ! もう少しで揃うからなあっ」
「まったくもう、呼び出しが毎度急なんじゃよ、5年前に知らせてくれと言うたじゃろう」
不意に現れた気配。
いつの間にやらそこに在った木の上。
枝の1つにのびをしている少年がひとり。
その折れてしまいそうなほどに細い手足とは耳や胴体の一部が緑の龍鱗で覆われている。
体のあちこちもよくみると単なる生体らしくない。
まるで木材を使った人形みたいで特に関節部分が球体でわかりやすい。
「翠竜様っ」「ああっ、また気づけなかった」
「やはり愛々しい……」「目標だ」
「翠竜様……相変わらず掴み所がない……」「本当に本体は竜なのだろうか?」
「隔離された大地に隠された神……」「ミステリアスが武器なんですよね」
翠竜は目に涙を浮かべブラブラと足を枝からさげている。
翠竜はあんな見た目なのにまた場の空気が一変した。
実力者なのは間違いない。
翠竜はまさしく年端もいかない子どもの見た目だが全く中身と一致していない……
「翠竜も来たのですね」
「相変わらずだな、もう年が年だろうに無理すんなよ」
「なんじゃあ神に歳など……黄金のにだけは言われたくないのう。のう、白銀の」
「ふたりとも、態度の方をどうにかしてくれますか?」
「おお、これは手厳しいのう」
「ガハハハ!」
既にメンツが重い。
ココに朱竜と蒼竜が加わるのか……
えげつない。
雑な軽口を互いにいくらか交わし合う。
内容はともかく少しずつ時間は進みり
そして。
「――と。来たな」
「この感じ……!」
私の肌を襲う悪寒。
この場に居てはいけないと訴えるような鼓動。
肉体があたたまるのに体の芯は冷えていく。
私を殺した相手が……来る。
直後。
突然だった。
窓ガラスのほうに何かが……赤い影が飛んできて。
この宇宙仕様高耐久ガラスを。
断絶された空間を。
覆われた神力を。
何もかも貫いて飛び込んできた。
「「わああぁーっ!?」」
「朱竜様ほんとやめて!」「ゲエ、朱竜様!」
「す、吸われるーっ!」「メチャクチャだ……」
当然穴は空き焼いて焦げたのは机ごと。
笑顔の金竜は自分の分だけ肉を取っていた。
銀竜もティーセットをそっと持っている。
そして……
「吸い込まれ……止まった!?」
「だからー、普通に扉から入ってこんかい。壊すのはやめい」
「知るか。態々こんな辺鄙な場所に喚び出す事が1番の悪因。早く終わらせろ」
翠竜がいつの間にか木々の枝で隙間を埋め……
僅かな間で何枚も壁が構築されてゆき最終的に先程の状態とまったく同じになった。
いやおかしいでしょ……どんなでたらめな力なの。
破壊する方はまだわかりやすいが全部直してしまう方はだいぶおかしい。
そして朱竜……
あの赤き竜の姿はまるで隠すことがないかのごとく。
ただあの赤い竜の姿昔見たな……
蒼竜が激辛アイス食べるのに使っていた。
絶対バレたら怒られるだけでは済まない相手じゃん。
「朱、毎度毎度ご足労どうもだけれど、ここでの暴力は禁止。前も言ったろう?」
「朱はそろそろ神使や後継者でも作って落ち着きを覚えなさい。それをぶつける相手は、既に討ち果たされたのだから」
朱竜はムスッとしていた。




