二百六十一生目 金竜
ゆっくり個室で休んだ。
おはようございます私です。
起きはしたけれどぶっちゃけ夜なのか昼なのかはまったくわからない。
まあ体は十分休息が取れた。
心がまだこのふわふわなベッドで寝ていたいと思うがさすがに時間もわからず寝ている場合ではない。
シャキッとさせて起きる。
化粧……というほどでもないかもしれないが身支度というのはあるからね。
毛皮の丁寧な扱いは欠かせない。
跳ねさせたい毛と跳ねると困る毛があるのだ。
そんなこんなしつつさてそろそろパーティー会場に様子を見に行こうかというとき。
「会議が始まるぞー!!」
どこからともなく響き渡る大声。
そしてドラのような響く楽器音。
なんだなんだ。
というより会議が始まる!?
私は部屋を出て急いでパーティー会場へ。
他にもちらほら同じような動きをしている神使たちが。
「急げ急げっ」
「翠竜様ー!」
「さっき食べたばっかりで急がせないでぇ……」
多種多様な神使たちが駆けて……
そこへとたどり着く。
私が来た時には既に7割ほどいるようだ。
ただ肝心の中央に誰も居ない。
さっきまで神使たちが踊っていたところは大きな机が置かれていた。
座れる椅子は5つ。
そのいずれも空白だ。
まだ来ていない……けれど呼ばれたということは。
後はココに座るだけということなのか。
あっ……レグリアもいた。
「レグリアさん! 会議が始まるって聞いたんだけれど」
「あ、お嬢さん。今から始まるから、ゆっくり見ていよう。まさかこんなに早く全員揃うだなんて……今回はやはり、異例なのか……」
レグリアも何か別の事に気を取られているらしい。
私はレグリアの近くへと合流しつつ周囲に気を配る。
みな一様に驚いている……というか。
なんだか最初よりも多くなっていないか。
みんな最初からすぐに来るはずないと踏んでさっさといなくなっていたのか。
まだまったく見たことのない神使が続々とワープしてきたり跳んできたりする。
やがてざわつきがおさまって行き私が見るに最初の倍くらい神使たちがきていた。
いや多いな。
5大竜神使ってこんなにいるんだ。
しかもそのうち3竜のみで。
みんなが注目するのはテーブル中央。
私もそちらを気にしておこう。
「話は本当なのか?」
「こんなに早く集まるだなんて、賭けが……」
「あんたもう賭博神やめろ」
「早いのはええことやね」
「少し不穏な気もする」
「誰か死ななければいいけれど」
「おかしい……度し難い」
「もう神々が揃うとか、これはやはりあの話か」
「そもそも5大竜会議が突如開かれる事自体がよくない」
それぞれの思惑はありつつもある時ピタリと声がやむ。
私にも今のはわかった。
圧力そのものが違う何かが……来る。
中央の椅子。
そこのひとつに少しずつ銀色のきらめきが集まっていく。
やがてきらめきは空間を歪め光景がねじ曲がっていく。
光が収まればそこには1つの姿。
銀色の鱗が輝く長い尾。
ニンゲンに近い姿をしているが祖銀だ。
「先代様ー!」「おお、先代様の方か」
「現代の銀竜様ではないのか」「先代なの?」
長い尾をくねらせ凛としているがどこか警戒している。
周囲には気にもとめていない。
「やはり、ワタクシが1番初めでしたか……」
「俺は今来たところだ」
今度は雷鳴が突如響く。
室内……というか外は宇宙空間なのに。
雷が落ちたところに椅子に座った姿が。
それは長く黄金の細長い髭が伸び秋の稲穂みたいな毛皮を持ったガタイの良い男性風の姿。
髭だけは独立して動いていて毛皮とは別の雰囲気。
そしてガタイは良くなんだか胸筋……? がある。
纏う服は分厚いコートで今すぐにでも旅に出れそうなのに下を着てはいない。
別に何か見えてはいけないのものがあるわけではないがなんというか……そう。
何もかもがチグハグなのにニカッと笑う顔で全て整えてしまっている。
「金竜様!」「今日も素晴らしいかおり……」
「心が……とろけそう」「さすが最古参……」
……ああわかった。この感じ。
この世界はレベルがあると力や魔力が増すのと同じように。
彼は圧倒的なカリスマ性が高まっている。
理解していてもつい目を奪われ心臓の音が聞こえてしまう。
そういう存在だ。
祖銀が見るだけで落ち着くのならその対称とも言える。
「いつもどおりの出だしですね。全員揃ったはずなのに、ワタクシたちしかいない」
「ハッハッハッ! そういうものだ、ここにたどり着いてから出てくるまでが長いというのにも、俺は理解を示すがな」
「さすがに全員出揃うまでは議題を進めるわけにもいかないから、1番無駄な時間なのですよね」
祖銀がどこからか来た神使の鱗人からティーを貰って少しずつ飲んでいた。




