二百五十五生目 無限
ローズクオーツが錬金をした炎の剣。
クオーツ自身がその錬金の内側に入り剣が腕先から生えていた。
何より大事なのはその剣が鋼鉄製だったのが淡く赤い輝きを持つ金属に変質している。
そして。
「やっ!」
クオーツが右腕を振るえばそれに呼応するかのように剣が真っ赤に赤熱して燃えた。
振るたびに炎が発生し軌跡が輝く。
細い小剣だったのもありきらびやかで美しい。
そして剣自体も先程の飾り気のなさと違ってどこか炎を思わせる意匠があり生まれ変わったことを示す。
「凄い……けど、クオーツ大丈夫?痛くない?」
「テテフフライトで出来ているわたしは錬金術の触媒として最適……確かに、実感できました。あ、全く痛くないですよ。むしろ、凄く気分が強くなった気がしますっ」
「ほぼ事故じみてはいるが、一応成功ではあるか。腕の分離はできるのか?」
「はい」
クオーツは再度錬金術をもちいて腕の部分を光で覆い……
やがて剣だけが抜け落ちた。
腕はちゃんとクオーツのものに戻る。
「ちゃんと抜けても炎の剣だ……」
「完成品ですっ」
「なるほど、初めてにしてはかなり出来が良い……やはり筋がいいらしいな。気に入った、我が神に恥じぬよう徹底的に力を鍛え上げてやる」
「ふう、これで錬金術をマスター……え?」
クオーツが固まる。
ナブシウは目をほぼ閉じているのに眼力が鋭くなったと感じれた。
これは……スイッチが入ってしまった。
「こんな生まれたての錬金術師が作れるような代物だけ作れてマスターなわけがないだろうっ、まだまだだ! これからが錬金術師として鍛える本番だ、さあやるぞ!」
「ナブシウ先生っ、あの、わたくし仕事も……」
「錬金術は仕事にも役立つからさあ続きだ! それとローズ、さっきのテテフフライトのあまりももらうぞ」
クオーツが悲鳴を上げている。
そして私にも何か飛んできた……
テテフフライトならまあいいけれど。
空魔法"ストレージ"から取り出す。
「う、うん。ほら。何か悪さするわけじゃないんだよね?」
「もちろんコイツを錬金術師として鍛え上げるのに、特に最低限私の目に見えて吐き気を催さないラインまで最高速で鍛えるには必須だ。こいつの体がテテフフライトなのも、さっき自身と錬金した感覚も良い……このテテフフライトをクオーツに錬金すれば……お前が次こいつの錬金術を見るときを楽しみにしておくがいい。費用はこれで十分だからな」
「ひええーー!!」
「クオーツ……生きて帰ってきてね……」
でもクオーツには丁度いい機会だ。
クオーツはもっと仕事以外もしたほうが良い。
もっと世界を広げてほしいからね。
不穏な言葉聞こえたけれど。
「せめて褒めてローズ様!」
「うーん……こう使うのはあんまり良くないかもしれないけれど……すごくクオーツの錬金術は感動したよ、私には絶対できそうにないから特に! クオーツはとてもできるこだよ!」
「はにゃあぁ〜……! や、やりきっちゃいますぅ……!」
クオーツが溶けたような声を出して充電が完了したらしい。
ほんとこれ私側が気をつけないとクオーツが疲れ切ってしまうか私のコントロール下に置いてしまいそう。
その後私が撤退したあとも何らかの特訓をひたすらクオーツはこなし……
翌日ボロ雑巾のように疲労しそのまま私の家で熟睡していた。
疲れ知らずのゴーレムに疲れ知らずのクオーツ魂をここまで削り切るとは……
ナブシウ……恐ろしい先生だ。
まあ起きたらまた元気にナブシウ邸へ向かっていったからしばらくは様子を見よう。
迷宮というものに気軽に出入りする身だと忘れがちだけれど一般的に迷宮への出入りは生死を問う世界への道。
そんな普通に恐ろしい迷宮でも冒険者たちすらあまり立ち入れない迷宮もたくさんある。
毒沼の迷宮や崖の迷宮なんかもそうだろう。
しかしそれらすらも凌駕する侵入したものが奥へいって帰ってこないとされるものも。
ただ探索が困難なだけではない。
迷宮が世界に愛されていて進めば進むほどニンゲンたちでは不可能なほどに立ちふさがる壁があるところ。
「やっぱ有名どころを1回は行っておきたいよな、なあローズ」
「まあちょっとはね。というか今日休みなのに仕事の話めちゃくちゃするね」
「いやー、やっぱ見てみたいじゃん、十六無限!」
こんにちは私です。
いつものカフェでイタ吉と共に休日をのんびり過ごしている。
イタ吉はイタチのような魔物でアノニマルース冒険者ギルドの長だ。
どっちも多忙だからなかなか日程が合わなかったんだよね。
イタ吉最大の特徴は3つ同じ魂を持つ体があること。
他2体は今日別のところにいるそうだ。
というかまあ仕事だろうね。
忙しいだろうから。




