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二百三十六生目 天井

 リーダーは現役騎士だった。


  見ている限りでは冒険者稼業だからと何か雑にやっていたことはない。

 むしろ真っ先に身体を張っていた。

 背に背負う両手槌も普通なら選ばないような重量武器だ。


 それこそ気楽にやるのならば安い武具を揃え軽装で行くだろう。


「このハンマーは元々、対人や対馬で堅牢な守りをかち割るためのものだからな。剣は陛下に捧げた身、冒険者稼業ではこちらを使わせてもらっているが、存外使いやすく気に入っている」


 そんなことを話しつつもリーダーは歩みを止めずにハンマーを抜き……

 大きく振り回すと目の前にあった草たちの蔦が払われる。

 払うという言い方は優しすぎるが。


「草たちが吹き飛んでった……」

「ボクも、このぐらいできたらなあ……」

「遺跡などでの草木は下手に切断しないほうがいいと聞いている。まず非常に斬撃耐性が高いものが多く刃が傷つきやすいうえ、潜んだ魔物に絡め取られやすい。適材適所というやつだ」


 それはちょっとわかる。

 柔軟なツルや草ってどうしてもしなられるし束ねられたり外皮を持たれると凄く斬りにくい。

 そのため草花を切る際は回転して巻き込む用に機械駆動させるのがいいんだけれど……


 リーダーのはなんだか色々と例外な気もする。

 笑いながら邪魔な草木がふっとばされるのを見ていると頼もしいのか少し恐ろしいのか。


「みなさんの話や勇姿は、まさしく語り草の種になりますな」

「ちょっと恥ずかしいな……まだあまり活躍もできていないし……」

「……待った。これは……?」


 リーダーが足元に転がるなにかに注目する。

 それを拾い上げると……

 ……冒険者らしき頭と頭部鎧だった。


「ヒイッ!?」

「これは……ついに問題になっていたあたりに来たか。まだ死体が新しい」


 ソードマンさんが素っ頓狂な声を上げ固まってしまった。

 それに対してリーダーは頭を置き身元をあさりだす。

 身体から取り出したのは冒険者証明書だった。


「うむ。これで少なくとも、遺族には最期を伝えられるだろう。安らかに眠ってくれ」


 全員がそれぞれの神に祈る。

 私も来世を祈ろう。

 いくつか遺体がありリーダーは手慣れた様子で遺品を回収した。

 まあ仕事柄死体にはある程度耐性があるだろうからね……


 それはそれとしてここに死体があるということは危険区域が近い。

 歩みを慎重に変えて遺跡の扉を開けて進む。

 これは……強い違和感。


 あの死体たちから血のにおいが浅かったのは単なる日取りだけじゃなかったか。

 この部屋は異様に死の匂いが……血のにおいが濃い!

 しかも死体が外に出してあったのがわざとだとすると……まずい!


 急いで石を激しく揺らす。


「わっ、なんだなんだ、ほらっ」


 ロイドが私を石から出す。

 私は急いで駆けて小さな壁の穴に身体をねじ込む。


「なんだ……?」

「お、おい! 扉が!」

「この音は……ああっ、トラップです!」

「トゲー!?」


 みんなが慌てだすのもおそらく仕方ない。

 この轟音……恐らくは天井が落ちてきている。

 しかもトゲつき。


 単純ながら最悪の仕掛けではある。

 最終的に有無を言わさず刺殺するのだから。

 私は駆ける。


 早く仕掛けの元へたどり着かないと。

 経験上とにおいと音で分かれた廊下から正解を!


「な、なんだあいつら!?」

「まさか、彼らが操作を……?」

「単なる罠じゃあなかったってわけか。ニーダレスが飛び出すはずだ……いけ! オレたちの真正面あたりの穴から、意地の悪そうな顔が見える、こっちもやれることはするから、あの部屋まで急いでくれ!」


 ロイドの心が見えない綱を通じて伝わってくる。

 私を信じてくれているのならば……

 それに応えるだけだ。


 場所ならロイドが指し示した。

 道順はこのにおいを追うのみ。

 それでいける。


 やはりというかニンゲンの通れなさそうな瓦礫道や木々を避けて走り……


「ひゃあ! 結構早い……!」

「うおおお、止めろー!」

「ちっ、銃弾を避けやがる、見慣れているのか?」

「こうなったら不慣れですが、攻撃の魔法で……!」


 向こうもなんとか撃退しようとしているがどうにもうまくいっていないらしい。

 ならばということで駆けつけた先に3体の魔物!

 向こう側の穴に危機一髪な彼らが見える。


「罠を解除だ!」

「ガウッ」


 移動し脅しながら"観察"!


[エテエキュ Lv.20 危険行動:なし]

[エテエキュ 小柄な身体は器用でかしこい。どのような仕掛けもすぐに理解して使いこなし、危険なものなら避けた後に利用する]


 ひと嗅ぎでわかった。

 弱い……!

 実際直接乗り込まれたと知って彼らは悲鳴に近い鳴き声をあげた。

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