二百五十三生目 分解
クオーツが炎を得た姿になった。
全身がテテフフライトて出来ているから自身すら錬金術の媒体に出来てしまう……
それを利用してクオーツに直接伝授したようだ。
「初級の初心者クラスのことだ、さあ、先程見たとおりやってみろ」
「わたくしはまだ、全然錬金術のことは分かっていない……だから、ナブシウ先生がどうやって空中でわけていたのかは完全にはわからない。けれど!」
クオーツは燃える手先を燃える炎の灰……つまり赤熱する砂につっこんだ。
炎が足されることであっという間に熱が上がりどんどん炎が内側で燃え上がっていく。
「あっ、あつい……けれど、直接触って、さっきの訓練でわかりました……砂のざらめき、熱、粉っぽさ、全部直接。後は力を……はあっ!」
赤熱した砂は徐々にだがどんどんと揺れて動き出す。
まるで小さな振動のような。
しかし確かにしっかりと砂たちがわかれていく。
「ほう」
ナブシウから感嘆符が漏れたのが聞こえた。
それ以上にクオーツが必死に作業する姿から目が離せない。
徐々にだが確実に砂がより分けられていく。
時間をかけ少しずつ砂の山がキレイに層が出来た。
炎を使っていたせいか炎の元がたくさんあり山の上が燃える。
クオーツが腕を抜いた時にはナブシウがやってみせた少量よりも遥かに多くの分別が終わっていた。
「お、終わりました……疲れたあ……」
「なるほどな。初めてにしてそこまで出来るとは、伊達にテテフフライトではできていないらしいな」
「あっ」
クオーツの炎状態が解けて素に戻ってしまった。
どうやら力の上限はあるようだ。
まあずっと戻れなかったらどうしようと思っていたからそれはそれでちょうど良かった……
「あの程度の炎素ではその程度しか持たないだろう。もっと多く錬金すれば、また変わるだろうが」
「なんだか、錬金術分かってきたかもしれません!」
「この程度でわかった気になるな。まだ純度が低いし直接的に手を入れねばよりわけられない。道はまだ長い」
「は、はいっ」
ナブシウは燃え盛る部分を魔力石に錬金して炎の魔力石に変質させた。
これで炎が保存され床は燃えない。
そこからクオーツは1つずつ錬金術を学んでいった。
私も横で見ていて新しい技術は興味深い。
いや技術そのものはかなり古いのだが。
今度は天日干しシメレイジュの枝を分解しようとして。
砂と違って1つの大きな個体だから苦戦をしいられ。
ナブシウが教え込むためにクオーツから枝が生えた状態に錬金して慌てたり。
なんとか固形物分解が出来たかと思ったら今度はレッドクックの羽根をクオーツに渡され分解することに。
クオーツは張り切って行ったらレッドクックの羽根が炎上した。
1枚しかないものがあっという間に燃え尽きナブシウの罠だとその時確信したり。
錬金そのものの罠というのを教えたかったらしい。
物の理解をちゃんと見極めてから錬金しなければ今みたいに過負荷で燃えたりするものもあると。
木材加工で散々パワーをこめさせ工夫をこなしたあとで繊細な物をぶつけさせるのだからなかなかだ。
それにしても当然のように触りながらなら錬金術が扱えるようになっているが……
それほどまでにテテフフライトの適性とクオーツの学習能力がいいのだろうなあ。
私が見ている限りほとんど体系化させた学習面の話はなくクオーツ自身に錬金術を流し込みクオーツに逐一錬金を見せて成立させている。
おそらくスキルで出来ることを無理矢理行使しているはずなのでとんでもない荒業だ。
なのでぶっちゃけ見ていても私が真似できる気がしない。
まあついでに筋トレしつつ見ているけれどね。
「さあ、今日の最後はこれだ」
ナブシウが指したのは私が持ってきた小剣。
鋼鉄製指定だったのは錬金術を操る上で大事な純度の関係だったのかな。
より混ざり合っていないほど扱いやすいみたいだから。
「これを分解するのですか?」
「ある意味ではそうだ。しかしそれは全体の一部でしかない。お前にはこれから、炎の剣を作ってもらう」
「つ……作る!?」
やっぱり錬金術はそれがあったか。
私もどちらかといえば調合して薬を作り上げるイメージがあったから。
ひたすらバラバラにする訓練はここに繋がるのだろう。
「ただ石に棒をひもでくくりつけて作り上げるようなものではない。万物を操り素材を練り上げ完全な新規品として炎の剣を創りあげる。これが出来て初めて、錬金術の初心者として認められるだろう」
「ど、どうやろう……!」
ついに錬金術師としての第一歩というわけか。
クオーツがそっと剣を持ち他の素材を集めだす。
今までの1つ1つの行動集大成だ。