二百四十一生目 勝利
エテエキュごと取手のついていた引き出しを引き抜けた!
本来はエネルギーのもとを入れる場所らしいが……
代わりにエテエキュがやっていたわけで。
「えっ?」
「ニーダレス! やれ!」
エテエキュがわけもわからず地面に転がされる。
そうして体を打ち据えた痛みを味わっている間に……
私という影が迫る。
「イテテテ……一体何が……はっ?」
「ガウッ」
大きく一閃。
爪で切り裂き飛ばした。
血を出しながら思いっきり吹き飛んで。
そのまま目を回して気絶した。
「な、なんだ!? ひとりやられたっ? 動きが……!」
「や、やばいですってアニキっ、残りの出力だけじゃあさらに動きがぁ……」
「何やら騒がしいですが、もう1本いかせてもらいますよっ」
エテエキュたちが騒いでいるあいだゴーレムの動きがさらに悪化。
いつの間にやら軽く登って1番高いところの引き出しを抜いたらしい。
またエテエキュが排出された。
「今度は私だな」
リーダーが両手槌を大きく振るいホームラン。
何か難しいことをしなくてもとにかく横振りするだけでも強いな……
ああ見えて技量が求められるのはなんとなく察するが。
「ソードマンさんは?」
「下がってもらえるくらいには回復した、身を隠してもらっている」
「よし」
ロイドが懸念した点も大丈夫。
そのためあとはガタガタになっているゴーレムを追い詰めるだけであって。
「お、おいっ、頼む、動いてくれよ、そんな少しだけじゃなくて、さっきみたいに俊敏に……」
「アニキー! オレたちのパワーじゃあ、もう、げんかい……!」
「……あっ」
私は指示を出していたアニキと呼ばれているエテエキュの隣に立つ。
もちろん彼の真正面に。
向こうはまるで引きつった笑いのように。
こちらはまるで笑顔のように。
固まっているところに大きな口を開いた。
「これでなんとか終わったか……ふう」
ロイドが最後のエテエキュに対して気絶用弾を放って仕留めた。
もはやリーダー格を気絶させたあとはもう各個撃破するだけの簡単なお仕事。
あっさりと最後まで済んだ。
ゴーレムはもう動かずその場で止まっている。
これの発見でかなりの額になりそう。
なにせ後は運んでもらうだけで売れるからだ。
額だけではなくかなりの功績にもなるだろう。
私は若い冒険者たちの英傑譚始まりに立ち会ったのかもしれない。
「心配おかけしました……なんとか無事です」
「いえいえ本当に助かりましたとも、あれがなければ突破点がありませんでした」
「それにしても、ここからどう帰るか。確かに我々がやったことはかなりの成果だが、持ち帰れねば意味など無い」
ソードマンさんも無事復帰できた
ただ帰らなくてはならないのはそうなんだよね……
入り口は瓦礫だから片付けるにも時間くうし他の出入り口を探すかあるいは。
「ああっ、帰還用の道具を燃やされたんでしたなっ」
「とりあえずゴーレムは使えなくしたから、奴らがふたたび襲ってくる可能性は限りなく低いが……」
エテエキュたちはのびているのをまとめているしゴーレムは抜いたパーツをいくつか隠した。
少なくとも運搬係がくるまでは時間稼ぎができるだろう。
だからこそさっさと帰らなくてはならないわけで。
「ンナ、マーヴ」
「うん? もしかして……ほら、これで何か出来るか?」
私に行動力が回される。
魔法を唱えつつ全員に寄ってもらう。
なんとか動きや押しのけで理解してもらった。
「な、なんだ? 手を離さなければいいのか?」
「おととと、ワタクシもちゃんと寄りますってば」
「えっと……こう?」
「よくわからんが、寄ったぞ、これで――」
発動。
空魔法"ファストトラベル"!
私達は姿をその場から消した。
ということでワープ完了。
町付近まで戻ってきた。
「うわっ!? え!?」
「町……?」
「嘘……だろ」
「転移魔法とかどんだけ行動力がいるか……あれでも、俺そんなに渡したか?」
よし全員ちゃんといるな。
うっかり手を離されていたらもう一回戻らなくてはならなかった。
少し意識的にポイントをずらしてニンゲンたちから見えない場所にワープしたから騒ぎにもならないはずだ。
「とにかく、何から何までほんと助かった。ありがとう」
リーダーがひざを折り私の体にそっと手のひらを当てる。
やさしくポンポンと体をさわってきた。
手甲に守られ硬い感覚ながらもどこかに柔らかさを感じれる。
「よし、ありがとう戻ってくれ」
「ンワッ」
私に石が向けられそっと石の中へと戻される。
これでだいたいの仕事は終わったかな……?




