二百三十七生目 宝物
エテエキュという小さな猿みたいなリスたちがいた。
特徴的な尾がリスっぽいからリスの方によっているとは思う。
げっ歯類だし。
「わああああ!!」
「逃げるんだー!!」
「ここまでくるなんてー!!」
そうこう言って凄まじい勢いで場を荒らしていく。
蹴って跳んではねてメチャクチャな軌道をとり……
私とすれ違う形で部屋から飛び出た。
逃げ足だけ立派……
まあ助かったけれど。
ガチャリと彼らが触っていたレバーを倒す。
すると響いていた轟音がやんだ。
「と……」
「止まった……?」
「おお、今度は戻っていきます!」
吟遊詩人さんの言うとおり動きが逆戻り。
最終的にトゲもおさまり扉が開いた。
よかった……
私は彼らと合流。
全員によってたかって褒められ撫でられた。
荒いけど嫌な感じはしない。
「よーし! よくやったぞ! さすがだ!」
「たすかりましたああ、本当に死ぬところでしたあぁ……」
「命の恩人……いや恩獣に祝いの詩を! ワハハ」
「ほんと、お前だよりだぜ。ただ……逃ししまったな」
それは少し気がかりなところだ。
正直罠はまだまだある気がするし彼らはほとんど使いこなすだろう。
かなりスレスレのやりとりが続きそうだなあ……
だからこそ皆の協力が必須になり……
ここから先は未知が広がっている。
「おや? おやおやおや、この転がっているものはもしや……」
「どうした? 皿……?」
「ええ。しかしこれは……古代文明で使われた高級皿のようです。埃を拭うと……ほら、この紋様みえますかな?」
吟遊詩人さんが何か手に取り拭き取る。
一部分だけだが鮮やかな紋様が浮かび上がる。
キレイに磨き直せば芸術品みたいな見た目をしていそうだ。
「もしかして、結構な価値があるものですか……? あちこちに、似たような器具はあるんですけれど……」
「ええ、おそらくは。考古学的にも貴重ですし、先程の大暴れがあって落下しているはずなのにキズひとつありません。劣化の進みが異様に遅いのでしょう。つまるところふむむ……」
「よーし! 持てるだけ持つか!」
「ああ! 良さそうなのを回収するぞ!」
「おっとそうだ、ありがとうニーダレス、休んでいてくれっ」
私はロイドが出した石の中にしまわれる。
そこからはしばらく宝物になりそうなものをあさりつつ進むこととなった……
やはりというかなんというかエテエキュは向かう先々で現れた。
エネルギー不足のしかけも無理やり自身から生み出す電気魔法あたりで動かしてしまう。
直接対決は絶対してくれないので徹底的だ。
「ウッシッシ、そろそろコレで、チねぃ!」
「うおお、岩が転がってくる!?」
"観察"したので彼らの声が分かるようになったけれどだいたいあくどい。
割と喜んで殺しに来ている。
今も岩が転がってきてみんなで逃げていた。
エテエキュは追い詰めるとすぐに逃げてしまうためになかなか倒せない……
「よし!」
「うわわ」
「あらよっと」
「ふぃーっ」
全員脇道にそれて岩をやり過ごす。
岩が下の方で穴に落ちていく音がする……
「ウケキッ、潰れた! 潰れた! チん……」
「おらっ」
「ウギギ!? 生きてるーっ!!」
不意打ちの銃弾が壁に当たってしまい真横のエテエキュには当たらなかった。
ただそれで十二分脅かしにはなったらしい。
またまた慌てて逃げていった。
「はぁ、やつらもしぶといな……」
「手を叩いて踊っていたから、巣を荒らされるからみたいな理由でもなさそうなのがな」
「かしこい魔物は、その賢さゆえに残虐にいたぶってから殺すことも多いとか……いやはや、困りましたな」
正直収益的にはもう結構なプラスだ。
1番危ない罠も今の所天井落下ぐらい。
さらに進んでいくかどうかというのを悩みつつ回収するものは回収していく。
「どうする……? もっと進んで行くか、もう戻るか……」
「いちおう遺跡の外へと瞬時に戻る方法はある。多少ギリギリまで探索はできるが……」
「まだ、ボクは例のわざを使っていないから、いけるは……はず。召喚獣が凄く強くて、助かっちゃった」
「ほほほ、ワタクシはどこまでもついていきますぞ」
みんな比較的余裕がありそうだ。
そういえばまだ封印された剣による武技をみていないや。
興味がないと言えば嘘になる。
疲労や生傷は増えていてもまだバックアップがまだまだある。
普通の魔物相手ならばなんとかなるし……
本当に危なそうな相手は脇を通り抜けてなんとか来ている。
結局全員進むということで決まった。
あのエテエキュをどうにかしたいしね……




