二百五十八生目 孤独
コボルトのレグリアは自身を金竜の使いだと名乗った。
手が差し伸べられる。
私はその手にトゲなしイバラを伸ばして握手した。
「おっと……びっくりしたね。そういうことも出来るんだ」
「まあ、前足よりはね。ところで……レグリアさんはココに招かれるのが複数あったような口ぶりだけれど……」
「わたしはこうみえて使えてから結構長いんだ、さあお嬢さん、こちらへ」
うーむなんだか軟派なにおいがする。
ただまあ悪気はなさそうだ。
とりあえずついていこう。
彼に連れられ分かれ道を進んでいく。
この建物を様々な探知能力にひっかけているが……
歩んで調べれば調べるほど不思議だ。
第一にはやはり宇宙ということだ。
「ここ、なんで宇宙なんですかね……?」
「おや、無限の星空のことは知っていたんだ。そうだね、ここは元いた星の上、宇宙空間にあるよ。普通の手段ではココにはこれないから、貴重だね」
「やっぱり……宇宙……!」
廊下を進んでゆきアチコチをレグリアに紹介されつつ進む。
そして第2にここの外見。
うまく"鷹目""見透す眼"を使って外観を見てみると……
びっくりするぐらい宇宙ステーションだ。
誰がこんなものを作ったんだ……
下のニンゲンたちではここまで到達していないのに。
そして第3。
この内観だ。
見た目はまるで古城なのはそのとおりなのだけれど外側が宇宙ステーションなのも含めて中がおかしい。
引力がしっかり発生しているのはともかくとして不可思議な空間展開している。
単に拡張しているというよりも遠くから持ってきているような……
何かを参照してこの空間が展開されている。
そのため宇宙ステーションと古城の間に不自然な空間が出来ている。
機械が詰まってどうのうこうのではなく空間が断絶されているところがあるのだ。
こんな矛盾を無理矢理神力で成り立たせているとしたら展開者はとんでもない力だ。
そしてなによりも驚いたのはこの場所には……
「さあ、ついたよお嬢さん。この中へ」
扉が開け放たれれば音楽が聴こえる。
優雅な音楽で中には……
たくさんの生き物たちがいた。
正確には神……そして神使なのだろうか。
様々な種族様々な姿が入り乱れ優雅に踊ったりパーティーを楽しんだりしている。
ということはここが会場なのかな。
それにしてもだ。
「会議って……もっと真面目な雰囲気を想像していたのだけれど……」
「ハハ! 初めての神はみんなそう言うね。でも、これが意外にも真面目も真面目なんだ。ほら……」
レグリアが目線を向けた先。
華やかな雰囲気とは裏腹に剣呑な目つきの者たちが。
定期的に何か念話している雰囲気がありあちこち影を縫うように移動している。
「警備係……? こんな隔絶された空間で招待制なのに、なぜ……」
「それほどまでに危険なのさ、いたずら好きの者たちが多いからね。ただでさえ我が強い神使たちが、様々な派閥にわかれていて、それで何もないのがおかしいぐらいだからね。もしただ真面目な空気でやろうとしたら、この場所が火の海になるから」
めちゃくちゃ恐いな!?
まあそもそも神力が少なくとも使える同士が寄り添っているこの状況こそが異常なのか……
こうしてみると確かににおいがおかしい。
互いに楽しくしているはずなのにどことなく薄く警戒のにおいがただよっている。
出来得る限り薄くした……しかし隠しきれてはいないにおい。
警護の物たちも恐らくは神だろうし見た目以上に物々しいところだ。
もっと詳しく見てみよう。
神使たちは大小さまざまなサイズでパーティー会場に立食形式で団欒している。
もしかして隅に座っている5mクラスはある鉄巨人ももしかしなくても参加者なのか。
ざっくり見てみるに大枠が3つ出来ている。
主に獣人種と呼ばれる毛皮を持つ魔物たち。
鱗人種と呼ばれる鱗を持つ魔物たち。
そして物質種と言われる有機物や無機物を問わずゴーレムやそれに準ずる者たち。
ちなみにニンゲンは見事にいない。
いや……居たとしてもすでに神化していて私にはわからないのだろう。
総勢70名以上いるからかなりにぎやかだ。
「あの獣人のたちのグループがもしかして……」
「そう、金竜様の使いで、わたしのグループでもある。ほかも似たようなものだ」
「蒼竜の神使グループは……」
そう言えば私は他の神使とはまったく交流したことがない。
めちゃくちゃ気になるな……蒼竜なんかと組んだ神使が私以外にどれだけいるのだろう。
……あれ? なんだろう。
私以外から蒼竜の気配がしない?
「ア、ハハ……まさか聞かされていなかったのかい? キミだけだよ」
「……えっ」
「蒼竜様の身から別れた子分はいても、神使はキミだけなんだ。というより長い歴史を見ても、ほとんどいないと聴く」
どうしよう……味方がいなかった。