二百五十二生目 塵芥
ナブシウとローズクオーツに錬金術用道具を持っていった。
「それで、この道具たちで何をするの?」
「そうだった。これで本格的な訓練が行える。コイツは基礎の部分が愚かだしゴーレムのくせに疑問も呈するが、おかげで吸収率が良い。かなり伸びるぞ」
「ほ、褒めらられているのか貶されているのか……」
中身が中身なだけにね……
そんなことはつゆ知らずナブシウは運ばれた物たちを見定める。
「うむ……まあ、これだけあれば問題はなかろ。クオーツ、準備はいいか。これから本格的な指導に入る」
「は、はい先生」
「まず炎岩砂……はなんというんだ?」
「このグレードなら燃ゆる石の灰だね」
「そうか。その燃ゆる石の灰を使う。まずハッキリ言ってこの砂はこのままではゴミだ」
私が買ってきたものをいきなりゴミ呼ばわりされた……
まあなんとなく錬金術でやることは見えてきたが。
「ご、ゴミ……? なんだか火がつきそうに、チカチカしている灰砂ですけれど……」
「そんなもの、そのままでは火起こしにも使えんだろう。少なくともそういうゴミでもまずはまともに整えてやれる。それが錬金術だ」
「えっ、そうなんですか!?」
本当に基礎の基礎を教えてもらえていたんだろうか……?
ちょっと教育に疑問を覚えつつ私は様子見せてもらう。
「そもそも能力もなしに錬金術を扱うには、深淵を覗くような理解力が求められる。まずは手本を見せるから、少しずつ内に万物の知識を得て行け」
「見ますっ」
ナブシウは全身から光を漂わせる。
怪しげな雰囲気だ……
光が走り燃ゆる石の灰の1部を掴むように動くとより分けられる。
そのまま1部が宙に浮き……
「錬金術とは、万物の素を操る技術。ゆえにこういうことができる」
あっという間にいくつもの小さなものに分けられていく。
しかしその中身は驚くべきことに。
全て同じ物で揃えられていた。
燃ゆる石の灰は砂と言われる程度には混ざりあったものが見えていたし赤熱しているなにかも見えた。
しかし今は丁寧にガラス粒に土粒それに石粒やらよくわからない何かの粒も。
1番凄いのは炎の粒がたくさん出来だしているということ。
つまり純度よく赤熱していた本体を選り分けたのだ。
「す、すごい……!」
「まあ、序の序でこんなものだ。どうだ、何かわかったか?」
粒たちはその場に落ちて炎の粒はそのまま宙に浮いたまま。
あれを落とすと燃えるからね……床。
「いえ……ぜんぜんわかりませんっ」
「だろうと思った……我が神から授かった力がそんな簡単に真似をされてたまるか。というわけでだ」
「……はい?」
ナブシウは当然のようにクオーツの背後へと回り込む。
そしてそっと片前足を添えて。
「言っただろう、テテフフライトはとてもいい錬金術の媒体になると。錬金術は錬金術師ごと錬金術を行使するのが基本なのだ。つまり、これからお前の体に錬金術を教え込む」
「ちょ、ちょっと待っ――」
――ナブシウが怪しく輝きクオーツも呼応するように光がリンクする。
さらには炎の粒がクオーツへと近づいてゆく。
「ひゃあっ!?」
「さあ、流し込む力を理解し、その上で炎の元と構築され、理解せよっ」
「こ、これはわわわああああー!?」
慌てたクオーツが逃げられずに炎の粒が飛び込んでくる。
さらに炎の粒はクオーツを焦がすこと無く中へと入り込んだ。
するりとまるで抵抗無くだ。
クオーツは声も体も震わして明らかな変化が起こっているのを訴える。
光がテテフフライトで出来たクオーツの体内から光を返している。
やがて輝きはクオーツの内から外へと溢れ出し。
光が散ると中から赤いクオーツが現れた!
さらに言えば手先から炎が出ている。
「えっ、どういうこと!? クオーツの姿が変わった!」
「これがテテフフライトの錬金術媒介として優れている点だ。反応率が良く、効能も高く、自身も錬金術の一環として巻き込む点としてここまで便利なことはない。自身の性質をこうして自由に変化できるのだから」
「お、おおおおぉー!! 体が、熱い! ほおおお、今なら何でも燃やせそうですっ」
クオーツが手先の炎を燃え上がらせ溢れ出る力をアピールしている。
けれどクオーツは炎で焼いちゃわないように床や周りに結構気を使っているな……
「この程度の炎素では何でも燃やすのは無理だ。もっと炎素を取り入れなければな」
「気分ですっ」
「よし、テテフフライトのお前ならもしかしたら今ので何か掴めたんじゃないか?」
「まだあんまり自信はない……んですが。今わたくしの中に流れる力……この感覚を使えば、きっと!」
炎を収めたクオーツ。
しかしその瞳の奥に炎が見えた気がした。
多少興奮度にも影響あるのかな。




