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二百四十二生目 帰還

 街に帰ってきた。

 そのあとは事後処理でみんな追い回される。

 私は直接関わらないが……


 冒険者ギルドへの報告。

 詳細の聞き取り徴収と回収依頼発行。

 怪我の治療に毒素の再検査……


 色々あって結局パーティーをやる時間もなくなり。

 とりあえず眠ってから集合ということになった。

 そこから少なくともロイドは泥のように眠って……


 昼に近い朝から呑んだくれることとなった。

 冒険者の仕事は3日出かけ3日遊び1日準備に明け暮れるとかも言われる。

 良いか悪いかはそれぞれによるが……


「「カンパーイ!!」」

「カーッ、生き残って飲むエールは美味い!」


 先日のメンバーが集まって小さな宴会が開かれた。

 とはいえテーブル1つ囲んで飲んでいるだけで他にもあるふつうのテーブルなのだが。

 周囲はそろそろ昼食を取ろうとする人々のためなんとなく浮いている。


「ほら、昼間から呑むバカどもに、とびっきりのバカ料理だよ」

「ほほー! きたきた!」

「ワタクシの調べが役に立ちましたね」


 しかしそんな事を気にするニンゲンはまわりにひとりもいない。

 ここは冒険者たちが多く利用する飯屋。

 みんなこうなる時の事情も理解している。


 食事を運んできた濃いヒゲの男性も普通は夜にしか用意していないような大皿料理をどんどん運んでくる。

 肉や魚を口に運ぶたびにみんなからは感嘆符しか出ない。

 ロイドが前食べていた『お湯みたいなスープで溶かして食べる堅焼きパン』とは雲泥の差だ。


「しばらくは金には困らんっ、売却した即金もゴーレムの機体売りの金もある!」

「「いえー!」」


 リーダーが豪語したとおり持ち帰りの品でかなりの額が手に入った。

 吟遊詩人さんのコネクションはおそるべきもので最も高く買ってくれるところへそれぞれ振り分けて最適な交渉もして結果的には他の面々も勉強になる動きと金になった。

 そしてゴーレムのほうは冒険者ギルドが統括して管理するが……


 魔物よけの簡易結界を使ってエテエキュたちは立ち寄らせないようにしてあるためほぼちゃんとした額で売れることは決まり。

 そのため後々とんでもない金額が入るだろうと言われている。

 人員を何人も使ってでも価値があるのだ。


「ほんと、あそこから良く生き残れたよ……よかった」

「そいや置いてきた鳥車ってどうなったんだ?」

「一緒に回収してくれるらしいですよ」

「行きの時はまさか、次元跳躍を体験するとは思っていなかったからな」


 リーダーは今日鎧も着ていない。

 匂いでも感情はわかるものの今ははっきりと顔に楽しげな笑顔が刻まれていた。

 なんというか本当に良かった。


「今日もあの召喚獣を連れてきているのですかな?」

「ああ、もちろん。そして……そろそろ仮契約の終わりなんだ」


 仮契約……そういえば前もそのような話を聞いた。

 本契約うんぬんあったけれど正体がわからないんだよなあ。

 仮契約の終わりというのもよくわかっていない。


 ロイドはわたしの入った石をベルトから外し近くの床に向ける。


「よし、出てきてくれニーダレス」

「バフッ」


 呼応するように私が飛び出る。

 ロイドは私のところに目線を合わせた。

 とはいえ私が座っても目線はロイドのほうが上なんだけれど。


「今回の事を通してよく分かったよ。お前は、俺にはあまりにももったいない。俺は、お前にふさわしいくらい強くなって、再度お前を喚び出すつもりだ。そのときには、本契約を結んでほしい」

「ワーン?」


 肝心の本契約がまったくわからないんだけれどね。

 こちらとしてももっと先輩に聞かないとならない。

 まともそうじゃないのや普段やってなさそうなのはともかくとして嬉々と教えてくれる相手ならば想定がつく。


 あとそこまで深刻に召喚に関して考えなくてもいいだろうに……

 私おそらくまだまだ初心者相手にしか来ないタイプだよ。


「それにしても、還したあとでまた特定の相手を喚び出す方法などあるのですかな?」

「一応な、ただ少し特殊で高額になるから普通はそんなにやらない」


 なるほど……それならまた会えそうかな?

 別に私は彼らが嫌ではない。

 この数日間楽しかった。


 また彼らと会える日が私も楽しみだ。


「それじゃ……名残惜しいが」

「私も、感謝しよう」

「思いっきり力を使い果たしたのは、キミがいてくれたから……だよ」

「ハハハ、また新しい話がニーダレスくんのおかげでできそうですぞ」

「マウマウッ」


 全員私の周りに集まってきてくれた。

 なんだかもう彼らも知らない誰かではない。

 この先の旅路に幸ありますように。


「それじゃあ、サヨナラだ。召喚解除」


 そうして私の姿は……

 その場から泡のように消え去った。


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