二百四十生目 命脈
爆発を起こしソードマンさんが駆ける。
それに合わせて私も動きだす。
「いいぞ、ニーダレス! そのままヤツの弱点を探り、動きを乱すんだ!」
ふたたび行動力補充。
魔法を唱えつつ暴れているゴーレムの近くへと駆ける。
暴れるといっても動きがハチャメチャ過ぎてどこにも攻撃がいけていない。
ようは空中に拳がフラフラしている。
「は、早く体制を……うわわわ」
「ひえーっ」「もうやだーっ」「お腹すいたーっ」
あっさり回り込む。
ソードマンさんは高く跳び上がる。
「今解き放つはこの身に余る絶技、我が血を捧げ、放たれん」
普段の口調からは想像できないほどにしっかりとした雰囲気。
長い剣に振り回されること無く……
黒い斬撃が走る。
振られた斬撃に合わせ黒の光がゴーレムの身体を大きく彩っていく。
剣のリーチ以上に斬撃が届いているらしい。
背後からしっかり吟遊詩人さんの笛も聴こえ力が増す。
黒い彩りは匚の跡をつけたあと。
大きく上から落ちるように縦に裂いた。
今当然のように斬っている間わずかに浮いていたがそれも武技の力か。
「わっわー!?」
「衝撃があばば!?」
「ご、ゴーレムがおかしいですアニキ、動きが……!」
さっきまでは踊っていたゴーレムの動きが明らかに麻痺したかのように痙攣しながらひざをつく。
明らかに今の攻撃が原因だろう。
「武技、命脈絶ち。これで……うっ」
着地と共にソードマンさんが倒れてしまった。
本当に凄まじく消耗してしまったらしい。
リーダーが保護しに行ったから大丈夫だろう。
私はゴーレムに駆け上がり背中につく。
背中側にある取手に前足をかける。
一応来てみたは良いものの完全な断定はできないしすごいやりづらい。
でも"変身"使えないしなあ。
普段みたいに決められた範囲内の姿変化も無理。
やるしかない。
色々試したいことはある。
まず普通に口を使って引く。
うぬぬぬ……! だめ。無反応。
次。
もちろん今度は押す。
おっ! 何かガチャという音が!
……何も起きない。
今押すのは合っていた?
押してから何かするのなら。
押してから咥えつつ前足でひねるっ。
これでどうだ……!
ガチャリと音がして回った……
……それで?
いや回ってまだ何かあるのか。
ええと。
うわっ! 揺れだした。
急いで飛び降りる。
「お、おい、今の……! ニーダレス、まさかあそこからもうちょっとで引き出せそうなのか?」
「背中の回した部分が灯り色の変化が起きた……まさか」
「もしかしたら、やつらを引き抜けるかもしれません」
いつの間にやらみんなが私の動きに注目していたらしい。
そして離れてみてわかった。
点灯していたランプカラーが変化している。
確かにあやしい……
むしろ落ち着いてきて考えがまとまってきた。
あの状態ならば引き抜けばいいんじゃないか?
「ご、ゴーレムにキズがああっ」
「アニキ、やべえですって! 動きがなんだか悪いっ!」
「お、お、おちつけ、みろ、やつは今ので力を使い果たして倒れている、ほらもう次が来ないから全力でいけるぞっ」
「本当だアニキっ、全力でやったりましょう!」
ゴーレムはふたたび動き出したもののまだ麻痺が残っているのかなんだかギクシャクしている。
これならばまたまわりこめる。
ただ攻撃は可能だろうから気をつけないと。
そのまま背後に行きたいけれどさすがにエテエキュたちも警戒して背後に壁をとるように歩く。
「どうする? 今のアイツは鈍い、なんとかできないか?」
「私はソードマンに治療薬を使う。召喚士と召喚獣それに詩人で頼めるか?」
「見た目からは想像できない軽快な動きぜひお見せしましょう!」
ロイドが銃弾を放ち今度は頭上にいたエテエキュを狙う。
「ヒッ」
と、悲鳴を上げて変なポーズをとることで銃弾がスレスレ避けられる。
毛がほんの少しだけ散る程度は打撃を……
ただ今のビビリで指示系統が乱れた。
リーダーやソードマンは置いておいて他全員で突撃。
私が最速なので拳を引きつけるように前へ躍り出てから横にかける。
ギクシャクしながらも拳を動かしてこちらに狙いをつけている。
ただ足は動かせておらず上半身の動きも遅い。
ふたりは武器をしまってそんなゴーレムの足に取り付いた。
「いけっ、あのケモノをぶっ殺せ! 俺たちにはその力がある!」
「バウバウッ」
挑発にほえてやれば面白いほどにこっちへ向く。
ゴーレムに痛覚もなければ乗られて揺れるほど軽くもない。
つまり今ロイドが私の回した取手にまでたどり着き……
「おーっら!」
一気に引き抜く。
先程までびくともしなかった部分なのに……
ゴーレムの体一部と中にいるエテエキュごと引き抜けた。




