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百二十九生目 斬痛

 骨がいくつかイってるがまあ、まあ大丈夫。

 "回復呪文(ヒーリング)"、"接合魔法(イノスキュレイト)"で体内から鳴る関節の音が何ともゾクゾクと心地良い。

 "治癒魔法(トリートメント)"はバトル時にパッと使えないので後でね。


 こっちが必死に体勢を立て直している間はあっちに取っては必死の反撃タイム。

 飛ばすのは風の矢。

 2つ飛んで来たところでドラーグが落ちてきて蹴り倒すが……


 放たれた矢は止まらない。

 まだ脚が、治療中だ――

 戦闘を上空から眺めていた"鷹目"の視界が消えるほどの衝撃。





 ……――意識が飛ぶまでの僅かな時。

 戦闘の癖で見続けた目に飛び込んできたのは矢だった。

 顔をそむけるのすら間に合わず深々と矢が額の目に串刺さる。


 痛みに悲鳴を上げる前に第二射が顔に刺さりこむ。

 その矢たちは膨らみ爆発し勢いと共に真空刃を撒き散らした。

 目の中を顔の蹂躙せんと切り裂く。


 1本の線が入れば血がわく。

 もう1本入れば眼球のゼリーが飛び出す。

 その1本1本が。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 僅かな時間で延々とこの身が切り裂かれる。

 裂かれた上にさらに一太刀。


 さらに一太刀。

 さらにさらにさらにさらに……

 肉を何度も何度も細切れに入念に細かくみじんにバラバラに……

 アアアアァッ!!

 イタイッ!!


 毛皮を真皮を肉を裂いて目の中を深々とミキサーにぶちまけられる。

 気づいた時には吹き飛ばされ体が宙に浮いていた。

 ああああぁ……


 があああぁぁぁッ!!!

 ああッ!! ああああぁぁぁッ!!!

 ぐうおおおおあああッ!!


 熱い!!

 痛みが焼き付くッ!!

 顔がぁぁッ!!

 目がぁぁッ!!



 ぐぁ、がはッ、地面に、落ちて、転がって、がッぐうぅ――





 ――あっぶないッ!

 "頑張る"ありがとう、回復した生命力が"頑張る"で耐えれる分まで治っていたようだ。

 "頑張る"が発動するということは"私"は死にかけか。

 生きてるか、普段の私!


(今のは死んだかと思った……ところで……)


 言うな、言わなくともわかる。

 視界が真っ暗な理由なんて先程のダメージが原因でしか無い。

 耳がキンキン鳴ってて音を拾ってないのは単に死にかけだからだろう。


 アヅキとドラーグが引きつけているのか攻撃が止んでいる。

 あーさすがに"私"でも悪態つくぞ、くそう。

 目ん玉に刃を刺しこまれグチャグチャにシェイクされた!


 痛い、狂いそうな程に痛い。

 いっそのこと狂ったほうがマシだ。

 思考は片隅まで痛いで支配され肉体は隅々まで傷を表す。


 顔面は今やグチャグチャだろう。


「ははッ」


 笑えてくる。


 脳内麻薬が遅れて生成され痛みは強制的に笑いへと変換される。

 絶望的な程に笑いが止まらずそれでもなお顔の痛みは取れることがない。

 ああ、コレが地獄!

 生き地獄!


 地獄は心を壊す。

 少しずつ拾える笑い声は誰なのか。

 こんな状況でへらへらへらへらと。


 "私"だよ。

 痛い、いたい、痛みが焼き付いて離れない。

 ああその度に血が滴る度にワラエル。


 腹を抱えて転がって笑いたい。

 まあ……

 流石に死ぬのは困るな。

 死なないために"私"がいるのだから。


 だから普通なら立てない今も必死に治療しつつ走っているし、流れ弾の気配を感じて魔法は避けている。

 "魔感"やら嗅覚やら……直感で動いている。

 一応額の目は弱点に見えて魔力的な力で頑強だったんだけれども直撃で無数に刻まれてしまったらしい。


 バキバキ液晶では何も見えないようにバキバキ目では"鷹目"も機能しない。

 まあ治せるけれど。

 聖魔法"トリートメント"が必要。


『目を治すから援護よろしく!』

『承っ――った!』

『え、大丈夫ですかそれ』


 "以心伝心"の念話で伝えつつ目以外の情報を頼りに岩影へ。

 "トリートメント"は発動までに少しだけ時間がかかりその後傷が癒やされていく。

 しかしこれは結構問題があって……


 深呼吸して集中する。

 光が伸び身体を侵食し傷が埋まっていく。

 ゆっくりと動かずパパッとやってもらいたい。


「いて、いだだだッ! いだッ!!」


 聖魔法、すごく痛い。

 めんたまミキサー時よりはマシだけど。

 すごいよ、治療の適用範囲は広い。

 しかも回復後は傷を負う前よりも健康体。

 その代わり麻酔無しで手術されている気分になるぞ!


 まあ何時間とかかるわけではなくて数十秒もあれば……

 よし、取り敢えず目はいける。

 パチパチとまぶたもしっかり動く。


 ぐぎぎ、痛みのせいかなんか動きがぎごちなくなってしまう。

 だが背後の岩が砕けた事で治癒の時間は終わってしまう。


「ようし、そこか!!」


 タカが叫ぶが"私"は正面から付き合う気はない。

 空魔法発動!


[ステルス 姿を別次元へ隠しこの間は現実干渉を受け付けない]


 "私"の姿が風景に消えると共にタカの爪が空振りする。

 赤く光っていたしなんとなく"出血"の武技かな。

 さてこの魔法だがかなり欠点がある。


 その1、影は見えたまま。

 バレたら出待ちされる。

 その2、空気が無い空間なので息が出来ない。死ぬ。

 その3、見えない。

 "鷹目"を併用しないと何も見えない聞こえない。


 つまりはさっさと逃げるに限る。

 アヅキたちとドンパチやってくれている間に安全な位置へ移動。

 ……よし解除。


 使われると厄介な魔法だろうがいざ使うとなっても厄介な魔法だ。

 手品はそう乱発するものではないということだろう。


 回復はここまでで良い。

 全身血塗れでも動くから問題がない。

 さあ痛みの応酬を終わらせよう。


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