二百五十一生目 情熱
火山の悪魔がハードダイヤと呼ばれる鉱石なのが判明した。
それを伝えてすぐに取引履歴を見せてもらい……
競売所では無事買うことが出来た。
品質指定があったせいで高かった……
てのひらに乗るサイズなのに。
ずっしりと重い黒玉で1番の違和感はやはりその硬さ。
単なる石ならば叩いてくだけそうなのにこれは触っただけでわかる。
壊せない……
多分普通には加工できないから多数のプロセスが必要なのだろう。
そして今私はそれら賞品を受け取って窓口にいて。
「ほんとーに申し訳ないっす!!」
「いや、相手が誰であれ態度は変えなくてもいいよ……それにすごく助かったし」
「ですよねっす!」
うーん軽い。
凄く軽い感覚が窓口の向こうから伝わってくる。
まあ嫌いにはなれない。
「今後もぜひ我がアノニマルース競売場をご利用くださいっすーっ、ローズオーラ創始者様っ」
「はーい」
うーんなんかしこたま怒られたんだろうな……
変にどうこう言うより軽く返したほうが良さそうだ。
というわけで道具たちを持って移動。
ずっと賑わっている競売場をあとにして私はナブシウとクオーツが待つ場所へ行く。
特に場所指定されていなかったが……
彼のアノニマルース別荘しか行く先は無い。
自称犬小屋。
しかし誰でも来ればわかる。
豪邸の間違いではないかと。
私の家よりも大きくかつ庭が広い。
庭の前には立派な門構え。
柵すら気品高い。
これで小屋扱いはナブシウの感覚が相変わらず狂っている。
中に入って庭を歩み通り扉をくぐって屋内へ。
そのまま玄関で足をぬぐって中へ。
中に踏み込んで行けばいくほどこんな豪華絢爛な作りがいるのか? と不安にさせられる。
まあナブシウの注文と支払いだし文句は言わないが。
物払いだったらしいがかなりの額だったとか……
そうして廊下や部屋を進んでいくうちに少しだけ理解したことがある。
これの造りは信仰だ。
おそらくはナブシウの信じる神への信仰。
ナブシウのいた家にも似たような意匠を見たことがある。
詳しいことはよくわからないがこの場にいるだけで何か巨大な物に飲み込まれそうな錯覚を覚える。
ナブシウの開いた目を直視してはいけないと感じたあのときのような。
つまるところ無視すればまったく効かないのだが。
ナブシウの知識はクオーツの中にもある。
変な精神汚染は心配ないだろう。
というわけでひとつの部屋にたどり着く。
やっとだ……
「ふたりともー、ここにいるよねー?」
扉を開けると……
なぜかものすごい熱だった。
物理的な熱じゃなくて情熱的な。
スポ根という単語が浮かんだ。
「うおおおぉぉーー!!」
「もっと力を込めろ、岩を砕くように!」
「これ、ほんとうに錬金術に、いるんですかあぁー!!」
「当たり前だ、お前はまず基礎から作る!」
なぜかクオーツが片手で持てるサイズの石と石を互いに全力でぶつけていた。
いや本当になんで?
やがて力尽きて石がこぼれ落ちる。
「はぁ、はぁ、無理ですよ……この石たちを1つにくっつけちゃうだなんて……」
「なんでゴーレムが息を乱しているんだ……?」
「あっ、き、気分です!」
「まあいい、とにかくその感覚を染み込ませるんだ。石の硬さ、ざらめき、理解らなければ、扱うことはできない」
慌ててクオーツが隠したところからしてやはり言わないのが正解か。
まあクオーツは今世を楽しくやりたいみたいだしね。
ゴーレムだから息なんてしていないが前世にひっぱられて肩で息をするように動くというのはなんとなくわかった。
「おーい、ふたりとも」
「あ、ローズ様」
「やっと来たか。遅すぎてもう独自に訓練をしていた」
なんとかふたりともこちらに気づいてくれた。
それにしても今のは訓練なのだろうか。
錬金術って筋力関係あったっけ。
空魔法"ストレージ"で亜空間からアイテムを取り出して並べた。
「これが素材と……武器だね。昔の言い回しで書かないでほしかった、凄く調べてもらうのに苦労したよ……」
「わあ、凄い色々ある……! こんなに必要だったんですか?」
「なんだ、そんなに物を指す言葉すら変わっていたのか? 困ったな、本格的に我が神へ報告するときに、更新されていない古臭い言い回しだと思われてしまう……」
大丈夫だよ……ナブシウの神はナブシウが喋っていること元々何言っているか理解していないから……
まあそんなことは知らずナブシウは悩む。
話が通じてないことは言わないほうが良いというのはもう知っているものたちの共通認識だ。